胆道がんの手術後標準治療は「S―1補助化学療法」とすべき、有害事象少なく、3年生存率も高い―国がん・JCOG
2023.2.8.(水)
難治がん・希少がんの1つである「胆道がん」について、現在の手術後標準治療である「経過観察」よりも、「S-1補助化学療法」のほうが3年生存率が高い。また有害事象も限定的である—。
このため、本邦において胆道がんの手術後標準治療は「S-1補助療法」とし、胆道がんの根治手術後はS-1補助療法を行うことを第1選択として推奨する—。
国立がん研究センターと日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が2月1日に、こうした研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。難治がん・希少がん対策が1歩ずつ進んでいる状況が伺えます。
現在の術後標準治療である「経過観察」よりも、S-1投与で3年生存率が上昇
難治がんかつ希少がん(本邦で年間約2万人が罹患)の1つである「胆道がん」については、治癒のために外科手術が必要ですが、▼早期発見が難しく、診断時にはがんが周囲の臓器・血管に広がっており手術不能なケースが少なくない▼手術可能な場合でも、肝切除や膵切除などの大きな手術が必要になることが多い▼手術後の再発率が高い—ことから、「補助療法の確立」が長年求められてきています(現在の本邦における標準治療は「根治手術後の経過観察」である)。
この点、国がんとJCOGでは「術後のS-1補助療法」(一般名「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合錠」、販売名「エスワンケーケー配合錠T20」「エスワンタイホウ配合OD錠T20」ほか)に着目し、全国38施設の協力を得て、「標準治療である術後経過観察」に対する優越性を検証するランダム化第 III 相試験を実施しました。
具体的には、「胆道がんに対して根治手術を受けた患者440名」(20-80歳、全身状態のスコア(Performance status)が良好(ゼロまたは1)、規定の採血データで臓器機能障害がないな ど)を、▼経過観察のみ(標準治療)のグループ(経過観察群)▼S-1補助療法を受けるグループ(S-1群)—に半々に割り付け。3年後の状況を解析したところ、例えば次のような結果が得られました。
【主要評価項目:3年生存割合】
▽経過観察群で67.6%、S-1群で77.1%
→S-1群で有意に延長する
【副次評価項目:有害事象】
▽S-1群の主な有害事象(Grade3-4)は好中球減少(14%)、胆道感染(7%)—にとどまった
この結果を踏まえ、国がんでは「S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療となる」「胆道がんの根治手術後はS-1補助療法を行うことが第1選択として推奨される」と結論づけています。
海外でも同様の臨床試験が行われており、今後「日本だけでなく海外のガイドラインでも標準治療が書き換えられ(経過観察ではなくS-1補助化学療法を推奨する)、胆道がん患者に有効な治療が提供される」ことに期待が集まります。
なお、国がんが支援する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、胆道がんの「術前」化学療法として、▼ゲムシタビン(ジェムザール注射用、ほか後発品多数)▼シスプラチン(ランダ注、ほか後発品あり)▼S-1—の3剤併用の有効性を検証する臨床試験を行っており、こちらの結果にも期待が集まります。
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