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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

個々の患者のバイオマーカーに適合する標的治療(がん個別化治療)により、患者の生存期間延長などの効果が得られる―国がん

2024.7.23.(火)

「分子プロファイリングに基づき、個々の患者に最適な治験薬を選択し、それを投与する」ことにより、多くの患者で有効な効果が得られている—。

また、「バイオマーカーに適合する標的治療」が患者の予後を改善する可能性がある—。

国立がん研究センターが7月19日に、こうした「がん個別化医療の有効性」に関する研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

大規模データベースを用いて「治験薬の効果」などを詳しく解析

昨今、がん患者の遺伝子変異やがんの詳細な特性などを踏まえ、それぞれの患者に合わせた「がん個別化医療」が進展しています。

その一環として、国立がん研究センター東病院(千葉県)で2015年からスタートしている「SCRUM-Japan」(産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト、全国の医療機関や製薬企業と協力して、がん患者の分子プロファイリングを行う取り組み)があります。

この取り組みの1つである「MONSTARプロジェクト」では、肺がん以外の固形がん患者(これまでに2万4000人超の患者が参加)を対象として、「遺伝子や分子の特徴を調べたマルチオミクス解析(遺伝子解析、RNA解析、タンパク質解析、代謝物質解析等を一括して分析する手法)の結果」と「詳しい臨床情報」を集めたデータベースが作成されています。

MONSTARプロジェクトの概要



今般、国がんでは、MONSTARプロジェクトで実施された4つの臨床研究(以下)結果を統合し、「治験薬の効果」や「バイオマーカーに基づく治療法の有効性」に関する評価・解析を実施しました。
【解析対象の4臨床研究】
(1) GI-SCREEN(進行消化器がん患者の腫瘍組織を遺伝子パネル検査(Oncomine Comprehensive Assay)で解析し、最適な治療薬を届ける全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト。2015-19年に実施し、5743人が登録)
(2) GOZILA(進行消化器がん患者を対象に、血液を用いた遺伝子解析(リキッドバイオプシー)でスクリーニングを行うプロジェクト。2018年から実施し、現在約5500人が登録(一部関連試験を残して登録は完了))
(3) MONSTARSCREEN(広範な固形がん患者を対象に、がん組織・リキッドバイオプシー、糞便を用いた腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の検査・解析などを行うスクリーニングプロジェクト。2019-21年に実施し、2224人が登録)
(4) MONSTAR-SCREEN-2(肺がん以外の進行固形がん患者を対象に、がん組織だけでなく、リキッドバイオプシーを用いて、がんのDNA・RNA・タンパク質などの異常を網羅的に解析するスクリーニングプロジェクト。2768人が登録)



具体的には、4つの臨床研究の参加者1万6144名の患者データを統合的に解析し、「患者の特徴」、「治療の標的となったバイオマーカーの種類」、「治療薬の効果」などを詳しく調査。そこから、次のような結果が得られました。

▽「治験薬による治療を受けた患者」(674人)のうち、奏効した患者は29.2%(197人)で、全生存期間の中央値は14.8か月と延長した

▽最も治療効果が高かった治験薬は「抗HER2治療薬」であった

MONSTARプロジェクトから治験に参加した患者の治療解析



▽「バイオマーカーに適合する治療を受けた患者」の生存期間中央値は19.1か月であったが、「適合する治療を受けなかった患者」では15.3か月であった
→「バイオマーカーに基づいた標的治療により、患者の生存期間が延長する」可能性がある

バイオマーカーに適合した治療の有無による生存解析



こうした結果を踏まえて国がんでは、「MONSTARプロジェクトで行った分子プロファイリングに基づき、個々の患者に最適な治験薬による治療を施すことで、多くの患者で有効な効果が得られている」、「バイオマーカーに適合する標的治療が患者の予後を改善する可能性がある」と判断しています。分子プロファイリング検査で見つかったバイオマーカーに基づいて、最適な標的治療を行う「がん個別化医療」が、きわめて重要であることを確認できます。

遺伝子等の解析技術や創薬技術が目覚ましく発展する中で、患者一人ひとりの腫瘍の特徴をより詳細に調べる精密な分子プロファイリングが可能となってきており、今後、より多くのがん患者に、より早く、より有効な治療薬を届けられると期待されます。

なお、MONSTARプロジェクトでは、新たな大規模研究「MONSTAR-SCREEN-3」を開始し、進行固形がんにとどまらず、「治癒切除が可能な早期の固形がん」や「血液腫瘍」の患者も対象として、それぞれ病態に応じた最先端のマルチオミクス解析も行われます。



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