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安定供給に注力するメーカーの後発品を「価格下支え」などで評価、多品目少量生産解消を目指した後発品薬価対応も―中医協・薬価専門部会

2023.11.21.(火)

安定供給に力を入れるメーカーの後発品を「価格下支え」などで評価してはどうか—。

後発品メーカーの多品目少量生産構造が「高コスト→経営の不安定→供給不安」につながっていると考えられ、薬価上の対応、例えば「後発品の新規収載時に、10品目を超える内用薬である場合には先発品の40%の薬価とする」とのルールを厳格化するなどしてはどうか—。

11月17日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった議論が行われました。

安定供給に力を入れるメーカーの後発品を「価格下支え」などで評価

2024年度の薬価制度改革議論は「具体的な第2ラウンド論議」に入っています(優れた医薬品を我が国にいち早く導入する場合の評価に関する記事はこちら、安定供給に力を入れる後発品メーカーの評価に関する記事はこちら、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」見直しに関する記事はこちら、ドラッグ・ラグ/ロス解消策に関する記事はこちら)。

11月17日の会合では、改めて安定供給に力を入れる後発品メーカーの評価とともに、後発品産業における少量多品目構造の解消に関する議論を行いました。

まず「安定供給に力を入れる後発品メーカーの評価」は、現下の後発品を中心とする供給不安の解消を目指すものです。

これまで、厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の中間とりまとめ(本年(2023年)10月11日)、厚労省研究班(厚生労働行政推進調査事業費補助金における研究)の研究に基づき、次のような「評価項目、企業指標」案が浮上してきています(関連記事はこちら)。

(1)安定供給確保体制
→▼製造販売する品目の製造業者名の公表▼製造販売する品目の原薬の製造国の公表▼共同開発され承認取得した品目の共同開発先企業名の公表▼「安定供給体制等を指標とした情報提供項目に関する情報提供ページ(厚労省ウェブサイト)」での安定供給体制等情報掲載▼ジェネリック医薬品供給ガイドラインに準拠した安定供給マニュアル作成・運用—といった「後発品の安定供給に関連する情報の公開」

→▼製造販売する品目の原薬の購買先の複数設定▼製造販売する品目のうち「安定確保医薬品」について、一定以上の/余剰製造能・在庫量確保—といった「後発品の安定供給のための予備対応力の確保」

(2)供給実績
→▼製造販売する品目についての品目毎の月次出荷実績(製造計画と実際 の出荷量の比較)の公表▼製造販売する安定確保医薬品の品目数▼製造販売する品目に係る自社理由による出荷停止・出荷量制限の実施▼出荷量が増加した品目、出荷量が減少した品目の割合—といった「製造販売する後発品の供給実績」

(3)供給不安解消のための企業努力
→▼他社が出荷停止・出荷量制限を行った医薬品に対する自社品目の追加供給実施▼他社の長期収載品のうちG1区分品目の市場撤退に伴う製造販売承認の承継、自社品目の追加供給の実施—といった「製造販売する後発品の供給実績」

(4)薬価の乖離状況
→▼企業毎の後発品平均乖離率が一定値を超えるかどうか▼製造販売承認を取得した新規後発品について、薬価収載後の5年間にわたる薬価改定時の乖離率が一定値を超えるかどうか▼新規収載された後発品のうち、収載後5年以内に撤退した品目数▼不採算品再算定を受けた品目について、その後の5年間にわたる薬価改定時の乖離率が一定値を超えるかどうか—といった「薬価の乖離状況」

(5)企業の情報公開努力
→研究中

後発品の安定供給に力を入れる企業の評価指標案(中医協・薬価専門部会1 231027)



安定供給に力を入れている後発品メーカーを明確にすることで、「この後発品メーカーの製品であれば安心して使用できる」と医療現場での評価が高まると期待でき、さらに薬価上の対応を行うことで後発品メーカーも安定供給確保に向けた対応にさらに力を入れられると期待されます。ただし、評価項目・企業指標のうち情報公開などは「これからの対応」となるため、上記項目の中で「すでに実施できている項目・指標」から段階的に導入し、徐々に拡大していくべきとする意見や、評価項目・企業指標の一部を切り取れば偏った評価になる可能性があるとの意見なども出ており、厚労省で調整が進められてきました(関連記事はこちら)。

厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、こうした調整を踏まえ次のような具体的な対応案(試行導入案)を提示しています。

【評価の考え方】
▽安定供給確保の観点では適用可能な評価項目・企業指標はできる限り速やかな導入が望ましいため、2024年度薬価制度改革においては「現時点で評価可能な項目・指標」を対象とする(下図表の赤枠)

2024改定ではまず赤枠部分(供給実績、乖離状況)を踏まえた薬価評価を行ってはどうかと厚労省が提案(中医協・薬価専門部会2 231027)

企業指標案1(中医協・薬価専門部会1 231117)

企業指標案2(中医協・薬価専門部会2 231117)

企業指標案3(中医協・薬価専門部会3 231117)

企業指標案4(中医協・薬価専門部会4 231117)



▽「後発品の安定供給のための予備対応力の確保」に関しては、上図表の赤枠での対応が「予備対応力の結果」として考えられること、「後発品の安定供給に関連する情報の公表」などに課しては、詳細が今年度(2023年度)中に研究班から示される予定であり、それをもとに速やかにメーカーに公表を促していく

【薬価への反映方法】
▽医薬品メーカーとして「当然実施すべき」と考えられる事項は、「実施しなかったことによるマイナス評価」とする

▽医薬品の安定供給確保のために「積極的に投資を行う」「供給不安解消のために積極的な増産を行う」などの事項は「プラスの評価」を行う

▽安定供給対応は「品目ごと」に行われるものであり、「対応している品目数」や「当該企業において製造販売している品目における割合」などのように、「品目数に応じた評価」を行う
→プラス評価・マイナス評価のポイントを積み上げ、例えば▼A区分(上位20%)▼B区分(A・C以外)▼C区分(マイナス)—と、A>B>Cという具合に評価を行う
→評価時点から1年以内に製造販売する品目について、医薬品医療機器等法違反に基づく行政処分の対象となった企業は、ポイントによらずA区分としない

企業指標に基づく評価方法案(中医協・薬価専門部会5 231117)



▽対象品目は、評価対象となる企業が製造販売する全ての後発品・その他品目(先発品・後発品の区別のなかった1967年以前に薬価基準収載された品目)とする

▽「新規後発品の収載時薬価」は、後発医薬品の価格設定の基盤となり影響も大きいため、試行導入後の影響等を検証しつつ検討する

▽「改定時の価格帯」に関しては、価格帯増加の影響を最小限とするため、同一成分規格の品目数の状況も踏まえ、「一部の医薬品に限定して、一定条件下で現在の3価格帯(▼最高価格の50%以上となる後発品▼最高価格の30%以上50%未満となる後発品▼最高価格の30%未満となる後発品—の3価格帯)とは『別の扱い』とする」ように整理する

▽「高く評価される企業の品目が下支え価格の恩恵をより受けやすくなる」方向で対応することが考えられ、具体的な対応方針は下支え措置の検討状況を踏まえ整理する



こうした対応案に明確な異論は出ていませんが、「後発品メーカーが公表すべき情報は、粒度、時間軸、更新頻度などを標準化し、メーカー間の比較が可能となるようなものとすべき」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「後発品の供給不安が拡大しないような配慮をすべき。後発品メーカーの規模はまちまちであり、企業規模で優劣がつかないような配慮も必要である。企業への影響を考慮し、当初薬価ではなく、再評価時の導入なども検討すべき」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「行政処分を受けたメーカーはA区分だけでなく、B区分ともしないなどの対応が必要であろう」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)等の注文がついています。

今後、厚労省が企業指標案に基づいた試算を行い、その結果も踏まえて最終的な詰めを行っていきます。

後発品メーカーの多品目少量生産構造も解消していく必要がある

11月17日の薬価専門部会では、「後発品産業における少量多品目構造の解消」に向けた薬価上の対応も議題に上がりました。多くの品目を少量生産すれば、当然「高コスト体質」となり、経営の安定阻害→供給不安につながることから、この論点も「後発品の供給不安解消」に向けた非常に重要で(もっとも薬価での対応には限界がある点にも留意が必要)、例えば「現在、後発品の新規収載時には『先発品の50%とする、ただし10品目を超える内用薬である場合には40%とする』とのルールを見直してはどうか」などの対応案が浮上しています。10品目よりも少ないケースでもより低い薬価(40%よりも低い薬価)になれば、後発品メーカーには「多くの製品が出てくる成分は、市場が大きいが、薬価が低くなるので参入しない」という意識が働き、多品目製造に歯止めがかかるのではないか、と期待されるのです。

多品目少量生産解消を目指した後発品薬価対応も検討(中医協・薬価専門部会6 231117)



この点については「多くの製品が登場する領域(市場が大きいケースが多い)を狙って、短期間で売り抜けようと考える後発品メーカーへのメッセージを示すべきであろう。安定供給確保にも配慮しながら検討を進めてほしい。またこうした『短期間での売り抜け』を考える企業に対応するため、薬剤の出荷量にも着目し企業指標(上述)に加えることも検討すべき」(長島委員)、「安定供給に配慮したうえで『短期間での売り抜け』を考える後発品メーカーへの対応を考えていくべき」(森委員)、「より厳格な対応(10品目よりも少ないケースでも、より低い薬価(40%よりも低い薬価)とする)が考えられる。薬価調査結果を踏まえて具体案を練っていくべき」(松本委員)という意見が出ています。今後、どのような厳格化を行うべきかを詰めていくことになるでしょう。



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