2023年の合計特殊出生率は1.20に低下、東京都では史上初めて「1.0」を切る危機的な状況―厚労省
2024.6.6.(木)
2023年の合計特殊出生率は1.20に低下し、東京都では史上初めて「1.0」を切る危機的な状況にある―。
死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患、第3位の老衰という順位に変わりはないが、「老衰」による死亡率が前年比べて9.6ポイントも増加している―。
また「がん」による死亡を詳しくみると、男性では「肺がん」死亡が、女性では「大腸がん」死亡がトップである状況に変わりはないが、「膵臓がん」の増加が目立つ―。
このような状況が、6月5日に厚生労働省が公表した2023年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
目次
2023年の合計特殊出生率は1.20に低下、東京都では「1.0」を切る危機的状況
我が国では、少子高齢化が急速に進行しています。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味します。さらに社会保障制度にとどまらず、我が国の存立そのものをも脅かします(国家の3要素である「領土」「国民」「統治機構」の1つが失われ、日本国そのものが消滅しかねない)。
このため、人口動態統計として▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの事象を把握し、対策を検討していくことが我が国にとって非常に重要となるのです。
2023年の状況を見ると、出生数は72万7277人で、前年(77万759人)に比べて4万3482人減少しました。出生率(人口1000対)は6.0で、前年(6.3)から0.3ポイント低下しています。
一方、死亡数は157万5936人で、前年(156万9050人)に比べて6886人の増加。死亡率(人口1000対)は13.0で、前年(12.9)から0.1ポイント上昇しています。
出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス84万8659人で、前年(マイナス79万8291人)に比べて5万368人と減少ペースはさらに加速。自然増減率(人口1000対)はマイナス7.0で、前年(マイナス6.5)から0.5ポイント低下。自然増減数・自然増減率ともに17年連続で減少かつ低下しています。我が国の「人口減少」にさらに拍車がかかっていることが分かります。
さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2023年は1.20で、前年(1.26)から0.06ポイントの低下となりました。合計特殊出生率は2015年に上昇したものの、その後、再び低下し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響で低下が続いています。
都道府県別の合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.60(前年に比べて0.1ポイント低下)、次いで▼宮崎県の1.49(同0.14ポイント低下)▼長崎県の1.49(同0.08ポイント低下)▼鹿児島県の1.48(同0.06ポイント低下)▼熊本県の1.47(同0.05ポイント低下)―などで高くなっています。
逆に最も低いのは東京都の0.99(同0.05ポイント低下)で、次いで▼北海道の1.06(同0.06ポイント低下)▼宮城県の1.07(同0.02ポイント低下)▼京都府の1.11(同0.07ポイント低下)▼神奈川県の1.13(同0.04ポイント低下)—などで低くなっています。都道府県別に色分けすると、依然として「明確な西高東低の傾向がある」ことを再確認できます。
また、東京都では史上初めて「1.0を切る」状況であり、政府は危機感を募らせています。
前述のとおり、国家が存立するためには▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠です。人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味します。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が極めて脆くなってきていると言えます。
がんによる死亡が死因第1位を走るが、「老衰」による死亡が急増
次に死因別の死亡数を見ると、上位5つは次のような状況です。
▼第1位:悪性新生物(腫瘍)の38万2492人(人口10万対の死亡率は315.6で、前年に比べて0.5ポイント上昇)
▼第2位:心疾患(高血圧性を除く)の23万1056人(同190.6で、同じく0.2ポイント低下)
▼第3位:老衰の18万9912人(同156.7で、同じく9.6ポイント増加)
▼第4位:脳血管疾患の10万4518人(同86.2で、同じく1.9ポイント低下)
▼第5位:肺炎の7万5749人(同62.5で、同じく1.8ポイント低下)
第1位の悪性新生物は、2023年の全死亡者に占める割合が24.3%(前年度に比べて0.3ポイント低下)となり、1981年以降、死因第1位を独走しています。
また2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、さらに2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。その後も「老衰」による死亡が増加していることから、医療・医学等の水準が高まり「天寿を全うする」方の増加が伺えます。「いかに、我が国の医療提供体制が優れているのか」が確認できるデータと言えます。
なお「老衰」の人口10万対死亡率の増加は、医療・介護分野において「看取り」がさらに重要なテーマとなることを意味します。厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成。そこでは「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいのか、逆に受けたくないのかを我々国民1人1人が考え、家族や親しい友人ら、さらに医療・介護関係者と繰り返し、繰り返し話し合っておく」(可能であればそれを文書にしておく)環境・風土の醸成などを進めていくことの重要性が謳われています(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。2024年度診療報酬改定では、入院料の通則においてACP対応が義務付けられており、この動きはさらに拡大していくと考えられます。
ところで主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。
例えば、死因第1を占める「悪性新生物」は、男女ともに5-9歳では大きなシェアを占めますが、その後に低下。しかし30歳を過ぎると増加に転じ(女性では30歳を過ぎた頃から急増)、男性では65-74歳頃、女性では55-59歳頃にピークとなり、再び低下モードにはいります。
高齢になるにつれ「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるのか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないのか」といった議論を更に進める必要があるでしょう。
がんによる死亡、男女とも「膵臓がん」の増加が目立つ
さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2023年の死亡数(人口10万対)は5万2910(前年から840増)、死亡率(人口10万対)は89.8(前年から0.8低下)となりました。
男性では、「大腸」がん(同様に2万7937、47.4)、「胃」がん(同様に2万5323人、43.0)、「膵」がん(同様に1万9858人、33.7)と続きます。
一方、女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(同様に2万5193人、40.4)、第2位は「肺」がん(同様に2万2852人、36.7)、第3位は「膵臓」がん(同様に2万316人、32.6)となりました。
なお部位別のがん死亡率の推移を男女別にみると、次のように傾向そのものに変わりはありませんが、その動き方には若干の性差があります。
▼胃がん:男性↓(減少傾向)、女性→(横這いから若干の減少傾向)
▼肝臓がん:男性↓(減少傾向)、女性↓(減少傾向)
▼膵臓がん:男性↑(増加傾向)、女性↑↑(高い増加傾向)
▼肺がん:男性→(横ばい)、女性↑(増加傾向)
▼大腸がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
今後、社会的要因なども含めて男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。
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