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後発品の価格帯集約ルール、医療上の必要な医薬品の価格を下支えするルールなど、どのように考えていくべきか―中医協・薬価専門部会

2023.8.3.(木)

後発品医薬品については、廉価で販売されている、品目数が多すぎることなどを踏まえた価格設定ルール(新規収載時の0.5掛け、価格帯集約など)が設けられているが、後発品供給不安が深刻化する中で、このルールをどう考えていくか—。

医療上必要な医薬品の確保に向けた「薬価の下支え制度」があるが、さらに充実を図っていくべきか。その際、メーカーが「極めて安く卸業者に販売していないか」などの点を勘案していくべきか—。

8月2日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、こういった議論が行われました(同日の「診療報酬改定DX」(改定施行時期の後ろ倒し)関連記事はこちら、小児・周産期医療関連記事はこちら)。なお同日には「費用対効果評価の見直しに向けた業界意見陳述」も議題に上がっており、別稿で報じます。

後発品を含めた「安定供給の確保、供給不安」の解消が優先課題だが・・・

2024年度には、診療報酬改定とセットで実施される、いわゆる「通常の薬価改定」が行われます。2024年度の薬価制度改革に向けては、▼後発品を中心とする安定供給▼創薬力の強化▼ドラッグ・ラグ/ロスの解消—といった大きなテーマが掲げられ、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書も踏まえた議論が進められます。

8月2日の薬価専門部会では(1)後発品の薬価(2)長期収載品の薬価(3)医薬品の価格下支え制度—を議題としました(新薬の価格算定に関する記事はこちら、前回の新薬のイノベーション評価に関する記事はこちら)。

まず(1)の後発品の薬価については、次のようなルールが設けられています。

▽新規収載後の市場実勢価格が低い(言わば「安売りされている」)点を踏まえて先発品価格の50%(内用薬で銘柄数が10品目を超える場合には40%、バイオ後続品については70%)とする

新規後発品の価格は先発品の半額等に設定される(中医協・薬価専門部会1 230802)



▽品目数が多く、極端に価格のバラつきがあることを踏まえ、組成、剤形区分、規格が同一である全ての類似品について▼最高価格の50%以上となる後発品▼最高価格の30%以上50%未満となる後発品▼最高価格の30%未満となる後発品—の3価格帯に集約する

後発品価格帯集約化(中医協・薬価専門部会2 230802)



後発品市場を踏まえたルールであり、これにより価格の集約が進んできていますが、「後発品メーカーの経営を圧迫し、不適切な製造販売を生んでしまった」(結果、現在の供給不安につながっている)との指摘もあります。メーカーサイドは、後者の価格帯集約ルールについて「低い価格の品目について、かえって高い価格になるケースがある」などの不合理があることも指摘し、「品目数が過多である状況も改善してきており、銘柄別の価格設定復活を検討してほしい」と要望しています(関連記事はこちら)。

新規後発品の収載品目数は減少してきている(中医協・薬価専門部会3 230802)



これに対し中医協委員は、「いまだに同一成分で10銘柄を超えるケースもあり、さらなる改善(価格集約)の余地があるのではないか」(長島公之委員:日本医師会常任理事)、「新規後発品数は減少してきているが、これで十分に再編が進んでいると言えるのか、後発品産業構造の変化などもふまえて評価すべき」(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)



また、後発品に関しては上述のように「安定供給の確保、供給不安の解消」が喫緊の課題となっています。この点については「安定供給のための評価(高い薬価設定など)が考えられるが、どのような品目、どのような企業であれば評価に値するのかについて、データに基づいた議論が可能なのか、そもそも要件化の可能性はあるのかを整理してほしい」(長島委員)、「後発品企業の在り方に関する検討も始まっており、その議論も踏まえて考えていくべきだが、薬価制度だけで対応することはできず、総合的な検討が求められる」(佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)、「薬価上の対応を行う大前提として、少なくとも産業構造の返還の道筋が示されていることが必要となる」(松本委員)など、厳しめの意見が出ている点が注目されます。



また(2)は、「後発品が登場した場合には、先発品(長期収載品)は市場が撤退し、後発品に道を譲るべき」との考えに基づく対応です。これまでに、▼後発品への置き換え率に応じた先発品(長期収載品)の価格を引き下げるルール(いわゆるZ2)▼「後発品置換え時期」と「長期収載品の後発品価格への引下げ時期」に分け、それぞれの時期に応じて薬価の見直しを行うルール(いわゆるG1・G2)—などが設けられています。

長期収載品から後発品への置き換えルール1(中医協・薬価専門部会4 230802)

長期収載品から後発品への置き換えルール2(中医協・薬価専門部会5 230802)



こうしたルールも手伝って、後発品の使用促進(先発品(長期収載品)→後発品への置き換えもその1つ)が進んでおり、2022年9月時点で後発品使用割合(数量ベース)は79.0%になっています。

今後、「金額ベースでの後発品使用割合目標値」が検討されるなど、さらなる後発品使用促進が期待され「長期収載品の薬価」見直しも議題の1つに上がりますが、委員からは「長期収載品は速やかに後発品に道を譲るべきである。ただし後発品の安定供給が難しく、長期収載品に頼らざるを得ないものもある。厚生労働省で整理したうえで、G1・G2の効果検証を行い、長期収載品から後発品への置き換えを推進すべき」(長島委員)、「製薬メーカーでは長期収載品については後発品へ市場を明け渡す考えも示している。G1・G2ルールの運用見直しなどを行い、長期収載品から後発品への置き替えをさらに推進していくべき」(松本委員)とコメントしています。

なお上述のように「後発品の供給不安」が続く中では、置き換えも十分は進みません。両者をセットで考えていく必要があります。

ところで、薬価とは別に後発品使用を促進するための診療報酬上の加算(後発品をより多く使用する医療機関、薬局の加算)がありますが、安藤伸樹委員(全国健康保険協会)は「後発品使用促進による薬剤費適正化効果よりも、加算総額がはるかに上回っている。そろそろ加算の段階的な廃止、縮小も検討するべき」と述べています。中医協総会で改めて検討されることになるでしょう。



他方、(3)は医療上の必要性が高い医薬品について「採算がとれない」として市場からの撤退が生じないように、価格を下支えする仕組みです。例えば、▼剤形ごとに設定される最低薬価▼不採算となる品目の価格引き上げ(不採算品再算定)▼最低薬価になる前に価格を下支えする基礎的医薬品—といった仕組みがあります。

この点、メーカーサイドは「医療上の必要性が高い医薬品の安定供給を確保するためには、こうした制度の充実(基礎的医薬品の範囲拡大、不採算品再算定の柔軟適用、最低薬価が設定されていない剤形への設定など)を図るべき」と求めており(関連記事はこちら)、今後、より具体的な検討が進められます。



なお、8月2日の薬価専門部会には、メーカーごとの乖離率(医薬品を製薬メーカーごとにみて、メーカーごとに薬価と市場実勢価格との間にどれだけの乖離があるか)データが提示されました。それによれば、メーカーにより大きなバラつきがあり、最も乖離の大きなメーカーでは「500」(全メーカーの平均乖離率の5倍)となっていることなどが分かりました。「極めて低い仕切り価(メーカー→卸の販売価格)を設定している」ことなどが考えられ、中医協委員からは「仕切り価を下げれば実勢価格も下がり、当然薬価改定時に薬価が下がっていく。それを薬価制度で下支えするのはおかしなことだ」(森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「驚くような値引きをしているメーカーもあり、正直驚いた、さらに詳細な分析に期待する」(松本委員)などの意見が出ています。

メーカーごとの乖離率を見ると、大きなバラつきがある(中医協・薬価専門部会6 230802)



新薬創出・適応外薬解消等促進加算では「企業全体の開発成績」が加算に反映される仕組みが導入されており、今後、「企業の販売実態」をも踏まえた対応が検討される可能性もあるでしょう。



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