介護報酬における【認知症加算】や【認知症チームケア推進加算】、訪問介護の【特定事業所加算】の詳細を明確化(2024年度介護報酬改定)
2024.5.30.(木)
厚生労働省は5月17日に、2024年度介護報酬改のQ&A(Vol.6)を公表しました(厚労省サイトはこちら)。今回は、▼訪問介護▼ユニット型施設(短期入所生活介護、短期入所療養介護、(地域密着型)介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院)▼認知症対応▼業務継続計画未策定減算▼総合事業—について、介護現場の疑問に答えています。
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介護報酬における【認知症加算】や【認知症チームケア推進加算】の考え方を明確化
2024年度介護報酬改定では、増加する認知症高齢者への対応力を介護サービス全体で向上していくことを目指し、たとえば次のような手当てが行われました(関連記事はこちら)。
▽(予防)認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院において、認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するために「スタッフがチームを組んで対応する」ことを評価する【認知症チームケア推進加算】(加算(I):1か月につき150単位、加算(II:同120単位)
▽訪問介護、訪問入浴介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護の【認知症専門ケア加算】について、認知症高齢者の重症化緩和や日常生活自立度IIの者への専門的ケアを行うことを評価する観点からの「利用者の受け入れに関する要件」見直し
▽訪問リハビリにおける【認知症短期集中リハビリテーション実施加算】(1週間に2日まで、1日につき240単位)の新設
▽(地域密着型)通所介護における【認知症加算】について、認知症利用者割合の軽減(要件緩和)を図り「算定の裾野を広げる」と同時に、スタッフ全体での「認知症対応力の向上」を図るための要件見直し
▽小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護における【認知症加算】について、「より充実した認知症ケアを行う」事業所を評価する区分(上位区分)の新設
▽介護老人保健施設における【認知症短期集中リハビリテーション実施加算】について、「入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する」ことを新たに評価する区分の設定
このうち、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護における【認知症加算】については、次のような区分新設が行われました。
【加算I】(新設、1か月あたり920単位)
(要件)
・認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置
・認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対する専門的な認知症ケアを実施
・従業者に対する、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議の定期開催
・認知症介護指導者研修修了者の1名以上配置+事業所全体の認知症ケアの指導等実施
・介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施・実施予定
【加算II】(新設、1か月あたり890単位)
(要件)
・認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置
・認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対する専門的な認知症ケア実施
・当該事業所の従業者に対する、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期開催
【加算III】(現行の加算Iから移行、1か月あたり800単位から「760単位」に引き下げ)
(要件)
・認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対する(看護)小規模多機能型居宅介護実施
【加算IV】(現行の加算IIから移行、1か月あたり500単位から「460単位」に引き下げ)
(要件)
・要介護2以上で、認知症高齢者の日常生活自立度IIに該当する者に対する(看護)小規模多機能型居宅介護を行う
今般のQ&A6では、▼新設した認知症加算(I)(II)は、事業所の体制を要件とする区分であり届け出が必要▼認知症加算(III)(IV)は従来の加算(I)(II)と同様に事業所の体制を要件としない区分であり届け出は不要—であるとの整理が行われました。
また、(予防)認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院における【認知症チームケア推進加算】は、次のような要件設定がなされています。
【認知症チームケア推進加算(I)】(1か月につき150単位)
(1)事業所・施設における利用者・入所者の総数のうち、「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」の占める割合が2分の1以上
(2)「行動・心理症状の予防・出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修」を修了している者、または「認知症介護に係る専門的な研修」および「認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修」を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる行動・心理症状に対応するチームを組む
(3)対象者個別に行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施
(4)行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、行動・心理症状の有無・程度の定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施
【認知症チームケア推進加算(II)】(1か月につき120単位)
▼上記(1)、(3)、(4)をクリア
▼「行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修」修了者の1名以上配置、かつ複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組む
今般のQ&A6では、次のような考えを明確にしました。
▽厚生労働省の2021-23年度老人保健健康増進等事業において研修を修了した者を、本加算の認知症チームケア推進研修を修了した者とみなしてよい
→2023年度BPSDケア体制づくり研修修了者でない者は、本年度(2024年度)中に速やかに、認知症チームケア推進ケア研修で用いる研修動画を視聴することが望ましい
▽加算(II)には「認知症介護実践リーダー研修」と「認知症チームケア推進研修」の双方の研修を修了した者の配置が必要とされるが、「認知症介護実践リーダー研修の受講が予定されている者について、認知症介護実践リーダー研修の受講前に認知症チームケア推進研修を受講する」ことが可能である
→配置要件となっている者を中心としたチームを作成が本加算の要件であり、チームケアのリーダーを養成する「認知症介護実践リーダー研修」の受講対象となる者は、認知症チームケア推進研修の受講対象者にもなると考えられる
▽認知症専門ケア加算と認知症チームケア推進加算のいずれにも対象となる認知症高齢者に対し、月末時点で【認知症チームケア推進加算】の算定要件を満たすサービスを提供していれば、当該月については【認知症チームケア推進加算】を算定することが可能
→この場合【認知症専門ケア加算】は算定できない
訪問介護の【特定事業所加算】の詳細を明確化
訪問介護事業所のうち、専門性の高い人員を配置し、要介護度が高い利用者等にも積極的に介護サービスを提供しているなど、サービスの質向上の力を入れているところでは【特定事業所加算】を取得できます。
2024年度介護報酬改定では、この加算について▼区分の見直し▼加算(I)(III)の体制要件への「医療機関・訪問看護ステーションの看護師との連携による24時間連絡体制確保、必要に応じ訪問介護を行える体制の整備、看取り期の対応方針の策定、看取りに関する職員研修の実施等」の盛り込み▼加算(I)(III)の重度者対応要件への「看取り期の利用者への対応実績1人以上」の選択的盛り込み—などが行われました。
この重度者対応要件「看取り期の利用者への対応実績1人以上」について、今般のQ&A6では、「看取り期利用者への対応実績」と「加算算定の可否」との関係を下表にように整理しています。
全サービス共通の【業務継続計画未策定減算】、考え方を更に明確化
2024年度介護報酬改定では、すべてのサービスに対し【業務継続計画未策定減算】が設けられました、大規模災害や新興感染症などでスタッフ確保が難しくなった場合でも、介護サービス提供を継続できる体制を整えることが求められ、この体制を整えていない場合に報酬の減算(施設・居住系は3%、その他は1%の減算)を行うものです。ただし、事業所の負担も考慮して「来年(2025年)3月31日までの間、感染症予防・蔓延防止指針、非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない」「訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、来年(2025年)3月31日までの間、減算を適用しない」との経過措置も設けられています。
今般のQ&A6では、次のような点を再確認しています。
▽「感染症若しくは災害のいずれか、または両方の業務継続計画が未策定の場合」や、「当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合」に減算の対象となる
▽2021年度介護報酬改定で業務継続計画策定と同様に義務付けられた「 業務継続計画の周知、研修、訓練、定期的な業務継続計画の見直しの実施の有無」は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではない
このほか、今般のQ&A6では、次のような考えも示されています。
▽短期入所生活介護、短期入所療養介護、(地域密着型)介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院のユニット型施設においては「昼間は1ユニットに1人配置」とされている
→引き続き入居者等との「馴染みの関係」を維持しつつ、柔軟なサービス提供により、より良いケアを提供する観点から、職員の主たる所属ユニットを明らかにした上で、必要に応じてユニット間の勤務を行うことが可能であるとされており、こうした趣旨を踏まえたうえであれば「新規採用職員の指導」「夜間に担当する他ユニットの入居者等の生活歴を把握する目的で、ユニットを超えた勤務を含むケア体制」とすることが可能
▽総合事業の送迎減算について、事業者都合・利用者都合を問わず、サービス提供日に利用者の居宅と事業所の間の送迎を実際に行っていたかを確認の上、送迎を行っていなければ送迎減算が適用される
(例)通所型サービスの利用が介護予防サービス計画に位置づけられていた日に、予定していた通所型サービスの提供が行われなかった場合
→通所型サービス自体の提供が行われていないため、送迎減算は適用されない
(例)通所型サービスの利用が介護予防サービス計画に位置づけられていた日に、通所型サービスの提供は行われたが、送迎が行われなかった場合(予定していた送迎が中止となった場合を含む)
→サービス提供日に利用者の居宅と事業所の間の送迎が行われていないため、送迎減算が適用される
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