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「医療機関の消費税問題」を集中論議する会議体を設置せよ、敷地内薬局について「政府の立場」を明確にせよ—日病協

2025.10.27.(月)

医療機関の消費税負担を診療報酬で補填する仕組みには限界がある(どうしても補填の過不足が生じてしまう)。「医療機関の消費税負担への対応の在り方」を集中論議する会議体を設置すべきである—。

敷地内薬局について、政府が設置を認めたにも関わらず診療報酬で厳しい対応がとられており、医療現場では戸惑いを感じている。敷地内薬局に関する「政府の立場」を明確にすべきではないか—。

全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)の代表者会議(会長、副会長クラスの意見交換会)が10月24日に開かれ、こうした議論が行われたことが望月泉議長(全自病会長)と神野正博副議長(全日病会長)ら報告されました。

10月24日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ望月泉議長(全国自治体病院協議会会長、向かって左)と神野正博副議長(全日本病院協会会長、向かって右)

地方で総合入院体制加算・急性期充実体制加算を取得しにくい状況に配慮を

Gem Medで繰り返し報じているとおり、病院の経営状況が非常に厳しくなっており、その背景には「物価や人件費の高騰」が大きく影響しています。病院の収益は上がっているものの、物価・人件費の高騰により、それを上回って支出が増加し、結果「利益の減少」につながっているのです(増収減益)。

また物価の上昇は「消費税負担の増加」にもつながります。

保険医療においては、「消費税は非課税とし、保険医療機関の消費税負担(控除対象外消費税)を補填するために特別の診療報酬プラス改定を行う」ことになっています。

しかし、この仕組みではどうしても「補填の過不足」が生じてしまいます。日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会(四病協)で調査したところ、「療養病棟の多い病院などでは150%以上の補填(つまり「消費税負担<診療報酬による補填」)がなされているが、大規模な急性期病院(一般病床の比率が多く、400床以上など)では60%台の補填にとどまっている(つまり「消費税負担>診療報酬による補填」)」という具合に大きなバラつきのあることが分かっています(関連記事はこちら)。

「消費税負担を診療報酬で補填する仕組み」の大枠は、初・再診料や入院料といった基本診療料(どの医療機関でも算定する診療報酬項目)に「加点」を行うものです(消費税率が8%から10%に引き上げられた際の「2019年10月の診療報酬特別改定(消費税対応改定)」に関する記事はこちらこちら)。

この「加点」は、「医療機関の消費税負担がどの程度あるのか」を調査したうえで、「負担を過不足なく補填できる」水準に設定されています。

しかし、個々の医療機関で「どのような物品等を、どの程度購入するのか」は大きく異なるため、医療機関が納める消費税の額は千差万別です。

また、個々の医療機関で「どういった患者が何名来院し、何日間入院等するのか」なども大きく異なるため、「初診料を年間何回算定し、入院基本料を年間何回算定するか」なども千差万別であり、結果、「消費税補填のための加点」部分も個々の医療機関で全く異なります。

このため、医療機関によってどうしても「補填状況」にバラつきが生じてしまいます(ある病院では過補填が、別の病院では補填不足が生じてしまう)。また「診療報酬改定時点では十分な補填がなされていても、その後の物価高騰で医療機関の消費税負担も大きくなり、時間の経過とともに補填不足になってしまう」(当初は「消費税=補填」⇒物価高騰で消費税負担が増大⇒やがて「消費税>補填」となる)という問題点もあります。

診療材料などの物品購入量が多い大規模急性期病院では、こうした背景から「補填不足」が生じやすくなります(関連記事はこちら)。

病院団体は「診療報酬で医療機関の消費税負担を補填する仕組み」そのものに限界があるとし、「税制上での抜本的な改革」をかねてから要望しています(関連記事はこちら)。

しかし、「医療機関の消費税問題」に焦点を合わせて議論する場が現在は存在しません。中央社会保険医療協議会の下部組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」は、「診療報酬で医療機関の消費税負担を補填する仕組み」を前提に「補填状況はどうか」という視点で議論を行うため、「医療機関の消費税負担にどう対応するべきか」という議論は行えません。また政府や与党の税制調査会は「広く税制全般を議論する」ため、「医療機関の消費税問題」に焦点を合わせ重点的な議論を行うことは期待しにくいと考えられます。

そこで日病協の代表者会議(各団体の会長・副会長クラスの幹部による意見交換の場)では、政府に「医療機関の消費税問題に焦点を合わせて議論する会議体」の設置を要望する方針を固めました。

具体的には、中医協の設置根拠となる「社会保険医療協議会法」第2条の「中央協議会は、次に掲げる事項について、厚生労働大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申するほか、自ら厚生労働大臣に文書をもつて建議することができる」との規定を活用し、中医協から政府(厚労相)に宛てて「医療機関の消費税問題に焦点を合わせて議論する会議体を設置すべき」と建議してもらうこととしてはどうか、という考えを固めています。

もちろん中医協で建議を行うためには支払側等の協力も必要ですが、神野副議長は「中医協委員は支払側・診療側ともに、現在の消費税対応の在り方に問題意識もっている」と述べ、日病協の要望に賛同が得られるのではないかと期待を寄せています。

11月下旬の中医協に厚労省から医療経済実態調査結果が報告され、同時期に「消費税負担の補填状況」などの確認も行われます。こうした動きを睨みながら中医協へ「建議の要請」を行うことを予定しています。



このほか10月24日の日病協代表者会議では、次のような議論が行われたことが望月議長・神野副議長から報告されました。

▽総合入院体制加算と急性期充実加算との統合論議が行われているが、「地方では症例数が限られ、診療実績等の基準を満たせず、いずれの加算も取得しにくい」「総合病院の精神科病床を十分に確保すべき」といった点を踏まえた検討を行うべき(関連記事はこちら

▽ハイケアユニット入院医療管理料(HCU)や脳卒中ケアユニット入院医療管理料(SCU)について、特定集中治療室(ICU)を保有している病院(ICU+HCU/SCU)と、保有していない病院(HCUのみ、SCUのみなど)とでは「入室患者の状況」が変わってくる点を踏まえた施設基準などを検討すべき(関連記事はこちら

▽かかりつけ医機能と診療報酬の施設基準とのリンク」については慎重・丁寧に議論を進めるべき(関連記事はこちら

▽敷地内薬局について政府の立場を明確にしたうえで診療報酬改定論議を行うべき(規制改革の流れで、政府が「敷地内薬局」を認めているにもかかわらず、診療報酬で厳しい対応をとることに医療現場は戸惑いを感じている、関連記事はこちらこちら



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