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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

費用対効果制度について医薬品業界・医療機器業界から意見聴取、医薬品・機器の各々の特性踏まえた制度改善を―中医協

2023.8.4.(金)

費用対効果評価制度について、医薬品については事例が積み重ねられ、順調に進んでいると思われるが、医療機器についてはまだ2品目しか評価が行われておらず、事例の積み重ねが十分とは言えない。医薬品、医療機器の各々の特性を踏まえた費用対効果評価評価制度改善を検討してはどうか―。

8月2に開催された中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会(以下、専門部会)では、業界団体から意見聴取を踏まえて、こうした議論が行われています((同日の「診療報酬改定DX」(改定施行時期の後ろ倒し)関連記事はこちら、小児・周産期医療関連記事はこちら、薬価専門部会の記事はこちら)。

希少疾病用薬を費用対効果評価から除外すべきか、医療機器メーカーの人材不足をどう考えるか

医療技術の高度化、高齢化が進み、医療保険財政が厳しさを増す中では、新規の医療技術(新薬、新医療機器など)を保険適用する際などに「経済面を考慮する」ことが不可欠となってきています。そこで、中医協では2012年度から「費用対効果評価」の導入に向けた検討を進め、試行錯誤を経て2019年4月から制度化(本格運用)されました。

費用対効果評価の仕組みは非常に複雑ですが、「高額である」「医療保険財政に大きな影響を及ぼす」などの要件を満たした新薬・新医療機器について、「類似の医薬品・医療技術等(比較対象技術)に比べて、費用対効果が優れているのか、あるいは劣っているか」をデータに基づいて判断。「費用対効果が優れている」と判断されれば価格(薬価、材料価格)は据え置きとなり、「費用対効果が劣っている」と判断されれば価格の引き下げが行われます。また、「費用が少なくなる一方で、効果が優れている・あるいは同じである」という、いわば「きわめて費用対効果が優れている」製品については、価格の引き上げも行われます。従前の「安全性」「有効性」に加えて、新たに「経済性」の評価軸を設けるものです。

費用対効果評価制度の大枠(中医協・費用対効果評価専門部会2 210421)



2024年度には診療報酬改定に合わせて、費用対効果評価制度の見直しも行われ、中医協で議論が進められています(費用対効果評価専門組織から意見・提案に関する記事はこちら、キックオフ論議に関する記事はこちら)。

8月2日の専門部会では、医薬品業界・医療機器業界から「費用対効果評価制度の見直し」に向けた意見を聴取しました。

医薬品業界からは、次の5点の改善要望が出されています。
(1)希少疾病用医薬品についても、指定難病等治療薬と同様に費用対効果評価の対象から除外すべき
(2)比較対象技術の選定にあたり、「最も安価なもの」だけではなく、原則である「実臨床において幅広く使用され評価対象技術によって代替される医療技術」を選定する必要がある(実事例では、非常にシェアの小さな「最も安価や品目」が比較対象に選定されるケースが散見される)
(3)QALY(費用とQOL)で捉えられない要素(利便性等)が評価された品目については総合的評価(アプレイザル)において配慮されるべきである
(4)価格調整の対象範囲は有用性加算に限定すべきであり、薬価全体などに拡大させるべきではない(費用対効果評価は「有用性加算」の妥当性を判断するものである)
(5)「費用が下がり、効果も上がる」などの品目では価格引上げが認められているが、その条件(効果向上について臨床試験でのエビデンスがある、一般的な改良を超えた品目である)を撤廃、緩和すべきである

医薬品メーカーサイドの改善提案(費用対効果評価専門部会1 230802)



こうした要望について中医協委員からは、▼希少疾病では標準的治療法が確立されておらず、その意味でも費用対効果評価が重要である(費用・効果を踏まえた薬剤選択が重要となる)、将来的には難病治療薬なども費用対効果評価の対象組み入れを考えるべきである(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)▼比較対象技術の選定では、現行制度でも「最も安価である」以外の要素を勘案しているはずである(長島公之委員:日本医師会常任理事)▼総合的評価の枠組み見直しは、「曖昧な評価」を誘発してしまう恐れがある(長島委員)▼例えば外国価格調整では「薬価全体」を対象に調整が行われている点も考慮する必要がある(長島委員)▼価格調整に当たっては「医療保険財政への影響」をさらに重視すべきである(松本委員)—などの意見が出ています。

必ずしも「メーカーサイドの要望を否定する」意見ばかりではなく、今後、メーカーの意見も踏まえながら、改善策を練っていくことになります。



他方、医療機器メーカーサイドからは、「機器の費用対効果評価は2品目のみで実施されたばかりであるが、厳しい内容であった」とし、次のような提案・要望がなされました。
(a)メーカーサイドと公的分析班等とのコミュニケーション充実を図ってほしい(分析前協議の期間拡大、書面以外でもダイレクトな質疑応答など)
(b)保険適用時に「高い蓋然性をもって臨床的有用性が認められた」が、費用対効果評価にあたりエビデンスが不足するものについて、価格調整における配慮の要否を総合的評価で審議してほしい(医療機器において有用性のエビデンスを短期間で示すことは極めて困難である)
(c)費用最小化分析の価格調整係数に、「価格調整における配慮が必要とされたもの」の 区分を設定して価格調整係数を緩和してほしい(価格引き下げの緩和措置を設けてほしい)
(d)「分析実施に必要な人員が不足する場合」についても「分析不能」として審議してほしい(医療機器メーカーは小規模なところが多い)
(e)H3(分析枠組み決定後に効能追加された、著しく単価が高いなど、中医協総会において費用対効果評価が必要と判断される類型)の中に「費用対効果評価終了後に、評価に重要な影響を与える知見が得られた」区分があるが、その指定プロセスに「企業の申し出による」ものを追加してほしい
(f)機器では評価は現状2品目のみであり事例が十分ではないため、拙速な価格調整対象の拡大は行うべきではない

医療機器メーカーサイドの改善提案(費用対効果評価専門部会2 230802)



こうした提案・要望に対しては、▼医薬品では費用対効果評価が順調に進んでいるが、機器では2品目にとどまっており、両者を分けて制度改善を考えることもありえる(長島委員)▼人員不足の際の「分析不能」との扱いは認めがたい(松本委員)—などの声が出ています。

なお、人員不足の際の「分析不能」と扱ってほしいとの機器側提案に対し、医薬品業界サイドは「医薬品メーカーでも負担は大きい。企業サイドの提案は理解できる」との考えを示しています。

医療機器の費用対効果評価に関しては、上述のように「まだ2品目」しか事例がなく、現状では「事例を積み重ねていく」フェイズにある点を十分に考慮して改善方策検討が進むことでしょう。



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