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へき地の公民館等に「医師が常駐しないクリニック」を特別設置、そこでスタッフがオンライン診療受診を支援—社保審・医療部会(2)

2022.12.7.(水)

へき地の公民館などに「医師が常駐しないクリニック」を特別に設置することを認め、そこでスタッフが患者(PC操作に不慣れな高齢患者など)のオンライン診療受診を支援することを可能としてはどうか―。

12月5日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こうしった議論も行われました。さらなる論点も含めた検討を続け、年度内(2023年3月まで)の意見取りまとめを目指します。

12月5日に開催された「第94回 社会保障審議会 医療部会」

へき地の公民館で「スタッフがオンライン診療を支援する」ことをクリニック特例で可能に

医療部会では、「D to P with N」の発展形とも言える、看護師や介護スタッフがサポートするオンライン診療の推進論議も行われています。

規制改革推進会議等から次の2つの形態のオンライン診療を「実施可能に向けて検討する」よう要請がなされています(関連記事はこちら、内閣府のサイトはこちら)。

(1)「通所介護事業所」(デイ・サービス)や「公民館」などでスタッフが機器操作などを手伝いながらオンライン診療を受けられるようにすること

(2)自宅療養患者宅近くまで「訪問看護師が自動車で検査機器」(患者宅までの運搬が困難な重量のある検査機器)などを運搬し、患者が当該自動車の中で、遠方の医師からオンライン診療を受けられ、それを訪問看護師がサポートすること



このうち(1)については、現在の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、オンライン診療指針)において「病院、診療所等の医療提供施設又は患者の居宅等で提供されなければならないこととされており、この取扱いは、オンライン診療であっても同様」、「第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない」などと規定されている点に照らし、他者が大勢いるデイ・サービス事業所や公民館などにいる患者にオンライン診療を行うことは現行法令では極めて困難です。

しかし、▼高齢者の多くはパソコンやスマートフォン操作に不慣れであり、機器操作を支援してくれるスタッフがいるデイ・サービス事業所などの方がオンライン診療を受けやすい▼デイ・サービスの介護スタッフなどが医師に患者(高齢者)の状態(バイタルや雰囲気・要望など)を伝達し、また同スタッフが医師の指導内容をかみ砕き、分かりやすく患者(高齢者)に伝えることができる—というメリットもあると指摘されます。

医療部会では「プライバシー確保に十分配慮したうえで、公民館やデイ・サービス事業所などでのオンライン診療を行うことは十分検討に値する」との意見が多数でており(関連記事はこちら)、厚生労働省は12月5日の会合に次のような方向性(具体案の骨子)を提示しました。

(a)へき地等(無医地区、準無医地区、離島振興法・奄美群島新興開発特別措置法・小笠原諸島新興開発特別措置法・沖縄振興特別措置法で定める地域)において、公民館等の身近な場所に「オンライン診療のための医師が常駐しない診療所」を開設可能とする

(b)▼定期的に反覆継続(概ね毎週2回以上)して行われることのないもの▼一定の地点において継続(概ね3日以上)して行なわれることのないもの—であれば、「巡回診療の特例」として、診療所の開設は不要とし、巡回診療の実施計画の届け出で足りることとする

(c) 地域毎の医療提供体制(特にへき地医療対策)は都道府県が主導しているため、へき地等のうち「具体的にどの地点(公民館、郵便局等)に医師常駐不要の診療所を設定するか」という点については、都道府県が関与する



このうち(a)は、医療機関等の整備がなされず、医療アクセスに困難を生じている「山間地や離島などの公民館などに、オンライン診療を行うための医務室」を設置し、それを病院や診療所のサテライト施設として指定する、といったイメージが考えられます。医務室に医師は常勤していませんが、そこにPCやテレビ電話などが設置され、公民館スタッフなどの助力を得て、患者がオンライン診療を受ける、という形態が考えられそうです。

また、(b)はオンライン診療の頻度が少ない場合には、(1)の診療所開設までは求めず「巡回診療の拡大」として簡易な取り扱いを可能とするものです。

さらに、(c)では、(a)(b)について都道府県がその必要性を勘案し、医療安全上の問題がないかなどのチェックを行い、必要に応じて「開設の不許可」「内容の改善指導」を行うことなどが想定されます。



こうした方向に異論は出ていません。離島やへき地などの居住者に、対面診療には及ばないまでも一定の医療提供を行う道を確保するもので、多くのケースでは「公民館のスタッフ」や「デイ・サービスの介護スタッフ」などがオンライン診療を支援することになり、安全性も相当程度担保されると考えられるためです。

ただし、▼プライバシーの確保、公民館を運営する市町村との連携などを十分に図るべき(佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)▼オンライン診療で患者に緊急の医療が必要なことが分かった際に、救急対応(救急車やドクターヘリなど)が可能な体制をセットで整えることが必要ではないか(神野正博委員:全日本病院協会副会長、加納繁照委員:日本医療法人協会会長)▼新たな仕組みが医療アクセスを異なる場面で制限することの内容に留意すべき(楠岡英雄部会長代理:国立病院機構理事長、島崎謙治委員:国際医療福祉大学大学院教授)—といった提案も出ており、今後、調整が進められます。

また上記(2)の新たなオンライン診療については、別途議論が行われる見込みです。本年度内(2023年3月まで)に意見取りまとめが行われることでしょう。

こうした新形態が認められれば、オンライン診療指針の見直しも必要になってくるでしょう。この点に関連して島崎委員は「D to D形態(例えば遠隔画像診断など)は指針の外に置かれているが、それでよいのか改めて検討すべき」、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長は「D to P with D、D to P with N以外の、D to P with介護スタッフや D to P with行政職員などの形態を認める必要がある」とコメントしています。



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