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2024年度薬価制度改革から1年余りで画期的新薬の開発進む、2026年度改革でもイノベーション評価医の充実を—中医協・薬価専門部会

2025.7.10.(木)

2024年度の薬価制度改革から1年余りが経過する中、画期的新薬の開発が進み、すでに「治験の段階に進んだ」ものもある—。

しかし、2025年度の中間年改定はこれに逆行してしまっており、2026年度の次期薬価制度改革では再び「イノベーション評価」などを進める必要がある—。

7月9日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、医薬品業界団体からこうした意見陳述が行われました。こうした意見も踏まえて「2026年度の薬価制度改革案」を検討していきます(同日の認知症治療薬レケンビの費用対効果評価等に関する議論の記事はこちら)。

2024年度薬価制度改革から1年余り、画期的な新薬の開発に向けた「治験」なども進む

2026年度には、診療報酬改定とセットで実施される、いわゆる「通常の薬価改定」が行われます。6月25日の中医協では、「これまでの薬価制度改革」について検証を行ったうえで、▼イノベーションの適切な評価▼医薬品の安定供給の確保▼診療報酬改定がない年の薬価改定(いわゆる中間年改定)▼高額医薬品(感染症治療薬、認知症薬)の薬価算定方法▼物価・賃金上昇への対応―などを業界団体の意見も踏まえながら検討していく方針が固められています。

7月9日の薬価専門部会では、医薬品業界からの意見を聴取しました(日本製薬団体連合会、日本ジェネリック製薬協会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(efpia)、再生医療イノベーションフォーラム、日本バイオシミラー協議会、日本バイオテク協議会、日本医薬品卸売業連合会)。

まず注目されるのは「医薬品メーカーの行動変容」です。2024年度の薬価制度改革では「イノベーションの評価」や「医薬品の安定供給確保」に向けて、例えば、▼革新的新薬について特許期間中の薬価を維持するための「新薬創出・適応外薬創出等加算」について企業要件を廃止するなどの見直しを行う▼日本に迅速導入された新薬を【迅速導入加算】として新たに評価する▼小児用医薬品の開発促進に向け、成人と同時開発する小児適応の評価、収載時・改定時の加算充実などを行う▼革新的新薬の有用性評価等を充実する(収載時・改定時の加算充実等)▼市場拡大再算定を見直し、一部領域における類似品の適用を除外する—などの対応が図られました(関連記事はこちら)。

中医協では診療側・支払側双方の委員が「こうした取り組みによって、画期的な新薬の開発は進んでいるのか。2024年度改革で新薬開発が進んでいるという確証が得られなければ、さらなる評価に繋げることはできない」旨の考えを示しています。

今般、製薬協会・PhRMA・efpiaの3団体は、この指摘に応える形で、次のような開発状況報告を行いました(3団体加盟の35社(内資系10社、外資系25社)の開発状況調査結果)。

▽「治験内容等についてPMDAに相談を実施している製品」(27製品)

▽「すでに治験に着手している製品」(16製品)

2024年度薬価制度改革後の新薬開発の状況1(中医協・薬価専門部会1 250709)

2024年度薬価制度改革後の新薬開発の状況2(中医協・薬価専門部会2 250709)

2024年度薬価制度改革後の新薬開発の状況3(中医協・薬価専門部会3 250709)



2024年度改革から1年余りで「治験にまで進んでいる」製品が一定程度あることについて支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「前向きに受け止めた」と高く評価。一方、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「薬価対応によって進んだ成果(新薬開発)と、それ以外の部分とを明確に分けて整理してほしい」と要望しています。

医薬品業界は2026年度薬価改革に向け「イノベーションの適切な評価」などを強く要望

このように、2024年度薬価制度改革は「優れた医薬品の開発」効果を生んでいますが、医薬品業界は「2025年度の中間年改定では、2024年度のイノベーション評価などに逆行するもので、マイナスの影響(日本市場からの撤退など)が出かねない。2026年度には、再び『前向きな方向での薬価制度改革』を進める必要がある」と訴えています。

まず先発品メーカー日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(efpia)等)サイドの意見は多岐にわたりますが、▼国内生産体制の構築が可能となるよう、必要なコストや物価高騰等の影響を踏まえた経済合理性のある薬価の維持・引上げがなされる仕組みの構築▼イノベーションの価値が適切に薬価に反映され、その薬価が維持される分かりやすい仕組みの構築—が必要と強調。

具体的には、医薬品を(1)革新的新薬(2)基礎的な医薬品(3)長期収載品/後発品—に区分し、それぞれ次のような対応を取ることを求めています。
(1)革新的新薬
→イノベーションの推進に向け、▼革新的新薬の価値が適切に反映され、その薬価が維持される分かりやすい仕組み(例えば新薬創出・適応外薬解消等促進加算品の薬価維持方法の見直し)▼収載後の効能追加等の有用性が適切に薬価へ反映される仕組み(例えば再算定の見直し)—などを構築する

(2)基礎的な医薬品
→安定供給確保に向け、▼医療上必要性の高い医薬品の薬価が維持される仕組み▼安定供給確保に必要なコストや物価高騰等の影響が適切に薬価へ反映される仕組み—などを構築する(例えば基礎的医薬品、不採算品再算定、最低薬価)

(3)長期収載品/後発品
→国民負担の軽減に向け、長期収載品から後発品への置換えが速やかに行われ、個々の医薬品の市場実勢価格が 適切に分かりやすく薬価へ反映される仕組みを構築する(例えば長期収載品の選定療養等の影響を踏まえたルールの簡素化、後発品の薬価改定ルールの簡素化など)



さらに、より詳細に次のような要望も行っています。

【製薬協】
▽新規モダリティ等の⾰新的新薬の価値をより適切に評価できる新たな仕組みを導入する(類似薬効比較方式について、「疾患特性」や「製剤特性」を総合的に踏まえて類似薬を選定可能とするなどの改善を図る)
▽革新的新薬について「特許期間中の薬価維持」が必要であり、▼新薬創出等加算対象品の薬価維持(「引き下げ分を加算で補填する」のではなく、そもそも「特許期間中の引き下げ」を行わない)▼市場拡大再算定の特例(年間販売額が極めて大きな場合の薬価引き下げ)の廃止▼市場拡大再算定における共連れ(A製品が再算定対象となった場合、類似品も同様に薬価引き下げを行う仕組み)の廃止—などを行う

【PhRMA】
▽特許期間中の薬価維持のために▼中間年改定の廃止▼特例拡⼤再算定の廃⽌(まず有用な効能追加を行った場合、補正加算により引下げ率を緩和するなどの対応から始める)▼真の臨床的有用性加算における評価対象の拡充(市販後の有用性評価を踏まえた薬価の引き上げなど)—を進めよ
▽新規モダリティを含む革新的新薬のイノベーション評価(類似薬選定基準の拡大など)を行う

【efpia】
▽特許期間中の新薬について「薬価を維持」できるシンプルな仕組みとする
▽市場拡大再算定について、▼開発促進に取り組んでいる希少疾病や小児の効能等を追加した場合は再算定の対象から除外する▼類似品について、再算定の対象から除外する—などの改善を行う



また、後発品に関しては「安定供給の確保」が喫緊の課題となっている中、業界サイドは「後発品に多い低薬価品目(薬価に対し、製造コストが高い)では物価上昇の影響が大きい。現在の薬価で『増産のための設備投資等のコストを捻出する』ことは厳しい」とし、▼安定供給のための人員確保に際して従業員の賃⾦上昇が必要であり、そのためにも医療上必要な低薬価品目の薬価の引き上げが必要である▼供給量を増やし供給不安の改善に努めている企業が、今後も継続して安定供給 体制を強化していくため「市場での評価が適切に反映される制度」とすべきである—と進言しています。

なお、後発品の需給については「2029年度に予測需要量を供給量⾒込みが上回る」(つまり供給不安が全体としては解消される)と見通したうえで、▼品⽬の『⽚寄せ』や効率化による⽣産体制強化の推進▼設備投資計画の前倒し—によって「より早期に供給量が上回る体制を確⽴したい」とコメントしています。

後発品の需給見通し(中医協・薬価専門部会4 250709)



このほか、2026年度の次期薬価制度改革に向けて次のような要望も業界サイドから出ています。
【再生医療イノベーションフォーラム】
▽再⽣医療等製品の特⻑・特徴を踏まえた新たな価格制度についての産官学での検討
▽暫定的な対応として「再⽣医療等製品の特⻑・特徴を踏まえた現⾏算定⽅式の改善」(薬価算定⽅式・有⽤性系加算の改善、市場拡⼤再算定対象からの除外)
▽早期の患者アクセス確保のための「条件・期限付承認された再⽣医療等製品」の公的医療保険適用の継続(関連記事はこちら

【日本バイオシミラー協議会】
▽バイオシミラーについて、薬価制度、流通において「別カテゴリー」で取り扱う
▽バイオシミラーについて、市場で「先行バイオ医薬品と同一のバイオAG」と競争できるような薬価制度とする

【日本バイオテク協議会】
▽「医師主導治験により開発された医薬品」の加算対象への組み入れ
▽原価計算方式における原薬・製剤購入価格に関する開示度の取り扱いの見直し(開示度が低いだけで加算率ゼロとすべきではない)
▽低分子新薬の原価計算方式における一般管理販売費率の上限撤廃
▽患者数1000人未満の超希少疾病治療薬の開発促進に向けた【ウルトラオーファン加算】の新設

【日本医薬品卸売業連合会】
▽持続的な医薬品の安定供給のため、「流通不採算にならない」とともに、「物価上昇等に伴うコスト増加を適切に価格転嫁できる仕組み」の検討
▽医薬品の安定供給に支障を及ぼす「中間年薬価改定」の廃止



こうした意見陳述に対し、中医協委員からは▼「条件・期限付き承認→医療保険適用」では、前提となる制度の信頼(有用性データをきちんと示し、薬事上の本承認を確実に取得する)が重要である(長島委員)▼2024年度改革25年度の中間年改定では【不採算品再算定】の特例実施(非常に広範な医薬品の価格引き上げ)を行ったが、当該製品は必ず「増産」につなげてほしいが、まずは「医療上欠かせない製品」を優先的に増産してほしい。逆ザヤ減少(医療機関・薬局の購入価格>薬価)への対応もしっかり行ってほしい(森昌平委員:日本薬剤師会副会長)—などの見解を示しています。

こうした業界意見も踏まえて「2026年度の薬価制度改革案」を検討していきます(改革内容が具体化した後(今秋(2025年秋)に再度、関係業界からヒアリングを行う見込み)。



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