DPCでのコロナ感染症対応、「診療報酬の出来高算定」は継続、「係数等計算でのコロナ受け入れ期間除外」は終了—中医協総会(2)
2023.12.14.(木)
DPCにおいて、医療資源病名(当該患者に最も医療資源を投入した病名)として「新型コロナウイルス感染症」が選択された患者は、引き続き出来高算定とする—。
また医療機関別係数等の設定に当たり、これまでの「コロナ患者受け入れ期間」を除外するなどの取り扱いは終了し、通常どおり「前々年10月から前年9月までの診療データ」をもとに医療機関別係数等を計算する。ただし、大地震などの大規模自然災害については配慮を行う—。
12月13日に開催された中央社会保険医療協議会総会では、こういった方針も承認されました(同日の認知症治療薬「レケンビ点滴静注」の薬価設定に関する記事はこちら)
医療資源病名がコロナ感染症の場合、引き続きDPC病棟でも「出来高」対応
コロナ感染症は5類に移行し、診療報酬臨時特例や病床確保料などの補助金も徐々に縮小され、来年3月末で廃止される方向で検討が進められています(関連記事はこちら)。
このようにコロナ感染症が収束し、平時に戻りつつある状況の中で「コロナ感染症治療をDPCの中でどのように取り扱うか」が気になります。
DPC制度では、疾患・治療内容ごとに症例データを集積し、平均的な医療資源投入量をもとにDPCの包括点数を設定しますが、コロナ感染症については特例として「DPC病棟においても診療報酬を出来高算定する」ことになっています(関連記事はこちら)。未知の病でコロナ感染症には、医療現場において手探りで治療法を探る必要があったためです。
この点、上記のようにコロナ感染症が落ち着き、またコロナ感染症に対する知見が集積される中では、「コロナ感染症への診療データを集積し、DPCの包括点数を設定できるのではないか」とも思われますが、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は次のような点を踏まえて「出来高算定を継続してはどうか」と12月13日の中医協総会に提案を行いました。
▽2024年度か適用する包括点数は、「2022年10月-2023年9月までの12か月分の診療実績データ」を用いる(通常のDPC包括点数設定のルール、他傷病も同様のデータを用いて新たな包括点数を設定する)
↓
▽しかし、上記の期間には▼コロナ感染感染症の感染症法の位置付け変更(2023年5月8日に2類から5類へ移行)が行われた▼医療提供体制における各種対策・措置等の見直し(診療報酬臨時特例や補助金などの見直し)が行われた—
↓
▽このため、コロナ感染症に対する入院診療の実態も期間中に大きく変化していると考えられる
つまり、「2022年10月-2023年9月」にはコロナ感染症の診療内容が大きく変化しており、そこから「標準的な診療内容」を描き、包括点数や入院期間I・II・IIIを設定することは非常に難しいと考えられるのです。
このため「医療資源病名としてコロナが選択された患者は、引き続き出来高算定する」考えを眞鍋医療課長が提示しており、中医協でも了承されました。
医療機関別係数等の計算にあたり「コロナ受け入れ期間の除外」特例は行わない
DPCでは、上述のように「標準的な治療内容」をもとに包括点数や入院期間I・II・IIIが設定されています。しかし、患者の態様は様々であり、一律の包括点数では「重症患者を多く受け入れる病院では、投下した医療資源を回収できなくなってしまう」などの弊害があります。
そこで、病院の種類や受け入れ患者の特性、地域医療への取り組み状況などをもとに「医療機関別係数」を設け、上記の弊害を補正しています(DPCの包括範囲収益は「DPC点数×医療機関別係数×在院日数」で計算し、ここに手術などの出来高点数が上乗せされる)。
医療機関別係数は、(1)基礎係数(2)機能評価係数I(3)機能評価係数II(4)激変緩和係数—の和(足し算)で計算しますが、このうち「機能評価係数II」は、上記のDPC点数と同じく「前々年10月-前年9月の12か月分の診療実績データ」を用いて設定します。例えば、在院日数の短縮度合を評価する「効率性指数・係数」((3)の機能評価係数IIの1部分)であれば、「在院日数の短い病院では高い係数・指数を設定し、在院日数の長い病院では低い係数・指数を設定する」という具合に「相対評価」が行われます(他の係数でも相対評価)。
その際、対象期間の中に「コロナ患者を受け入れた期間」があれば、例えば「コロナ感染症では入院期間が長くなりがち」なために、在院日数短縮を評価する効率性指数・係数が「不利になる」恐れがあります(他の係数でも同様の不利が生じえる)。
このため厚労省は、「次の3つのケースの中で最も高い実績を採用できる」というコロナ特例を設けています。
(a)「コロナ患者受け入れ期間」を、実績期間から控除して、その分を過去に遡って実績を算出する
→例えば、「X年10月-Y年9月」の実績期間のうち、X年10月・11月にコロナ患者を受け入れていた場合には、「X年8月・9月」と「X年12月-Y年9月」を対象に実績を算出する
(b)「コロナ患者受け入れ期間」の実績値の代わりに、「実績期間からコロナ患者受け入れ期間を除いた期間の平均値」を用いて算出する
→例えば、「X年10月-Y年9月」の実績期間のうち、X年10月・11月にコロナ患者を受け入れていた場合には、同期間について「X年12月-Y年9月の平均値」を適用して、実績を算出する
(c)コロナ患者受け入れ期間を除外しないで、通常どおり実績を算出する
→例えば、「X年10月-Y年9月」の実績期間のうち、X年10月・11月にコロナ患者を受け入れていた場合でも、「X年102月-Y年9月」を対象に実績を算出する
この特例の今後の取り扱いが気になりますが、眞鍋医療課長は「2022年10月-2023年9月には、流行状況に伴う変動はあるものの『ほとんどのDPC対象病院がコロナ患者の入院診療を実施』している」点を重視し、上記特例は用いずに「通常どおり2022年10月-2023年9月の診療実績をもとに医療機関別係数等を設定する」考えを提示しました。ほとんどのDPC病院がコロナ患者を受け入れている中では、コロナ患者受け入れ期間を除外しなくとも「特段の不利益は生じない」と考えられるためです。
もっとも、コロナ感染症とは別に「大地震や大雨などの自然災害に遭遇した」ケースでは、当該被災期間などについて特別の配慮が必要でしょう。当該期間は「低い診療実績」となることが想定され、これを平常期間と同じく扱ったのでは、被災したDPC病院に酷と言えます。
そこで眞鍋医療課長は、2022年10月以降の災害(下表)に被災した地域の病院では、「DPC特定病院群(旧II群)決定に使用する診療実績」「機能評価係数IIの診療実績」について、次のいずれか「高い値」を用いるとの配慮を行うことを提案しました。
▽通常と同様の取扱いとした場合(上記(c)のように実績値を算出する)
▽「被災した災害の発生時期を含む月」の診療データの代わりに、「実績期間から当該月を除いた期間の平均値」を用いて算出する(上記(b)のように実績値を算出する)
こうした医療機関別係数等の算出方法も了承されましたが、「DPC病院の係数等にどれほどの影響が出るのかを確認したい。計算の結果、あまりに大きな変動が生じる病院が生じた場合には、必要に応じて配慮措置を中医協で検討してほしい」との注文が診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)や太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)からついています。支払側委員は、提案内容や診療側注文に異論を唱えておらず、今後、診療側注文にも配慮した形で2024年度からの係数等設定が進められる見込みです。
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