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2025年を目前に控え、自治体向けの「地域包括ケアシステム構築状況の自主点検ツール」を提供—社保審・介護保険部会

2023.3.3.(金)

2024年度からの介護保険事業計画(市町村が作成)・介護保険事業支援計画(都道府県が作成)に向けて、その拠り所となる「基本指針」を厚生労働省が提示する—。

団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年が目前に控えているが、地域包括ケアシステムの構築は万全ではない。国が、自治体向けに「地域包括ケアシステム構築状況の自治体点検ツール」を提供する。自治体には、これを活用し「自主点検→不足部分への対応」を進めていくことが求められる—。

2月27日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、こうした議論が行われました。また「介護保険被保険者証(保険証)とマイナンバーカードの一体化に向けた研究・検討を進める」方針も固めています。

介護保険でも「保険証とマイナンバーカードの一体化」を研究

Gem Medで報じているとおり、2024年度から新たな介護保険事業計画(市町村が作成)・介護保険事業支援計画(都道府県)がスタートし、市町村等はこの計画に沿ってサービスの確保・保険料の設定などを行います。介護保険部会では、市町村・都道府県による計画作成のための基本的な考え方を議論し、昨年末に「給付と負担」部分を除く意見取りまとめを行いました(関連記事はこちら)。

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2月27日の介護保険部会には、昨年末の意見とりまとめを踏まえた「基本指針」案(市町村・都道府県が計画を作成する際の拠り所となる)を議論しました。厚生労働省老健局介護保険計画課の日野力課長は「介護保険部会の意見を踏まえて、基本指針案について都道府県等の担当課長を対象とした説明会(課長会議)を開く。さらに本年(2023年)6-7月に介護保険部会で、より具体的な基本指針案を提示し、都道府県担当課長会議を経て、各市町村・都道府県で計画作成に入ってもらう。基本指針は10月・11月頃に告示を行う。また本年末(2023年末)に2024年度介護報酬改定率が等が決定されるので、それを踏まえて必要な条例改正などを議論を各自治体で行っていただく。2024年4月から新計画・新報酬に基づく制度をスタートさせる」といったスケジュール感を明らかにしました。

第8期介護保険事業(支援)計画に関するスケジュール(介護保険部会1 230227)



基本指針案は、上述のとおり、これまでの介護保険部会論議を踏まえた内容となっています。現在の基本指針からの見直しポイントとしては、例えば、介護サービス基盤を計画的に整備するために▼中長期的に地域の人口動態や介護ニーズの見込み等を適切に捉える▼既存施設・事業所のあり方も含めて検討する▼医療・介護双方のニーズを有する高齢者の増加を踏まえ、医療・介護の連携を強化する▼複合的な在宅サービスの整備を推進する▼地域密着型サービスの更なる普及を図る—、介護人材確保・介護現場の生産性向上に向けて▼都道府県主導の下で生産性向上に資する様々な支援・施策を総合的に推進する▼介護サービス事業者の財務状況等の見える化を推進する—ことなどが目を引きます。「新たな複合的な在宅サービス」の具体的な内容は、今後、介護給付費分科会で検討が進められます。

第8期介護保険事業(支援)計画の基本指針ポイント(介護保険部会2 230227)



また、いわゆる団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて「地域包括ケアシステム」を各地域で構築することが求められます。地域包括ケアシステムは、要介護度が高くなっても可能な限り住み慣れた地域で生活できるよう、地域において▼医療▼介護▼予防▼住まい▼生活支援―の各サービスを整備し、それを有機的に結合する体制ですが、2025年を目前に迎えた現在においても「全国津々浦々に整備が進んでいる」状況とは言い難いのが実際です。

そこで日野介護保険計画課長は「地域包括ケアシステム構築状況の自治体点検ツール(仮称)」を国が開発・提供し、各自治体に「自主点検→不足分の早急な対応」を促す考えも示しました。

例えば、「高齢者個人が尊厳を保持し、かつ個人の能力に応じた自立した日常生活を維持・継続できる社会の実現」という大目標に向けて、政策レベルの目標(「住民が希望する地域に居住できているか」など)、施策レベルの目標(「高齢期の住まいや移動を支える資源の整備・活用に向けた取り組みが実施されているか」など)を立てます。これを逆さに見て、上記の点検ツールも活用し、「施策が実施できているか」の点検→「政策が実施できているか」の点検→「大目標が実現されているか」の点検という具合にPDCAサイクルを回していくことが求められます。

自主点検ツール1(介護保険部会3 230227)

自主点検ツール2(介護保険部会4 230227)

自主点検ツール3(介護保険部会5 230227)



こうした基本指針案は、これまでの議論をベースにしたものであり異論・反論は出ていません。ただし、今後の細部の詰めに向けて、▼介護人材の確保・定着をより重視していくべき(岡良廣委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員)▼自主点検ツールは、より広い範囲での活用を視野に開発していく必要がある(粟田主一委員:東京都健康長寿医療センター研究所副所長)▼地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護など)の広域利用を、より簡便にできるようにしていく必要がある(染川朗委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)▼寝たきり・重度の要介護状態にならないような「リハビリの充実・推進」が極めて重要である(橋本康子委員:日本慢性期医療協会会長)▼訪問介護の倒産などが相次いでおり、大規模化も含めた「経営力の強化」が喫緊の課題の1つである(小泉立志委員:全国老人福祉施設協議会副会長)▼自主点検ツールを活用し「全国の状況の見える化」を図っていく必要がある(津下一代委員:女子栄養大学特任教授)▼介護人材確保対策の本丸は「働きやすい職場づくり」「やりがい」である点を忘れてはならない(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)—などの提言・提案が出ています。

今後の厚労省内での「基本指針作成」において、こうした意見も勘案していくことになります。



また、介護保険部会では「介護保険被保険者証(保険証)とマイナンバーカードの一体化に向けた研究・検討を進めていく」方針も固めました。介護分野においても「情報(認定情報、サービス提供情報など)を共有し、科学的な介護サービスを提供する」ことが強く期待されています。この情報共有の鍵となるのが「マイナンバー」であり、円滑化のために「介護保険被保険者証(保険証)とマイナンバーカードの一体化」を検討していくものです。今後、先行する「健康保険証とマイナンバーカードの一体化」の状況、介護保険被保険者証の特性(健康保険証などのように頻回に利用するものでない)なども勘案しながら、幅広い視点で「一体化をどのように考えていくか」を研究・検討していきます。

介護保険被保険者とマイナンバーカードの一体化イメージ(介護保険部会6 230227)



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