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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2020年のコロナ受診控えで「がん発見」が大幅減、胃がんでは男性11.3%、女性12.5%も減少―国がん

2021.11.29.(月)

2020年には、新型コロナウイルス感染症が大流行し、感染を恐れた日本国民の受診控え(検診の受診控え、医療機関の受診控え)により「がんの診断・登録数」が前年に比べて大きく減少した―。

例えば胃がんでは、前年の登録数に比べて男性で11.3%、女性で12.5%も減少している―。

国立がん研究センター(国がん)が11月26日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2020年全国集計報告書」から、こうした状況が明らかになりました。国がんでは「適切なタイミングで適宜医療機関を受診できるようにすることが重要」と訴えています(国がんのサイトはこちら(プレスリリース、概要こちら(解説資料)こちら(2018年全国集計報告書資料、都道府県別・個別病院別のデータを掲載)

緊急事態宣言が最初に発せられた2020年5月に検診発見・自己発見ともに大きく減少

「がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計」は、院内がん登録のデータを集計し、▼がんの種類▼進行度(病期)▼治療の分布―を把握することで、国や都道府県のがん対策に役立てること等を目的とした調査です。2007年にがん診断が行われた症例から集計が行われ、今回は2020年にがんと診断された863施設(がん診療連携拠点病院450施設、小児がん拠点病院6施設、都道府県推薦病院349施設、任意でデータを提出した病院58施設)の104万379症例を対象に分析が行われました。2020年にがんと診断・登録された全数のおよそ72.5%をカバーしていると考えられます。

まず、がん診療連携拠点病院等における▼胃がん▼大腸がん▼肝臓がん▼肺がん▼前立腺がん▼乳がん―の登録数と年次推移(2010年から20年の診断)を見てみると、次のような状況が分かりました。

【胃】
●男性

▽2010年:4万6147→▽2011年:4万7772→▽2012年:5万562→▽2013年:5万2807→▽2014年:5万2702→▽2015年:5万3839→▽2016年:5万3195→▽2017年:5万2988→▽2018年:5万2585→▽2019年:5万3238→▽2020年:4万7220

●女性
▽2010年:1万9384→▽2011年:2万156→▽2012年:2万1138→▽2013年:2万2458→▽2014年:2万2619→▽2015年:2万3045→▽2016年:2万2667→▽2017年:2万2766→▽2018年:2万2226→▽2019年:2万3237→▽2020年:2万337



【大腸】
●男性

▽2010年:4万4066→▽2011年:4万6959→▽2012年:5万445→▽2013年:5万4601→▽2014年:5万6712→▽2015年:5万9678→▽2016年:5万9405→▽2017年:6万627→▽2018年:6万1372→▽2019年:6万4569→▽2020年:6万188

●女性
▽2010年:2万9208→▽2011年:3万1528→▽2012年:3万3691→▽2013年:3万6929→▽2014年:3万7884→▽2015年:4万121→▽2016年:4万444→▽2017年:4万744→▽2018年:4万1104→▽2019年:4万4229→▽2020年:4万1786



【肝臓】
●男性

▽2010年:1万6929→▽2011年:1万7178→▽2012年:1万6749→▽2013年:1万7266→▽2014年:1万7036→▽2015年:1万7148→▽2016年:1万6731→▽2017年:1万6561→▽2018年:1万7092→▽2019年:1万7386→▽2020年:1万6826

●女性
▽2010年:7468→▽2011年:7534→▽2012年:7397→▽2013年:7394→▽2014年:7234→▽2015年:5514→▽2016年:7020→▽2017年:6673→▽2018年:6637→▽2019年:6779→▽2020年:6437



【肺】
●男性

▽2010年:4万3736→▽2011年:4万5799→▽2012年:4万7585→▽2013年:5万255→▽2014年:5万1420→▽2015年:5万3074→▽2016年:5万4207→▽2017年:5万6353→▽2018年:5万7463→▽2019年:6万1272→▽2020年:5万9239

●女性
▽2010年:1万9345→▽2011年:2万369→▽2012年:2万1608→▽2013年:2万2762→▽2014年:2万3988→▽2015年:2万5078→▽2016年:2万6291→▽2017年:2万7471→▽2018年:2万8308→▽2019年:3万571→▽2020年:2万8994



【前立腺】
●男性

▽2010年:4万2256→▽2011年:4万7874→▽2012年:4万8341→▽2013年:5万527→▽2014年:5万846→▽2015年:5万5424→▽2016年:5万3916→▽2017年:5万7111→▽2018年:5万9705→▽2019年:6万3846→▽2020年:5万9938

【乳房】
●女性

▽2010年:5万4231→▽2011年:5万7148→▽2012年:6万309→▽2013年:6万4552→▽2014年:6万6069→▽2015年:7万1216→▽2016年:7万2231→▽2017年:7万2397→▽2018年:7万5173→▽2019年:8万2445→▽2020年:7万89454

初めて緊急事態宣言の出された2020年には、がんの診断・登録数が前年に比べて大きく減少している(2020年院内がん登録全国集計1 211126)



2019年までの増加状況に比べ、2020年には登録状況が減少していることが分かります。がんの種類別・性別に「2018年→19年の登録数変化率」と「2019年→20年の登録数変化率」を見ると、次のようになりました。5大がんすべてで2020年の登録数減少が見られますが、とりわけ男性の胃・大腸、女性の乳房・胃で登録数の減少が目立ちます。

【胃】
●男性:2018→19年は1.2%増、19年→20年は11.3%減→13.5ポイントの減少
●女性:同じく4.5%増、12.5%減→17.0ポイントの減少

【大腸】
●男性:同じく5.2%増、6.8%減→12.0ポイントの減少
●女性:同じく7.6%増、5.5%減→13.1ポイントの減少

【肝臓】
●男性:同じく1.7%増、3.2%減→4.9ポイントの減少
●女性:同じく2.1%増、5.0%減→7.1ポイントの減少

【肺】
●男性:同じく7.4%増、3.3%減→10.7ポイントの減少
●女性:同じく8.0%増、5.2%減→13.2ポイントの減少

【前立腺】
●男性: 同じく6.9%増、6.1%減→13.0ポイントの減少

【乳房】
●女性:同じく9.7%増、4.2%減→13.9ポイントの減少



2016年から2020年の院内がん登録全国集計すべてに参加した735施設を対象に▼診断月▼発見経緯▼病期—などについて、「2016-19年の4年平均」(以下、単に4年平均)と「2020年」を比較すると、次のような状況も明らかになりました。

▽2020年の全登録数は4年平均と比較して98.6%(前年比較は94.1%)と減少していた(つまり1.4%の減少)。診断月別では「緊急事態宣言が発出されていた5月に登録数の減少」が見られ、▼がん検診発見例(たとえば胃がんでは24.3%減)▼検診以外の発見例(同じく11.0%減)—ともに減少していた

初めて緊急事態宣言の出された2020年5月に、検診発見・自己発見ともに大きく減少している(2020年院内がん登録全国集計2 211126)



▽がん種・病期別では、「2018・2019年の2年平均」(以下、単に2年平均という)と「2020年」とを比較すると、大腸がんのゼロ期(91.2%)、IV期(99.6%)でやや減少。月別に見ると「5月にいずれの病期も減少し、6月以降の登録数は回復する」傾向にあった



国がんでは「検診発見例、自覚症状などによる発見例の登録数がともに減少していることから、一定の『受診控え』が生じた可能性が考えられる。適切なタイミングで適宜医療機関を受診できるようにすることが重要である」と訴えています。

もちろん「新型コロナウイルス感染症への罹患を恐れた患者の受診控え」であり、こうした状況は、例えば厚労省の「がん対策推進協議会」などでも報告されています(関連記事はこちらこちら)。「受診控え」→「発見の遅れ」→「治療の遅れ・がんの進行」→「予後の悪化」につながる可能性があり、例えば、国、自治体や保険者が「がん検診の積極的な受診」「自身で異常を感じた場合の早期の医療機関受診」を訴えていくことも非常に重要と考えられます。



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