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「便表面の便潜血を画像化」する技術を開発、将来「トイレ内で便潜血を判定→早期の大腸がん発見」できると期待—国がん他

2024.11.22.(金)

「便表面の便潜血を画像化」する技術を開発し、高精度で「便潜血」を鑑別できることを確認—。

将来、「トイレ内で便潜血を判定する」→「早期の大腸がん発見できる」ことになると期待が高まる—。

国立がん研究センターとエバ・ジャパン社が11月19日に、こうした研究成果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

大腸がん検診を受けていなかった人の大腸がんの発見につながると期待

大腸がんの罹患者・死者は年々増加しており、2023年の「人口動態統計月報年計(概数)」を見ると、男女ともに「もっとも死者数の多いがん種」なっています(関連記事はこちら)。

対策として「適切な検診による早期発見→早期治療」が重要で、我が国では「40歳以上を対象とした便潜血検査2日法」が行われています。しかし、検診受診率は40%程度で、米国(68%)よりもかなり低く、がん対策推進基本計画で設定された目標値「60%」には及んでいません。また、「検診受診率の把握が適切に行われていない」との指摘もあります(関連記事はこちら

検診を受けない原因として、「がん検診を受ける時間がない」「無症状で健康であるため検診の必要がない」などのほか、「便潜血検査は、便から擦って検体を採取し、検体を冷所に保管するなどの手間がかかる」ことなどがあげられています。

そこで、国がんとエバ・ジャパン社では「日常の排便で簡易的に便潜血が測定できれば、検診受検率の上昇に繋がるのではないか」との考えのもとに、ハイパースペクトルイメージングという技術用いて「便表面の便潜血領域を瞬時に画像化し、便潜血の有無を判断する」方法を開発し、便潜血画像化ソフトの有用性に関する共同研究を実施しました。

具体的には、2021年10月から2022年4月までに国立がん研究センター東病院で、下剤を病院で飲む方法で大腸内視鏡検査を受けた100名の患者を対象に、「画像で便潜血の有無を判断する」ための研究を実施。

【Aグループ】:50名(うち、がん患者28 名)
→判定画像を作成する
→便表面から100か所(1検体につき2か所)をランダムに選び、その部位の便潜血定量値を測定し、また同部位をハイパースペクトルカメラで撮影し、得られたスペクトル特徴の違いを、機械学習等により解析した判別画像を作成
→通常、便潜血検査のカットオフ値(陰性/陽性を分ける値)は100ng/mlですが、本研究では大腸がん検診率の向上を目的としており、偽陽性率(間違って陽性と判定してしまう割合)をより少なくするため、カットオフ値を「400ng/ml」と高く設定

【Bグループ】:50名(うち、がん患者26名)
→判別画像の精度を検証する
→A群同様ランダムに250か所(1検体につき5か所)を、A群で作成した判別画像で判定し、実際に「正しく判定できているか」の精度を検証



この研究から、次のような結果が得られました。

▽A群では、次のような「高い精度の判別画像」を作成できた
▼感度(「便潜血定量値400ng/ml以上の領域が陽性である」と示す能力):77.1%
▼特異度(「便潜血定量値400ng/ml未満の領域が陰性である」と示す能力):96.9%
▼正診率(「便潜血定量値400ng/ml以上の領域を正しく陽性であると、便潜血定量値400ng/ml未満の領域を正しく陰性である」と判別した割合):90.0%
▼陽性的中率(「判定画像で陽性と判定され、実際に便潜血定量値が400ng/ml以上であった」割合):93.1%
▼陰性的中率(「判定画像で陰性と判定され、実際に便潜血定量値が400ng/ml未満であった」割合):88.7%

▽B群の精度検証で得られた画像をみると、▼肉眼でも分かる「血液が全体に広がった便」では、便全体が画像化される(図1-a)▼肉眼では分からない便潜血は、便の一部に父祖規則に画像化される(図1-b)▼陰性の場合は画像化されない(図1-c)—となった

便潜血画像化ソフトの有用性1



▽B群の精度検証でも、次のように「高い精度で便鮮血定量値400ng/mlの領域を画像化できる」ことが確認された
▼感度(「便潜血定量値400ng/ml以上の領域が陽性である」と示す能力):83.3%
▼特異度(「便潜血定量値400ng/ml未満の領域が陰性である」と示す能力):92.9%
▼正診率(「便潜血定量値400ng/ml以上の領域を正しく陽性であると、便潜血定量値400ng/ml未満の領域を正しく陰性である」と判別した割合):90.8%
▼陽性的中率(「判定画像で陽性と判定され、実際に便潜血定量値が400ng/ml以上であった」割合):76.3%
▼陰性的中率(「判定画像で陰性と判定され、実際に便潜血定量値が400ng/ml未満であった」割合):95.3%



さらに、便潜血画像化ソフトでは、▼「偽の血液を垂らしたもの」(水、ミルク、また血液に近い色のトマトジュース、紅茶、珈琲など)を見極め、色での識別でなく「確実に血液の存在する領域のみを画像化」できること▼便表面の血液を画像化するが、便「内部」の血液は画像化されないこと—なども確認。

ここから、「肉眼では見えない便表面の高定量値便潜血の画像化」に成功したと言えます。

便潜血画像化ソフトの有用性2



共同研究グループでは、この技術を実際のトイレで活用することによって「非常に簡便に便潜血の測定が可能になり、国内だけでなく世界に広がる可能性がある」と考え、現在「実際にトイレで使用できる機器の開発」に努めています。

この技術が広まることで、▼「がん検診を受ける時間がない」「無症状で健康であるため検診の必要がない」という理由で大腸がん検診を受けていなかった人の大腸がんの発見につながる▼検診の必要性が啓蒙されることで、検診受検率の更なる上昇につながる—と期待されます。



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