「在宅患者の状態悪化→外来受診→地域包括ケア病棟入院」の流れも高く評価し、救急搬送・受け入れ負担軽減を―入院・外来医療分科会(3)
2023.8.14.(月)
「在宅患者の状態悪化→外来受診→地域包括ケア病棟入院という流れの患者」も、「救急搬送後に直接地域包括ケア病棟へ入院する患者」と同様に医療・看護の必要性が高く、医療資源投入量も多い。こうした患者の評価を高くし、救急搬送手前の医療機関受診を促進することで、「救急搬送・救急受け入れ」の負担を減らすことが可能になる—。
一部に短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟があり、在宅復帰率の向上、自宅等からの患者受け入れ割合の向上を容易に実現できている。地域包括ケア病棟の在宅復帰率計算などから短期滞在手術等基本料算定患者を除外するなどの工夫を行ってはどうか—。
8月10日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)で、こういった議論も行われています(同日の急性期入院医療・一般病棟用看護必要度に関する記事はこちら、ICU・HCU用の看護必要度に関する記事はこちら)。なお同日には「慢性期入院医療」に関する詳細な議論も行っており、別稿で報じます。
在宅患者の状態悪化→外来受診→地域包括ケア病棟入院という流れの患者も高く評価を
地域包括ケア病棟については、2024年度診療報酬改定に向けて「高齢の救急搬送患者受け入れをどう推進していくか」が重要テーマの1つなっています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
これまでに、高齢の救急搬送患者について「急性期病棟で受ける際のインセンティブを縮小していく」「地域包括ケア病棟で受ける際のインセンティブを強化していく」といった議論が行われてきています(こちら)。
8月10日の入院・外来医療分科会では「救急搬送患者」のみならず、「初診・再診後に入院する患者」についての分析も行われ、次のような状況が明らかにされました。「在宅等で療養しているが具合が良くない」→「しかし救急搬送するほどではなく、医療機関の外来を受診する」→「診察の結果、入院加療が必要と判断される」といったケースで、こうした患者について「救急搬送が必要となる手前で医療機関受診を促すことができれば、救急搬送・救急対応の負担を軽減することができる」と期待されるのです。
▽「初診・再診後に入院する患者」でも、救急搬送患者と同じく誤嚥性肺炎や尿路感染症が多い
▽「初診・再診後に入院する患者」では、医療・看護などの必要性が「救急搬送後、直接、地域包括ケア病棟に入する患者」に近い(医療・看護などの必要性が高い)
こうした状況を踏まえ、「初診・再診後に地域包括ケア病棟に直接入院する患者」受け入れを適切に評価してはどうか、との意見が多数出されました。例えば「医療・看護の必要性が高く、医療資源投入量が多い点を踏まえ、報酬上のインセンティブを設けるべき」(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長)、「新たな加算の創設、現行の【在宅患者支援病床初期加算】の要件見直しを検討し、受け入れ体制の整備、受け入れの促進を図ってはどうか」(武井純子委員:社会医療法人財団慈泉会相澤健康センター総合管理部長)、「比較的重症の患者に適切な対応をするには看護加配などが必要となり、報酬上の手当てが求められる。また3次救急に高齢患者が搬送等されれば生活情報把握などが困難となることから、状態を適切にトリアージし、地域密着型の地域包括ケア病棟などへの下り搬送が重要となる。この点も報酬で評価することが適切である」(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)などの声が出ています。一方で、中野惠委員(健康保険組合連合会参与)は「救急搬送後に直接入棟する患者や初診・再診後に入院する患者以外では、医療資源投入量が少ない。その点を勘案した評価を検討するべき」と逆の視点でコメントを行っています。
例えば「救急搬送後に直接入棟する患者や初診・再診後に入院する患者の割合に応じた基本報酬設定」「救急搬送後に直接入棟する患者や初診・再診後に入院する患者への加算評価充実」などを今後より具体的に練っていくことになるでしょう。
地域包括ケア病棟の在宅復帰率などから「短期滞在手術等基本料算定患者を除外」しては
8月10日の入院・外来医療分科会には、地域包括ケア病棟における短期滞在手術等基本料3の算定状況も報告されました。
地域包括ケア病棟の多くでは「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者」を受け入れていませんが、一部病棟では受け入れも行っており、中には「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟」もあります。
こうした病棟(短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟)では、▼家庭から入棟した患者割合が高い▼自宅等に退棟する患者割合が高い▼平均在棟日数が短い—という特徴もあります。短期滞在手術等基本料3は「一定の軽微な手術を2泊3日で治療する」ことを評価するものゆえ「在棟日数が短くなる」「自宅からの入院、自宅への退院が多くなる」ことは当然ですが、これは「短期滞在手術等基本料3を多く受け入れると、地域包括ケア病棟の施設基準をクリアしやすくなる」ことを意味します(自宅等から入棟した患者割合要件、在宅復帰率要件など)。
しかし、短期滞在手術等基本料3患者の受け入れが地域包括ケア病棟の本来の目的に合致しているか?と考えると大きな疑問も生じます。
この点については、「地域包括ケア病棟において短期滞在手術等基本料3患者の受け入れを否定はしないが、短期滞在手術等基本料3患者をそのままカウントすると実態が見えなくなってしまう」(鳥海弥寿雄委員:東京慈恵会医科大学医療保険指導室室長)、「短期滞在手術等基本料3患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟と、高齢救急患者なども含めてバランスよく受け入れる地域包括ケア病棟とでは、医療提供効率なども異なり報酬上の評価に差を設けるべきではないか」(武井委員)、「地域包括ケア病棟の在宅復帰率等において、短期滞在手術等基本料3患者の一定割合はカウントしないなどの対応を行ってはどうか」(小池創一委員:自治医科大学地域医療学センター地域医療政策部門教授)などの意見が出ています。
例えば、急性期一般病棟においては「平均在院日数の計算にあたり短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」「看護必要度の評価から短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」などの対応が図られています。短期滞在手術等基本料算定患者では、本来の姿と異なる形で「在院日数の短縮」「看護必要度割合の上昇」を実現できてしまうためです。
地域包括ケア病棟の施設基準についても、こうした「短期滞在手術等基本料算定患者の除外」が検討されていく可能性があります。
なお、ごく一部ですが「短期滞在手術等基本料算定患者割合が50%以上」の地域包括ケア病棟もあります。井川委員は「短期滞在手術用の地域包括ケア病棟になっているのではないか。実態をしっかり把握する必要がある」と要請しています。
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