Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

医薬品を保険適用した後の「効能効果追加」などの評価改善、市場拡大再算定の在り方を継続論議―中医協・薬価専門部会

2023.7.28.(金)

医薬品を保険適用した後に、「効能効果追加」などが行われた場合(例えば小児や希少疾病への効能追加など)には、一定の要件をクリアした場合に加算が行われるが、その制度改善を考えていく必要がある—。

市場拡大再算定の共連れルール(ある製品が予想をはるかに超えて販売された場合、当該製品はもちろん、類似品の価格も引き下げるルール)について、メーカーサイドは「予見可能性を著しく阻害する」として撤廃を求めているが、この点についてどう考えるべきか—。

7月26日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった議論が行われました(同日の「感染症対策」論議の記事はこちら、材料制度改革論議に関する記事はこちら)。

「優れた医薬品の評価充実」と「医療保険制度の維持」とのバランスをどう確保すべきか

2024年度には、診療報酬改定とセットで実施される、いわゆる「通常の薬価改定」が行われます。2024年度の薬価制度改革に向けては、▼後発品を中心とする安定供給▼創薬力の強化▼ドラッグ・ラグ/ロスの解消—といった大きなテーマが掲げられ、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書も踏まえた議論が進められます。

7月26日の薬価専門部会では(A)新薬の薬価改定時における評価(B)新薬を薬価収載した後の価格調整(市場拡大再算定など)—を議題としました(前回のイノベーション評価に関する記事はこちら)。

まず(1)の「薬価収載後の評価」(有用性の評価)としては、現在、(1)小児に係る効能・効果等追加の評価(2.5-15%)(2)希少疾病に係る効能効果等追加の評価(2.5-15%)(3)先駆的な効能効果等追加の評価(2.5~15%)(4)特定用途に係る効能効果等追加の評価(2.5-15%)(5)市販後に真の臨床的有用性が検証された場合の評価(2.5-15%)—が行われています。保険適用時(新薬の薬価基準収載時)には明らかにできなかった有用性を事後に評価するものと言え、「優れた医薬品の開発」(効能効果等追加も含めて)を経済的に支援する仕組みです。

医薬品を保険適用した後に、効能効果追加などが行われた場合の加算(中医協・薬価専門部会1 230726)



ただし、▼(1)から(4)は併算定できない▼低い加算率に偏っている—などの問題があるほか、メーカーからは「有用性の根拠となるデータの範囲を広げてほしい」との要望が出ています(関連記事はこちら)。

各種加算の適用状況(中医協・薬価専門部会2 230726)



今後、「薬価収載後の評価」(有用性の評価)をどう改善していくかを議論していきますが、中医協委員からは「たとえば、希少疾病の中でも極めて患者数が少ないウルトラオーファンに関する効能追加や、小児への適応拡大のための大規模治験実施等を捉え、現行加算(2.5-15%の加算)の範囲内で『高い加算の適用』などを考えてはどうか」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「加算の幅を広げ、よりメリハリの利いた評価としてはどうか。また(1)から(4)について併算定をすべて認めることは難しいが、複数に該当する場合には何らかの配慮を行ってはどうか」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)などの意見が出ています。



また(B)の市場拡大再算定は「市場規模が極めて大きく、かつ企業側の予想をはるかに超える場合には、一定の価格引き下げを行う」ものです。「医療保険財政の健全性確保、国民負担の軽減」を目的とする仕組みと言えます。

市場拡大再算定の概要(中医協・薬価専門部会3 230726)



従前より、この仕組みに対して製薬メーカーサイドは「優れた医薬品の開発を阻害するもの」として批判していますが、とりわけ「共連れルール」については「予見可能性を失わせる」と強く異を唱えています。

「共連れルール」は、ある医薬日が予想販売額を大きく超え、市場拡大再算定の対象となった場合に、市場が競合する類似薬の価格も引き下げるものです。例えば、画期的抗がん剤の「テセントリク」が市場拡大再算定の対象となった場合に、類似薬である「オプジーボ」や「キイトルーダ」「イミフィンジ」も同じ引き下げが行われるものです。

共連れルールについて、「類似薬」が多様化する中でどう考えていくか(中医協・薬価専門部会4 230726)



製薬メーカーにしてみれば、「他社製品の動向を正確に把握していない中で、突然、自社製品の価格が引き下げられることは、予見可能性を著しく阻害する」として撤廃を求めていますが、中医協委員からは「優れた医薬品を高く評価することは重要だが、医療保険制度の維持も非常に重要な視点である。市場拡大再算定の制度見直し論議を進めることはやぶさかでないが、『国民皆保険制度の維持』という点から目をそらしてはいけない」(長島委員)、「一口に『類似品』と言っても様々な形態のものが登場している。共連れルールの見直しは、市場拡大再算定の仕組み全体の中で考える必要がある」(森委員)、「市場拡大再算定の共連れルールについては、『年間販売額が極めて大きい場合の特例再算定について、再算定から4年間、1回に限り再算定類似品の対象(共連れルール)から除外する』といった見直しが行われたばかりであり、その効果検証もまだ行われていない。2024年度改革で共連れルール廃止にまで踏み込むことは困難である」(松本委員)との意見が出ています。



なお、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「新型コロナウイルス感染症治療薬のゾコーバ錠を保険適用するにあたり、『市場拡大再算定』の柔軟適用(市場規模を迅速に把握するため、通常の薬価調査やNDBに代え、▼コロナ感染症の拡大状況▼コロナ患者へのゾコーバ錠の投与割合▼ゾコーバ錠の出荷量—などの情報から「市場規模」(販売額)を推計し、市場拡大再算定や四半期再算定を適用すべきか否かを判断する)を決めた。今後、認知症治療薬(アリセプト)の保険適用論議がなされると考えるが、ゾコーバ錠での対応のような、薬剤の特性・特徴を踏まえた対応の可能性についても検討すべき」と提案しています。



優れた医薬品について高い評価がなければ、メーカーサイドの開発意欲が削がされてしまいます。一方、保険財源には限りがあり、評価を青天井に行うことも困難です。両者のバランスを考慮した難しい議論が今後も続きます。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

診療時間短縮などの効果あるプログラム医療機器、特別な評価をすべきか?―中医協・材料部会
感染対策向上加算等、「次なる新興感染症に備えるための医療機関・都道府県の協定」締結進むような見直しを—中医協総会
一部に「歪んだオンライン診療」、適切な形でのオンライン診療推進を目指せ!D to P with Nの量・質の拡充を―入院・外来医療分科会(4)
外来医療の機能分化が2024年度診療報酬改定でも重要テーマ、生活習慣病管理の取得・算定推進に向けた手立ては―入院・外来医療分科会(3)
入退院支援加算について「入院料別の施設基準・算定要件」など検討しては、緊急入院患者の退院支援が重要課題―入院・外来医療分科会(2)
がん化学療法の外来移行、「栄養指導」や「仕事と治療との両立支援」などと一体的・総合的に進めよ―入院・外来医療分科会(1)
高額な医薬品・医療機器など、より迅速かつ適切に費用対効果評価を行える仕組みを目指せ、評価人材の育成も急務―中医協
新薬創出等加算の企業要件には「相当の合理性」あり、ドラッグ・ラグ/ロスで日本国民が被る不利益をまず明確化せよ―中医協・薬価専門部会
在宅医療ニーズの急増に備え「在宅医療の質・量双方の充実」が継続課題!訪問看護師の心身負担増への対応も重要課題—中医協総会
入院医療における「身体拘束の縮小・廃止」のためには「病院長の意識・決断」が非常に重要―入院・外来医療分科会(3)
地域包括ケア病棟、誤嚥性肺炎等の直接入棟患者に「早期から適切なリハビリ」実施すべき―入院・外来医療分科会(2)
総合入院体制加算から急性期充実体制へのシフトで地域医療への影響は?加算取得病院の地域差をどう考えるか―入院・外来医療分科会(1)
「特許期間中の薬価を維持する」仕組み導入などで、日本の医薬品市場の魅力向上を図るべき―中医協・薬価専門部会
乳がん再発リスクなどを検出するプログラム医療機器、メーカーの体制など整い2023年9月から保険適用―中医協総会(2)
高齢患者の急性期入院、入院後のトリアージにより、下り搬送も含めた「適切な病棟での対応」を促進してはどうか—中医協総会(1)
2024年度の薬価・材料価格制度改革論議始まる、医薬品に関する有識者検討会報告書は「あくまで参考診療」—中医協総会(3)
マイナンバーカードの保険証利用が進むほどメリットを実感する者が増えていくため、利用体制整備が最重要—中医協総会(2)
かかりつけ医機能は「地域の医療機関が連携して果たす」べきもの、診療報酬による評価でもこの点を踏まえよ—中医協総会(1)
2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉等サービス報酬の同時改定で「医療・介護・障害者福祉の連携強化」目指せ—中医協総会(2)
医師働き方改革サポートする【地域医療体制確保加算】取得病院で、勤務医負担がわずかだが増加している—中医協総会(1)
患者・一般国民の多くはオンライン診療よりも対面診療を希望、かかりつけ医機能評価する診療報酬の取得は低調―入院・外来医療分科会(5)
医師働き方改革のポイントは「薬剤師へのタスク・シフト」、薬剤師確保に向けた診療報酬でのサポートを―入院・外来医療分科会(4)
地域包括ケア病棟で救急患者対応相当程度進む、回復期リハビリ病棟で重症患者受け入れなど進む―入院・外来医療分科会(3)
スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル―入院・外来医療分科会(2)
急性期一般1で「病床利用率が下がり、在院日数が延伸し、重症患者割合が下がっている」点をどう考えるべきか―入院・外来医療分科会(1)

総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!—中医協総会
DPC病院は「DPC制度の正しい理解」が極めて重要、制度の周知徹底と合わせ、違反時の「退出勧告」などの対応検討を—中医協総会
2024年度の費用対効果制度改革に向けた論議スタート、まずは現行制度の課題を抽出―中医協
電子カルテ標準化や医療機関のサイバーセキュリティ対策等の医療DX、診療報酬でどうサポートするか—中医協総会

日常診療・介護の中で「人生の最終段階に受けたい・受けたくない医療・介護」の意思決定支援進めよ!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会

2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)