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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

かかりつけ医は「医療版のケアマネジャー」の役割、国民・患者自身が「選択」できる仕組みとすべき―全世代型社会保障検討会議

2022.11.15.(火)

かかりつけ医は「医療版のケアマネジャー」として、フリーアクセスの中で「医療資源の最適配分」を行う役割を果たす―。

かかりつけ医は「国民・患者自身が選択できる」仕組みとしなければならない―。

かかりつけ医の広範な機能を「経済的に保証」しなければならない―。

11月11日に開催された全世代型社会保障構築会議で、香取照幸構成員(上智大学総合人間科学部教授、未来研究所臥龍代表理事)から、このような「かかりつけ医・かかりつけ医機能に関する論点」が示されました(内閣官房のサイトはこちら)。

かかりつけ医機能とは、医療版の「ケアマネジャー」の役割ではないか

Gem Medで報じているとおり、「かかりつけ医機能」に関する議論が熱を帯びてきています。

外来医療について「まずかかりつけ医機能を持つ医療機関にかかり、そこから必要に応じて高機能病院を紹介してもらう」という流れの強化が求められています【外来医療の機能分化】。現在も「外来患者の大病院集中」(軽症であっても大病院外来を受診する傾向)が続いており、これは「大病院スタッフの疲弊」「入院患者対応の低下」「真に高度外来が必要な患者のアクセス阻害」などの問題を招いてしまっているためです。

外来医療機能分化を進めるためには、「紹介中心型の高機能病院」と「かかりつけ医機能を持つ医療機関」とが車の両輪となることが重要です。紹介中心型の高機能病院については「地域医療支援病院」「特定機能病院」「紹介受診重点医療機関」などの整備が進められ、明確化が図られてきています(関連記事はこちら(紹介受診重点医療機関)こちら(2022年度診療報酬改定))。

一方、紹介する側の「かかりつけ医」「かかりつけ医機能」については、定義も明確にされておらず、また論者によってイメージする内容が千差万別であるなど「曖昧」な状況が続いていました。このため、本年(2022年)6月7日の「骨太方針2022」(経済財政運営と改革の基本方針2022)で「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」方針を明確化。また、昨年(2021年)12月の「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では、「かかりつけ医機能の明確化と、患者・医療者双方にとってかかりつけ医機能が有効に発揮されるための具体的方策について、2022年度・2023年度に検討する」方針を掲げています。

厚労省も社会保障審議会・医療部会において「かかりつけ医機能を検討していく」方針を明確にしています(関連記事はこちら)。

あわせて岸田文雄内閣総理大臣が議長を務める「全世代型社会保障構築会議」では、9月28日に、医療提供体制改革に向けて▼地域医療構想の推進▼医療法人改革(経営状況の見える化など)▼医療従事者の働き方改革の推進▼医師偏在対策の推進▼2040年を見据えた医療提供体制改革の構築▼「かかりつけ医機能」の在り方と、その機能が発揮される制度整備—という大きな論点を提示(内閣官房のサイトはこちら)。さらに今般の会議で、「かかりつけ医・かかりつけ医機能に関する論点」が香取構成員から示されたものです。

香取構成員は、まず「かかりつけ医・かかりつけ医機能の問題は 我が国の医療システム全体に関わる広範な論点を含んでいる」と指摘。具体的には、▼地域医療構想や地域包括ケアシステムなど「医療・介護サービスの提供体制」をどう考えるか▼無駄な受診の回避、フリーアクセスなど「医療へのアクセス保障・費用の最適化」をどう考えるか▼「健康管理、予防、治療・療養を通じた総合的・包括的健康保障」をどう実現するか―という、我が国の医療・介護制度の根幹の問題点とセットで、同時に解決していかなければならないのです。極めて広範で深い議論が必要となり、例えば「外国のかかりつけ医制度(英国のGeneral Practitioner制度を導入するなど)を導入すれば済む」わけではなく、我が国の医療提供体制・医療保険を踏まえた「かかりつけ医・かかりつけ医機能」を考えなければなりません。

この点、我が国の医療・介護提供は「多くのサービス提供主体」が関与しています。例えば、ある高齢者は、高血圧治療のために「内科のAクリニック」を、腰痛のために「整形外科の病院」を受診し、要介護2であるために介護保険の「通所介護」を利用している、といったケースは珍しくありません。介護保険では、各機関の役割分担や連携をケアマネジャー(介護支援専門員)が担っていますが、医療にはそうした役割を果たす仕組みがありません。香取構成員は、「かかりつけ医・かかりつけ医機能」とは、「医療におけるケアマネ」(医療マネジャー)の役割を果たすものではないか、と指摘しています。

では、具体的にどのような役割が「かかりつけ医・かかりつけ医機能」に求められるのでしょう。香取構成員は、例えば▼日常的な健康管理▼相談指導▼予防接種▼健診▼common diseaseへの対応(いわゆる「プライマリケア医」の役割)▼慢性疾患の医学管理▼夜間・休日の対応▼専門医療機関への紹介▼入院支援▼退院後のフォロー▼複数医療機関を受診する患者の全身状態の把握▼終末期(看取り)対応▼介護など医療以外のサービスとの連携のハブ機能▼公衆衛生行政と通常医療の接点(災害やパンデミックなどの非常時における公衆衛生医としての役割)—など、極めて多岐にわたる、かつ重層的な役割が求められていると指摘しました。

こうした広範な役割を「1人の医師」で担うことは不可能です。例えば、24時間・365日の在宅医療提供・夜間休日対応などを1人の医師で対応することはできません。そこで香取構成員は、医療機関相互の役割分担と協働・ネットワーク、かかりつけ医をバックアップする病床機能を有する地域病院、診診・病診連携システムの構築など「システムとしてのかかりつけ医機能を地域の医療提供体制の中で作り上げていく」ことが重要と強調しています。

フリーアクセスの中で医療資源の最適配分を行うことが「かかりつけ医」の重要な役割

また、「かかりつけ医・かかりつけ医・かかりつけ医機能」は「フリーアクセスをどう考えるか」という文脈で議論されることも少なくありません。

フリーアクセスは、患者・国民が、自身の判断で医療機関を選択して受診する仕組みと言えます。「疾病の早期発見・早期治療につながると考えられる」「医療機関間の競争によりサービスの質が向上する」などのメリットもありますが、「重複受診や重複検査、多剤投与を招く」(=医療資源の無駄使い)というデメリットも存在します。医療の高度化・人口の高齢化に伴って医療費が膨張する一方で、支え手となる現役世代が減少する中では「医療費の伸びを我々国民が負担できる水準に抑える」ことが必要不可欠なため、このデメリットを無視することは許されません。

この点、香取構成員は「フリーアクセスの中で医療資源の無駄使いを避けるためにも『かかりつけ医・かかりつけ医機能』が不可欠である」との考えを示しました。上述の「医療マネジャーであるかかりつけ医・かかりつけ医機能」が、「患者中心の医療・生活を最適の資源分配・最適のコストで実現する」ことに期待を寄せています。

なお、一部には「英国のGP制度のように、国民1人1人がかかりつけ医を持ち、まずそこを受診する。他の医療機関を受診する場合には、かかりつけ医からの紹介を基本とし、それ以外では別途の費用負担を患者に求める」という仕組みも提唱されていますが、香取構成員は、こうした議論に与していませんが、「必要な医療サービスが保障されることを大前提に、国民の医療サービス利用のあり方についても、専門職による支援を前提とした何らかのルール化を考えることが必要」ともコメントしています。

かかりつけ医は「国民・患者が自分自身で選択する」仕組みとしなければならない

さらに、こうした「かかりつけ医機能」が発揮されるためには、▼情報の一元化・PHR・医療DX▼かかりつけ医「選択」の保証▼かかりつけ医への費用保障—が不可欠であると香取構成員は強調します。

1点目の情報一元化が必要不可欠である点は述べるまでもありません。2つ目の「選択」は「かかりつけ医機能は患者・利用者との信頼関係があって初めて十全に発揮される」ために、「国民・患者が、自分の判断でかかりつけ医を選択できる環境を保証すべき」との指摘です。例えば、都道府県や保険者から「国民はかかりつけ医を登録しなければなりません(義務付け)。あなたのかかりつけ医は、近隣の●●クリニックとします」などと強制的に割り当てられる性質のものではない点が確認されています。

また「かかりつけ医への費用保障」とは、上述した広範かつ重層的な役割を「経済的にしっかり評価しなければならない」という点です。上述した役割の中には医療保険・介護保険の外に位置づけられるものも少なくなく、当然、診療報酬・介護報酬は支払われません。この点について香取構成員は、「かかりつけ医機能を評価する診療報酬をどう設定するか」という議論から入るのではなく、まず「求められる機能役割を確実に実行できる条件整備(制度整備と基盤整備)」を行い、その上でその「機能役割に相応しい費用保障の仕組み」を検討するべきと提案しています。



今後、こうした考え方が社会保障審議会・医療部会にも提示されるでしょう。また、各所から「かかりつけ医機能の在り方」に関する提言もなされています(関連記事はこちらこちら)。こうした様々な考え方を踏まえて、幅広く、かつ深い視点で「かかりつけ医機能」について今年度(2022年度)・来年度(2023年度)に議論が進んでいきます。



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