「感染」「能動喫煙」によるがんの医療費・経済的損失が大きく、HPVワクチン接種勧奨、ピロリ除菌、たばこ対策強化など進めよ―国がん
2023.8.4.(金)
予防可能な「感染」と「能動喫煙」に起因するがんの経済的負担が大きい。例えば▼子宮頸がんワクチンの更なる積極的勧奨(2022年より積極的接種勧奨が再開)▼肝炎ウイルスに感染している場合の治療▼ヘリコバクター・ピロリの除菌治療▼定期的な健診・検診の受診勧奨を行う▼たばこ対策を強化する—ことで、「命を救う」ことはもちろん「経済的負担の軽減にもつながる」—。
国立がん研究センターは8月2日に、「日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超と推計され、適切ながん対策により経済的負担の軽減が期待される」との研究結果を公表し、こうした考えを強調しました(国がんのサイトはこちらとこちら)。
ピロリ菌による胃がん、HPVによる子宮頸がんなどで経済損失が大きい
がんは、我が国において死因第1位を独走しています(関連記事はこちら)が、多くのがんは生活習慣や環境要因の改善によって予防できると考えられています。
まずがん罹患の状況を見てみましょう。
国がんの分析によれば、▼がん患者延べ数(2015年受療)は、男性210万7331人、女性193万8609人で、上位3部位は、男性では前立腺がん55万1195人、胃がん31万6112人、結腸がん23万125人、女性では乳がん65万9970人、結腸がん19万7745人、胃がん15万4807人▼がんの経済的負担(直接医療費、死亡や罹患による労働損失)は、約2兆8597億円(男性:約1兆4946億円、女性:約1兆3651億円)▼労働損失が最も大きかったがんは、男性では肺がん(約921億円)、女性では乳がん(約2326億円)—であることが分かりました。
このうち「生活習慣や環境要因に起因するがん」の経済的負担は約1兆240億円(男性では約6738億円、女性では約3502億円)と推計され、部位別にみると▼男女ともに胃がんの経済的負担が最も高い(男性:約1393億円、女性:約728億円)▼男性では次いで肺がん(約1276億円)▼女性では次いで子宮頸がん(約640億円)—が高くなっています。
また、(1)能動喫煙(2)飲酒(3)感染(4)過体重(5)運動不足—という予防可能なリスク要因別の経済的負担をみると、▼(3)の「感染」による経済的負担が最も高い(約4788億円)▼「感染」関連のがん種別の経済的負担を見ると、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃がん(約2110億円)、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん(約640億円)が大きい▼(1)の「能動喫煙」による経済的負担(全体で約4340億円、うち肺がん約1386億円)、(2)の「飲酒」による経済的負担(約1721億円)も大きい—ことも明らかになりました。
こうした結果から、次のような点が浮上してきます。
▽女性では、「乳がん」「子宮頸がん」について働き盛りの若年世代での罹患が多く、直接医療費はもちろん、大きな「労働損失」が生じている
▽感染に起因するがん、とりわけ「胃がん」(ヘリコバクター・ピロリ感染)や「子宮頸がん」(ヒトパピローマウイルス感染)で経済的負担が大きいが、適切な対策(ピロリ除菌、HPVワクチン接種など)が講じられた場合には多額の経済的負担を回避できると考えられる
▽「能動喫煙」による経済損失も大きい
国がんでは、予防可能な「感染」と「能動喫煙」に起因するがんの経済的負担が大きく、とりわけワクチン接種や治療という選択肢がある「感染」について多額の経済的負担を回避できる可能性があると指摘。より具体的に▼子宮頸がんワクチンの更なる積極的勧奨(2022年より積極的接種勧奨が再開)▼肝炎ウイルスに感染している場合の治療▼ヘリコバクター・ピロリの除菌治療▼定期的な健診・検診の受診勧奨を行う▼たばこ対策を強化する—ことで、「命を救う」ことはもちろん「経済的負担の軽減にもつながる」と強調しています。
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