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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

出産育児一時金の「直接支払制度」を利用する産科医療機関等は、厚労省に費用等の情報提供を行うことが要件に—社保審・医療保険部会(2)

2024.4.12.(金)

出産費用の見える化をし、国民が「どの産科医療機関等で出産すればよいか」を選択しやすくするため、今春(2024年)から、厚生労働省がウェブサイトで「全国の産科医療機関等のサービス内容、費用など」の情報提供を開始する。分娩可能な施設は全国で2300ほどあり、うち2000施設程度がすでに厚労省に情報提供を行っている—。

より多くの情報を公開することが国民の利便性に直結するため、産科医療機関から厚労省への情報提供を促進するため、今後、出産育児一時金の直接支払制度(後述)を活用する分娩施設には、厚労省への情報提供を必須要件の1つとする—。

4月10日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、厚生労働省がこうした方針が固められました(マイナンバーカードの保険証利用促進策(新たな医療機関への一時金)に関する記事はこちら)。

4月10日に開催された「第177回 社会保障審議会 医療保険部会」

今春から、各分娩施設の出産費用などを厚労省に情報提供し、国がウェブサイトで公表

今春より、分娩取扱施設ごとに「出産費用」や「機能」などを明示し、国民が「どの施設で分娩するか」を比較・選択しやすくするサービスを厚労省が始めることが決まっています(関連記事はこちら)。

医療保険制度には、健康保険や国民健康保険などの加入者(被保険者・被扶養者)が出産した際、その経済的負担を軽減するために保険者が一定の金額を支給する制度が準備されています【出産育児一時金、2023年4月1日以降の出産では50万円】。

一時金額は実際の出産費用を踏まえて、適宜、引き上げが行われてきていますが、「出産育児一時金の引き上げにより、医療機関の設定する出産費用が引き上げられている可能性がある」ことが指摘されています。

昨年(2022年)4月から今年(2023年)4月までの出産費用改定状況(医療保険部会(1)1 230907)

2018年4月から昨年(2022年)3月までの出産費用改定状況(医療保険部会(1)2 230907)

出産費用額の推移(医療保険部会(1)3 230907)



こうした中で、医療保険部会では「出産費用の見える化を進める必要がある」との考えをまとめたものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

具体的には、厚労省ホームページにおいて「どの地域の、どの分娩取扱施設がどのような機能(周産期母子医療センターなのか、クリニックなのか、医師や助産師などは何名配置されているのか、年間の経膣分娩・帝王切開件数はどの程度なのか、など)をもち、どのような付帯サービス(立ち合いは可能か、無痛分娩を行っているかなど)を行っているのか、費用(分娩費、室料など)はどの程度なのか」を公表するものです。

出産費用見える化に向けた情報提供項目(医療保険部会(1)6 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ1(医療保険部会(1)7 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ2(医療保険部会(1)8 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ3(医療保険部会(1)9 230907)

出産費用見える化サービスのイメージ4(医療保険部会(1)10 230907)



現在、ウェブサイト構築作業が進められており、厚生労働省保険局保険課の山下護課長から「今年度(2024年度)も分娩取扱いを継続する予定の施設のうち96%から厚労省に対し情報提供がなされている(ウェブサイトへの情報掲載が可能となる、病院98%、診療所93%、助産所97%)」ことが報告されました。全国の分娩取り扱い施設はおよそ2300(1年間の分娩取り扱い件数が21件以上)あり、うち2000施設程度について厚労省が「費用等の情報をウェブサイトで公表できる」見込みです。この情報をもとに「どの施設で出産するか」などを国民が選択できる環境が近く(2024年春)整います。



ところで、出産育児一時期は「保険者から出産した被保険者・被扶養者」に支払われる仕組みですが、「いったん出産費用全額を医療機関に支払い、別途、保険者から一時金を受ける」としたのでは、「手間がかかる」「いったん高額な支払いをしなければならない」こととなるため、▼直接支払制度▼代理受取制度—という仕組みも準備されています。

前者の「直接支払制度」とは、出産前に、妊婦など(被保険者等)と医療機関等との間で「出産育児一時金を、保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)から医療医機関等が直接受け取れる」という契約を結ぶものです。(妊婦等が医療機関等と契約するだけでよい)。

後者の「代理受取制度」も「保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)から医療医機関等が一時金を直接受け取れる」仕組みですが、妊婦等・医療機関等・保険者の3者で契約する手間が生じます。

山下保険課長は、前者の直接支払制度について「年間分娩件数が21件以上の分娩取扱施設について、直接支払制度を利用する場合には、情報提供ウェブサイトにおいて出産費用等の情報の公表を行う」という要件を課す方針を提示しました(来年(2025年)7月から適用)。

これにより、「厚労省に情報提供を行わない(ウェブサイトに情報掲載がされない)施設は直接支払制度を活用できない」→「妊婦等に煩雑な手続きが求められ、場合によってはいったん高額な出産費用を準備しなければならなくなる」→「当該施設での出産を敬遠するようになる」→「施設経営が難しくなる」という悪循環が生じる可能性があり、より多くの分娩取り扱い施設で「経営を維持するために、厚労省に情報提供を行うようになる」と期待されます(結果、国民が分娩施設の情報を十分に取得し、施設選択がしやすくなる)。



なお、出産育児一時金制度には、上述のように「一時金の引き上げ→出産費用の便乗引き上げ」という問題点も指摘されており、「2026年度から正常分娩についても保険適用してはどうか」という議論が進められています(出産費用が全国一律となる)。

今後、より具体的な検討が進みますが、医療保険部会では「出産費用の地域差やその要因なども含めて詳しく分析し、丁寧な議論が必要である。傷病ではない『正常分娩』の保険適用については、様々な考え方があり、しっかりした検討体制が設け、工程表を作って計画的に議論していく必要がある」佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)といった意見が出ています。



また、2024年度から75歳以上の後期高齢者について、▼出産育児一時金の財源を一部負担してもらう▼現役世代の負担軽減に向け、高所得の75歳以上後期高齢者の保険料負担見直しを行う—といった見直しが行われます(関連記事はこちらこちら)。

具体的には、次のように保険料改定が行われています(全国平均)
【平均保険料額】
▽2024年度:年額8万4988円、月額7082円(2022・23年度から7.7%増)
▽2025年度:年額8万6306円、月額7192円(2024年度から1.6%増)

▼被保険者均等割額
→2024・25年度:年額5万389円、月額4199円(2022・23年度は年額4万7777円、月額3981円)

▼所得割率
→2024・25年度:10.21%(2022・23年度は9.34%)

2024・25年度の後期高齢者医療制度の保険料(社保審・医療保険部会(2)1 240410)



上記見直し論議の際には「2024年度:年額8万6100円、月額7170円、2025年度:年額8万7200円、月額7270円」と試算されていましたが、「高齢者人口の伸びが想定よりも小さかった」「現役世代の所得がこの間、上昇している」ことなどを背景に、「実際の保険料額<試算額」となっています。



なお、今後も少子高齢化は進展するため、現役世代の負担増を避けるための「高齢者世代の負担増」論議が継続されると見込まれます。議論の推移をしっかり見守る必要があります。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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