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介護情報を共有し良質な介護サービス目指す【介護情報基盤】、2026年4月から準備の整った市町村・事業所等でスタート—社保審・介護保険部会(1)

2025.3.17.(月)

介護情報を利用者・ケアマネジャー・介護事業者・市町村(介護保険者)・医療機関で共有する【介護情報基盤】を構築し、共有された情報をもとに「より質の高い、効率的な介護サービス提供」などにつなげていく—。

この仕組みは「2026年4月からスタート」するが、市町村(介護保険者)におけるシステム改修等のスケジュールにはバラつきがあるため、「全国展開」の時期は改めて検討・設定する—。

また、2024年度補正予算に盛り込まれた「介護関連データ利活用に係る基盤構築事業」を活用して、介護事業所や医療機関が【介護情報基盤】を利用するための経費を支援する—。

こうした内容が3月17日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で了承されました。今後、支援内容の詳細(補助額、補助率、補助要件など)を厚労省で詰め、介護保険部会に改めて報告する見込みです。

3月17日に開催された「第118回 社会保障審議会 介護保険部会」

【介護情報基盤】、2026年度から順次スタートするが、全国展開時期は未定

医療分野と同様に、介護分野においても「利用者の同意を前提に、過去の介護情報を介護事業者、市町村、ケアマネジャー、利用者、医療機関間で共有し、質の高い、効率的な介護サービスを提供する」ことが重視されています。例えば、要介護認定時に主治医から「●●の点に留意すべし」との意見が示されていた場合、その情報は市町村内にとどめず、ケアマネジャーにも共有することでより安全・有効なケアプラン作成が実現できます(もちろん提供される介護サービスにも活かされる)。また、要介護高齢者の多くは何らかの医療ニーズ(生活習慣病や整形外科疾患など)を抱えるケースが多く、ケアプラン(現在、どういった介護サービスをどの程度利用しているのか)やLIFE(利用者の状態やケア提供内容、効果などのデータ)情報を、かかりつけの医療機関に共有することでより適切な医療サービスにもつながると期待できます。

このため、政府は、新たに介護情報を多くの介護事業所やケアマネジャー、医療機関、利用者、市町村などの間で共有する仕組み【介護情報基盤】を構築します(医療・介護・健康等の情報を一元的に管理する全国医療情報プラットフォームの一要素となる)。

介護情報基盤活用の流れ(社保審・介護保険部会(1)1 250317)

全国医療情報プラットフォームの一部に、介護情報を広く関係者で共有し「質の高い介護サービス提供」を目指す【介護情報基盤】を構築する(介護情報利活用ワーキング1 240205)



これまでに健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」で、【介護情報基盤】において、認定調査票や主治医意見書、レセプト、LIFE情報などを共有することを固め(中間とりまとめ、関連記事はこちら)、介護保険部会において「介護情報基盤の実装」に向けた詰めの議論を行っています(関連記事はこちらこちら)。

【介護情報基盤】で共有する情報の範囲、共有対象者などの方針案(介護情報利活用ワーキング2 240205)



3月17日の介護保険部会では、(1)介護事業者や医療機関が【介護情報基盤】を利用するための支援策(2)【介護情報基盤】の導入スケジュール—について議論を行いました。

まず(2)の導入スケジュールを見てみましょう。

【介護情報基盤】の利活用には「各種のデータを有機的に連結することで、質の良い介護サービスを効率的に提供できるようになる」という大きなメリットがあるため「早期の導入」(具体的には保険者(市町村)によるシステム導入)が期待されます。しかし、▼【介護情報基盤】導入の前提となる「市町村(介護保険の保険者)の基幹業務(住民基本台帳、戸籍、固定資産税、個人住民税、法人住民税、子ども・子育て支援、就学、児童手当、児童扶養手当、国民健康保険、国民年金、後期高齢者医療、介護保険など)に関するシステム標準化」状況にバラつきがある(171団体(10%)・702システム(2%)が、期限である「2025年度中」の標準化に間に合わない、2023年冬の見通し)▼【介護情報基盤】の整備見通しにもバラつきがある(2025年度末までに整備が完了すると見通している保険者は43.5%にとどまり、とりわけ大規模保険者(東京23区など)では遅れが目立つ、2024年夏時点の見通し)—状況が明らかになりました。

「市町村のシステム標準化」に関するデジタル庁・総務省調査(社保審・介護保険部会1 240919)

「市町村のシステム標準化」+「介護情報基盤対応」に関する厚労省調査(社保審・介護保険部会2 240919)



さらに厚労省が、その後の保険者による進捗状況を調査したところ、次のように依然として「取り組み状況、見通しにはバラつきがある」ことが確認できました(上記調査から半年後となる本年(2025年)2月の状況)。

▽【介護情報基盤】の導入(介護情報基盤へ連携するための機能要件も含めた標準準拠システムへの移行)を2025年度末までに行えると見通している保険者は32.9%にとどまり、やはり大規模保険者(東京23区など)では遅れが目立つ(今回の調査では全保険者が回答しており、一部保険者のみが回答している上記調査との単純比較は困難)

▽【介護情報基盤】の導入見通しを時期別に見ると、2025年度中:32.9%、2026年度中:27.8%、2027年度中:28.6%、2028年度以降:3.0%とバラついており、やはり大規模保険者(東京23区など)では遅れが目立つ

介護情報基盤の見通しに関する市町村アンケート調査結果(社保審・介護保険部会(1)2 250317)



こうした状況を見ると「すぐさま【介護情報基盤】の活用を全国展開する」ことは困難と言えます。一方、「いつまでも全国展開をしないのでは、質の良い効率的なサービスの提供が遅れ、結果、高齢者が不利益を被る」ことになりかねません。

そこで厚生労働省老健局老人保健課の堀裕行課長は、次のように【介護情報基盤】の導入・活用を2段階で進めてはどうかと提案しました。

【第1段階】
→「介護情報基盤との連携を含めた介護保険事務システムの標準化対応」が完了した保険者(市町村)による介護情報基盤へのデータ送信は、2026年4月から順次進める(システム改修が整った保険者(市町村)から順次スタートする)

【第2段階】
→「全保険者(市町村)で、介護情報基盤との連携を含めた標準化対応を完了し、介護情報基盤の活用を開始する時期」(適合基準日、各保険者(市町村)の介護保険事務システムが、介護情報基盤へデータ送信する機能を具備する必要がある期限)については、引き続き検討する(端的に「時期は未定」である)

介護情報基盤を2段階で導入していく1(社保審・介護保険部会(1)3 250317)

介護情報基盤を2段階で導入していく2(社保審・介護保険部会(1)4 250317)



「すべて要介護・要支援高齢者が、どの介護サービスを利用した場合でも、過去の介護情報を活用して、より質の高い、効率的な介護サービスを受けられる」ようにするためには、【第2段階】の「全(保険者)市町村で【介護情報基盤】が導入されている」ことが必要となるため、すべての保険者(市町村)がシステムベンダーと協力して、早期の【介護情報基盤】導入(その前提となる標準化システムへの移行)を行うことに期待が集まります。この保険者(市町村)のシステム改修支援についても、2024年度補正予算で経費が盛り込まれています。

2024年度補正予算より(介護事業者等による介護情報基盤の閲覧機能などを支援)



この2段階方針は了承され、今後「第2段階をいつに設定するのか」を検討していくことになります(どのタイミングで検討するのかも含めて)。

介護保険部会委員からは、▼保険者(市町村)単独でのシステム導入等は困難であり、国や都道府県がシステムベンダーに協力をしっかり要請してほしい(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼すべての保険者(市町村)、すべての介護事業者等が参加することで、【介護情報基盤】の真価が発揮される。【介護情報基盤】導入のメリットを示すとともに、保険者(市町村)・事業所の支援を行ってほしい(幸本智彦委員:日本商工会議所社会保障専門委員会委員)▼全保険者(市町村)の導入時期を早期に定め、国が必要な支援を行うべき(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)▼保険者(市町村)で【介護情報基盤】導入時期にバラつきが出ることについて、事業者や利用者などに分かりやすく説明をおこなっておくべき(山本則子委員:日本看護協会副会長)—などの意見が出されました。また都道府県・市町村サイドからは「ランニングコストも含めた国による支援」を求める声も出ています。

【介護情報基盤】用いて過去の介護情報閲覧のために必要な環境整備費用を補助

今後は、ケアマネジャーや介護事業者等は、より質の高い、効率的な介護サービス提供を実現するために、【介護情報基盤】を通じて「利用者の過去の介護情報」などを把握・確認することが重要となります。

「利用者の過去の介護情報」などを把握・確認するためには、介護事業者等がインターネットに接続可能な端末(PCやタブレット、スマートフォンなど)を利用し、【介護情報基盤】にアクセスすることが必要です。ただし、「利用者の過去の介護情報」は機微性の高い個人情報であるため、介護事業者等は「自身がアクセス権限を持つ」ことを証明しなければなりません。

また、要介護認定・ケアプラン作成等で非常に重要となる「主治医意見書」について、医療機関が【介護情報基盤】にデータを送信する機能を備えることも必要となります。

介護情報基盤の活用イメージ(社保審・介護保険部会(1)5 250317)



これらには相応の費用がかかるため、堀老人保健課長は、次のような支援(補助)を行う考えも3月17日の介護保険部会に提示しました。

▽介護事業所において、【介護情報基盤】の活用に当たって必要となる次の費用を支援する
▼環境整備に当たって必要となる技術的支援(クライアント証明書(自身のアクセス権限を証明するもの)の導入等、介護保険資格確認等WEBサービスの利用にかかる端末設定など)(PC等の設定を依頼する費用を補助するイメージ)
▼カードリーダーなど

▽医療機関において、【介護情報基盤】の活用に当たって必要となる次の費用を支援する
▼主治医意見書を記載する文書作成ソフト・電子カルテに、「自治体の介護保険事務システムで受領可能な仕様」で送信する機能の搭載

介護情報基盤の活用に向けた、介護事業所等への支援(社保審・介護保険部会(1)6 250317)



補助の財源は、すでに2024年度補正予算に盛り込まれており(介護関連データ利活用に係る基盤構築事業)、堀老人保健課長は▼今夏(2025年夏)頃からスタートする▼介護事業所等ごと(介護事業所の場合はサービス種別ごと)に上限額を設定して補助を行う▼新たに専用のポータルサイトを設け、そこから申請を受け付ける—との考えも示しました。

2024年度補正予算より(市町村システムの標準化移行を支援)



この支援(補助)事業について介護保険部会委員からは、▼医療分野ではカードリーダーの配付は無償で行われた、介護保険分野でも同様の取り扱いとしてほしい。また補助率も可能な限り高くしてほしい(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)▼介護事業所も医療機関も経営状況が非常に厳しい(関連記事はこちら)ことを十分に踏まえて、【介護情報基盤】の構築・運用を進める必要がある(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)—などの要望が出ています。

今後、厚労省で支援【補助】内容の詳細(補助額、補助率、補助要件など)を詰め、介護保険部会に改めて報告することになります。上記の2段階方針を踏まえれば、「【介護情報基盤】が導入された市町村でサービス提供する介護事業者等から優先的に補助を行う」ことが効率的と思われます。今後の具体的な支援(補助)内容に注目が集まります。



なお、上述のようにケアマネジャーや介護事業所等にとって「利用者の過去の介護情報」等を確認・把握するための重要な個人情報であるため「利用者の同意」が必要となります(データベースの不備を避けるために、現在は介護保険法等に根拠がおかれており、情報の登録には「同意」は不要である)。

しかし、介護保険の利用者は「同意の意思表示が難しい」ケースも少なくなく、厳格に「利用者の同意」を求めれば、【介護情報基盤】を活用できる場面が限定的となり、「より質の高い、効率的な介護サービスを提供する」との目的が達成できなくなる可能性があります。このため堀老人保健課長は「どの情報を確認・閲覧するために同意を必要とするか(同意が必要な場面の明確化)」「どのような形で同意を得るか」などについて検討を行っている考えも明らかにしています。「個人情報の保護」と「質の高いサービス提供」とのバランスが考慮されます。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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