2024年度薬価制度改革論議が佳境、不採算品再算定は、乖離率の大きなものは除外して「申請品目すべて」を対象に—中医協・薬価専門部会
2023.12.14.(木)
2024年度薬価制度改革に向けた議論が佳境に入っています。12月13日の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会には、論点整理案やそれに対する業界意見を踏まえた「骨子のたたき台」が厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官から提示されました。
そこでは、新たに▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算の企業要件・企業指標について、「企業指標に基づく加算係数の設定」(加算額の調整)は廃止するが、過去5年間に国内試験ゼロ・革新性のある新薬開発ゼロなどの企業の製品は加算対象外とする▼乖離率の大きな費目を除くすべての不採算品目について、薬価の引き上げを行う—などの考え方が示されています。
さらに議論を重ね「年内の骨子確定」→「年明けの見直し案確定」を目指します。
後発品の企業指標導入で、厚労省が試算結果を提示
▼製薬メーカーが日本市場に魅力を感じず、我が国で医薬品の開発・販売を行わなくなっているという、新たな形のドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス▼後発医薬品を中心とした長引く供給不安—という深刻な問題の解決を目指し、2024年度の薬価制度改革では「革新的新薬のイノベーションの適切な評価」と「後発品を中心とした医薬品の安定供給確保のための対応」の2つの柱が立てられ、具体的な改革の方向性が固まりつつあります(関連記事はこちら)。
12月13日の薬価部会には、業界意見なども踏まえて、例えば次のような新たな考え方が示されました。
▽新薬創出等加算の企業要件・企業指標について、「企業指標に基づく加算係数の設定」(加算額の調整)は廃止する。ただし、過去5年間に下表のいずれにも該当しない(国内試験ゼロ・革新性のある新薬開発ゼロなど)の企業の製品は加算対象外とする
▽複数の効能追加がなされた場合に「追加された効能ごとに加算の該当性を判断し、併算定を認める」こととするが、患者負担増を考慮し「改定前薬価の1.20倍を上限」とする
▽市場拡大再算定の共連れルール(類似品も再算定を行うルール)について、特定の領域では「効能が1つでも重複すれば類似薬として再算定の対象となる」状況があることを踏まえ、「あらかじめ中医協で領域を特定し、当該領域については類似品としての再算定適用を除外」する。この取り扱いは2024年度の四半期再算定から適用し、特定すべき領域は今後中医協で議論する
▽長期収載品については保険給付の在り方の見直し」が行われるため、2024年度には薬価改定ルールの見直しは行わない
▽後発医薬品の安定供給に向けた「企業指標」の試行導入・薬価への反映については次のような試算結果・制度設計案を踏まえてさらに詳細を詰めてはどうか
▼後発医薬品を1品目でも製造販売する企業190社の後発品(約8600品目)・その他品目(1967年以前に承認・薬価収載されたもの、約4400品目)を対象に、下表の指標(例えば、安定確保医薬品が200品目以上なら10ポイント、100-200品目なら8ポイント・・・、自社理由による限定出荷品目割合が20%以上ならマイナス5ポイント、10-20%ならマイナス3ポイント・・・など)でポイントを合計し、上位20%企業(41社)を「A」、マイナスポイント企業(111社)を「C」、それ以外の企業(38社)を「B」に区分した
▼上位20%企業(41社)の「A区分」では「他社が出荷停止・出荷制限を行った医薬品に対する自社品目の追加供給の実施」割合が高く、マイナスポイント企業(111社)の「C区分」では「る自社理由による出荷停止・出荷制限の実施」割合が高い傾向がある
▼「A区分」企業の品目のうち、【対象医薬品要件】(最初の後発品収載から5年以内の後発品、安定確保医薬品AまたはBに該当)に該当し、【適用条件】(後発品全体の平均乖離率以内である、価格帯集約を行った場合に最も高い価格帯に入る、自社理由による限定出荷・供給停止を来していない)を満たす品目に限定(下表に該当成分数・品目数)し、現行の価格帯集約(原則3価格帯)と別に該当する品目のみを集約してはどうか(成分規格ごとで増える価格帯は「1つ」のみ)
▽不採算品再算定について、原則は「すべての類似薬について該当する場合に限定して実施する」(1つでも対象外となれば他の類似品すべても不適用)というルールがあるが、深刻な後発品を中心とする供給不安が長引いている状況に鑑みて、2023年度の中間年改定の臨時・特例的な措置と同様に「希望した全品目に適用」してはどうか。ただし、「乖離率の大きな品目」は除外することとしてはどうか
こうした新しい考え方にも、明確な異論・反論は出ていませんが、新薬創出等加算見直しについて「効果が現れるまでの期間について、業界サイドは『すぐには現れない』との考えを示している。事後の検証を十分に行う必要がある」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「見直しで企業の新薬開発方針などがどう変化するのか、迅速の状況把握すべき」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)、後発品の企業指標導入について「医薬品の価格が変わる点を国から国民に十分に説明すべき」(長島委員)、「A区分企業でも自社理由の出荷制限などがある。やはり指標の一部だけを導入する弊害があるのではないか。ABC区分の判断は留保したい」(松本委員)、不採算品再算定について「乖離率の大きな品目を不採算品再算定から除外するべきである」(長島委員)、「安売りをして乖離率が大きくなっている品目まで、不採算品再算定で薬価の引き上げを行う必要はない。乖離率9%超などは行き過ぎ(安売りしすぎ)である」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「値引きしても再算定で薬価が引き上げられるという悪循環があり、近く、制度の抜本的見直しが必要である。2022年度の平均乖離率(7%)を超える品目は除外すべき」(松本委員)といった要望・注文がついています。
こうした意見も踏まえて最終調整を行い、「年内の骨子確定」→「年明けの見直し案確定」を目指します。
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