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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

優れた新薬の薬価を支える新薬創出等加算、企業要件や品目要件、加算の計算式、累積控除時期をどう考えていくべきか―中医協・薬価専門部会

2023.10.20.(金)

優れた新薬の薬価を下支えする「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」について、企業要件・企業指標、品目要件、加算の計算式、累積控除の時期を見直していくべきか—。

10月18日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった議論が行われました。

新薬創出等加算の企業要件・企業指標の在り方をどう考えるべきか

2024年度の薬価制度改革議論が薬価専門部会を中心に進んでいます。これまでに総論的な第1ラウンド論議、2度の業界ヒアリングを行っており、これらをベースにした「具体的な第2ラウンド論議」が始まりました。

第2ラウンド初回のテーマは「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(以下、新薬創出等加算)で、厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は(1)企業要件・企業指標をどう考えるか(2)品目要件をどう考えるか(3)加算の計算式/乖離率をどう見直すか(4)累積控除の時期をどう考えるか—という4つの論点を提示しました。

まず(1)の「企業要件・企業指標」は、「真に医療上必要な医薬品の開発を促す」という新薬創出等加算の趣旨に沿い、「真に医療上必要な医薬品の開発実績の高い企業の製品は高い加算を行う、そうでない企業の製品は低い加算にとどめる」仕組みです。

現状を見ると高い加算(区分I)を得るためには「新薬収載実績や開発公募品の承認、世界に先駆けた新薬の開発などの累積ポイントが10点以上あり、ポイント上位25%となる」ことが求められ、22社が該当しています。

新薬創出等加算の企業要件(中医協・薬価専門部会6 230712)



しかし、メーカーサイドは「薬剤そのものに着目した評価をすべきである」「ベンチャー企業や、我が国で初めて薬剤開発・販売を行うスタートアップ企業には不利な内容となっている」などの点を踏まえ、企業要件・企業指標の廃止を求めています(関連記事はこちら)。

なお、ベンチャー企業が不利になりがちである点については、現行ルールでも「一定要件を満たせば中程度の加算とする」との配慮がなされていますが、データを見ると「ベンチャー企業は、高い加算対象の区分Iにはなっていない」という状況も明らかになっています。このため、「優れた新薬開発を促すために、さらなる配慮が必要」との声も出ています。

ベンチャー企業等の状況(中医協・薬価専門部会1 231018)



この点について中医協委員からは、「ベンチャー、スタートアップ企業だからといって無条件に高い加算を付与する(区分I企業とする)ことは飛躍している。ベンチャー企業等を優遇する場合には、きちんとした要件を設ける必要がある。革新的な新薬の開発・ドラッグラグ等の解消という点が骨抜きにならないように留意する必要がある」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「ベンチャー企業等が不利にならないような対応を検討してはどうか」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「イノベーション努力が不当い低く評価されているのであれば問題であるが、ベンチャー、スタートアップ企業だからといって無条件に高い加算を付与する(区分I企業とする)ことは適切でない」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)といった声が出ています。

一方、製薬メーカー代表の立場で議論に参加する石牟禮武志専門委員(塩野義製薬株式会社渉外部長)は、「医薬品の研究開発は多様で、変化を続けており、一定指標で企業を優劣付けすることには限界がある。現行の企業要件・企業指標により、75%の企業では新薬の薬価が新薬創出等加算によっても維持されないこととなっており、ディスインセンティブになっているとも感じられる。収載された新薬の革新性を評価すべきであり、役目を終えた企業要件・企業指標は撤廃すべきである」と改めて訴えています。

新薬創出等加算の対象品目を拡大すべきか、価格下支え機能を強化すべきか

また(2)の品目要件は、現在▼画期性加算、有用性加算、営業利益率補正がなされた医薬品▼開発公募品▼希少疾病用医薬品▼特定用途医薬品▼薬剤耐性菌の治療薬—などとされていますが、「小児用医薬品」「医療上必要な医薬品」なども加算の対象に加えるべきとメーカーサイドが要望しています。

新薬創出等加算の品目要件(薬価専門部会3 230823)



この点について中医協委員は、「新薬創出等加算での価格下支えが必要な品目は、現在の要件でカバーできているのではないか」(長島委員)、「ドラッグラグ等の解消に向けて加算対象品目は広げていくべき」(森委員)、「ドラッグラグ解消のために加算対象を広げるのであれば、累積控除の前倒し(後述)をセットで導入すべき」(松本委員)など、様々な意見が出されています。



他方、(3)の加算の計算式/乖離率については、現在「乖離率(薬価と取引価格との格差)が平均以下の品目には高い加算を付与するが、乖離率が大きな品目では低い加算にとどめる」という考え方が採用されています。この結果、上述(1)でみた「高い加算が付与される区分I企業」の製品であっても、乖離率が大きなために「薬価が維持されない場合がある」ことなどをメーカーサイドは問題視しています。

新薬創出等加算の計算方法(中医協・薬価専門部会2 231018)

新薬創出等加算の適用状況(中医協・薬価専門部会3 231018)



この点について中医協委員は「乖離率は市場の評価結果でもあり(市場(医療機関等)が「優れた医薬品」であると評価した場合、値下げしなくとも購入するため乖離率は小さくなる)、乖離率の大きな品目の価格を低く抑える現行ルールには一定の合理性がある」(長島委員)、「乖離率の大きな品目は、それだけ値引きしているということだ。大きく値引きをしながら『薬価を維持する』との主張には妥当性がない」(松本委員)と指摘。ただし森委員は「薬価がもう少し維持されやすくなるような計算式に見直すことも検討してはどうか」とコメントしています。

新薬創出等加算、後発品が登場した際の累積控除の時期をどう考えるか

他方、(4)の累積控除は、新薬創出等加算により薬価が下支えされている品目でも「後発品が上市された後、または薬価収載から15年経過後には、薬価改定の折に『それまで猶予されていた分(下支えされていた分)の価格引き下げ』を行う」仕組みです。

医薬品の価格(薬価)は、通常、薬価改定の都度に下がっていきますが、優れた医薬品については新薬創出等加算により価格の下支えが行われます。これにより得られた財源でメーカーサイドは「さらに優れた医薬品の研究・開発」を行うことが求められますが、後発品が登場するような場面になった場合には、薬価を「通常、引き下がることになっていた価格」にまで一気に引き下げることになります(改定の都度に引き下げられる分を累積して薬価から控除(引き下げ)する)。

新薬創出等加算の全体像(中医協・薬価専門部会4 230712)



現在「2年に一度の薬価改定時」に累積控除が行われていますが、松本委員は「後発品の保険適用が年に4回行われており、本来であればその際に累積控除を行う必要がある。それが困難であっても、少なくとも中間年改定時にも累積控除を行うべきである」と強く求めています。医療保険財政の健全化を意識した意見と言えます(累積控除の時期が早まれば、それだけ医療保険財政がわずかではあるが健全化する)。また上述(2)で「加算対象を広げるのであれば、その分、医療保険財政が厳しくなるため、累積控除の前倒しでバランスをとるべき」との考えも見て取れます。

これに対し長島委員や森委員は「薬価は2年に一度の改定が基本であり、累積向上もその際とすべできはないか。近年のドラッグラグ等には中間年改定も影響していると指摘され、中間年改定時の累積控除も慎重に検討すべきである」との考えを示しています。



このほか、新薬創出等加算について「加算が2010年度から導入され、改善も図られているが、未承認薬の解消などは十分に進んでいるのであろうか。近年のドラッグラグ等には別の要因があると考えるべきである。新薬創出等加算については『革新的な薬剤の開発を促す』という基本に立ち返り、シンプル化すべき部分も検討すべきではないか」(長島委員)、「企業の予見可能性を高め、ドラッグラグ等を解消するために、新薬創出等加算についてはメリハリをきかせ、シンプル化も検討する必要がある」(森委員)、「新薬創出等加算の枠組みは維持し、イノベーションの評価と医療保険財政の健全化との両立を目指すべき」(松本委員)、「イノベーションの評価が極めて重要である」(支払側の眞田享委員:日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)という大きな方向性に関する意見も出ています。

まだ、意見が割れている部分もあり、さらなる調整が続けられます。

我が国では、薬事承認された医薬品の99%が、平均2.4か月で保険適用されている

なお、「企業の予見可能性」という点に関し、安川薬剤管理官は「新薬の薬事承認、上市、保険償還の状況」に関する国際比較を行いました。

我が国では、薬事承認から保険適用までの平均期間が2.4か月(ほとんどが90日以内に保険適用)、薬事承認された医薬品が保険適用される割合が99.1%で、いずれもフランス・ドイツ・英国を上回っています(米国はより短期間であるが制度が大きく異なる点に留意)。

薬事承認から保険適用までの期間等の国際比較(中医協・薬価専門部会4 231018)



このデータについて長島委員は「データからも、我が国では製薬メーカーの予見可能性が極めて高い薬価制度になっていることが再確認できる」旨をコメントしています。



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