ICU評価は「看護必要度+SOFAスコア」へ、HCU看護必要度から心電図モニタ管理など削除へ―入院・外来医療分科会(2)
2023.8.14.(月)
ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)について、一般病棟用、特定集中治療室管理料用と同じく「心電図モニタ管理」などを削除してはどうか—。
特定集中治療室管理料等では、SOFAスコアの測定が行われているが、測定にとどまらず、看護必要度と組み合わせて評価指標に用いることとしてはどうか—。
8月10日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)で、こういった議論も行われました(同日の急性期入院医療・一般病棟用看護必要度に関する記事はこちら)。なお同日には「地域包括ケア病棟」「慢性期入院医療」に関する詳細な議論も行っており、別稿で報じます。
HCU看護必要度から「心電図モニタ管理」「B項目評価」などを削除してはどうか
Gem Medで繰り返し報じているとおり、入院料(病棟・病床)ごとに「当該病棟・病床での入院が真に必要な患者を受け入れる」ための指標が設定されており、急性期・高度急性期病棟では「看護必要度」が重要指標の1つとなっています(一般病棟用の看護必要度、特定集中治療室管理料用の看護必要度、ハイケアユニット要の看護必要度が設けられている)。
ハイケアユニット(HCU)用の看護必要度では、創傷処置や心電図モニタ管理、動脈圧測定、特殊な治療法等(CHDFや補助人工心臓等)などのA項目と、寝返り・移乗・危険行動の有無などのB項目を設定。「A項目3点以上かつB項目4点以上」の患者を看護必要度を満たす患者と定め、管理料1ではその患者割合が80%以上、管理料2では同じく60%以上であることが施設基準で求められています。
厚労省がHCU看護必要度の状況を詳しく調べたところ、次のような状況が明らかになりました。
▽A項目のうち「心電図モニタの管理」や「輸液ポンプ管理」に該当する患者が100%近い(HUC入室時の状態、手術の有無に関係なく)
▽医療機関当たりのHCU数が「10床以下」と「20床以上」とで比べると、A項目で大きな違いはないが、B項目について「10床以下」のほうが2点該当項目を満たす割合が高い
▽ICUのない医療機関のHCUでは、ICUのある医療機関のHCUに比べて、▼看護必要度割合が高い▼「点滴ライン同時3本以上管理」「人工呼吸の管理」の該当割合が高い▼「動脈圧測定(動脈ライン)」の割合が低い—傾向にある
▽入室経路によらず、A項目3点以上患者の割合は9割近いが、A項目4点以上患者の割合は大きく低下する
▽A項目3点以上に該当した場合は、ほぼ全ての症例がB項目4点以上にも該当する
▽ICU→HCU患者では、「動脈圧測定(動脈ライン)」の割合が高い
▽入室後重症化率の高いHCUでは「創傷処置」「人工呼吸器管理」「特殊な治療法等」の該当割合が高く、入室後重 症化率の低いHCUでは「呼吸ケア」「点滴ライン同時3本以上管理」「動脈圧測定(動脈ライン)」の該当割合が高い
こうした状況を踏まえてHCU看護必要度を見直し、「HCU入室が相応しい患者」のより適切な抽出を目指していきますが、8月10日の入院・外来医療分科会ではすでに具体的な提案がいくつか出ています。
牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任理事)は、A項目のうち例えば心電図モニタ管理について「すでに一般病棟用の看護必要度、ICU用の看護必要度では削除されている」「HCU入室患者のほぼ100%で該当し、削除しても大きな影響はない」点に注目し「削除」を提案。ただし一般病棟用の看護必要度で削除された折に循環器内科で看護必要度割合が大きく低下した点などに鑑み、例えば「血管作動薬の使用」「人口透析」といった常時監視が必要な治療等を新たに項目に追加してはどうかとも提案しています。
ほかにも牧野委員は「A3点以上患者のほとんどはB4点をクリアすることから、ICU用の看護必要度と同様にB項目要件を削除すべき」「レセプト電算処理システムコードを用いた看護必要度IIをHCUにも導入すべき」との提案も行っています。
秋山智弥委員(名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター教授)も牧野委員と同じく、「ほぼすべての患者が該当する心電図モニタ管理の削除」を提案。ほか、▼輸液ポンプ管理についてもほぼすべての患者が該当するが、ICU看護必要度にも盛り込まれており、ICU用看護必要度とセットで考えるべき▼蘇生術施行については、該当患者がほとんどおらず、他項目での代替が可能と考えられ、削除が考えられる—などと指摘しました。
また、中野惠委員(健康保険組合連合会参与)も、同様に「A項目からの心電図モニタ管理、輸液ポンプ管理の削除」「B項目の廃止」が妥当との見解を示しました。
逆に「心電図モニタ管理等を存続すべき」との反論は出ておらず、今後、上記の意見も参考にHCU用看護必要度の見直しを検討していくことになるでしょう。
ICU等でのSOFAスコア、測定だけでなく、看護必要度と組み合わせた評価指標に組み入れ
ICU用の看護必要度については、2022年度の前回診療報酬改定で次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。
(1)内容の見直し
▽A項目から「心電図モニタ管理」を削除する
▽B項目を削除する
(2)重症患者(看護必要度を満たす患者)の定義見直し
▽「A3点以上」とする
(3)看護必要度IIの導入
▽看護必要度IIの重症患者割合の基準値は、▼救命救急2・4、ICU1・2では70%以上(必要度Iでは80%以上)▼ICU3・4では60%以上(同じく70%)—に設定する
こうした改定が行われた後におけるICUでの看護必要度該当患者の状況を見ると、多くの施設で基準値をクリアできていることが分かりますが、逆に考えると「ICU用の看護必要度度について、ICU該当患者を評価するに当たり限界を迎えつつあるのではないか」とも思えます。
ところで、2018年度改定後、ICUでは「SOFAスコアの測定」が求められてきています(当初ICU1・2で測定義務を課し、2020年度改定でICU3・4でも測定義務化)。
SOFAスコアは、患者の▼呼吸機能▼凝固機能▼肝機能▼循環機能▼中枢神経機能▼腎機能―の6機能について、ゼロ点から4点の5段階で「重症度」を評価するもので、合計点数(total maximum SOFA score:TMS)が高いほど「重症である」と判断されます(最低ゼロ点から最高24点)。これまでの調査分析では、▼SOFAスコアは、退院時転帰とより強く相関している▼ICU看護必要度90%以上の施設でも、入室日のSOFAスコア5以上の重症患者割合にはバラつきがある—など、「看護必要度と異なる観点で患者の重症度を評価し、看護必要度を補完できる」可能性が強く示唆されています。
こうした状況を踏まえ、牧野委員は「SOFAスコアは、患者の重症度を評価する指標として優れていることが分かる」と評価し、「看護必要度+SOFAスコアによる評価」の積極的な検討を推奨。
ただし、「入室時のSOFAスコアがゼロの患者もICUに少なからず入室している。これは例えば『手術後の不安定な状況の患者のICU入室』や『RRS(入院患者の急変に迅速に対応する体制)を導入し、重篤になる手前にICU管理を行うケース』などによるものであろう。こうした点も考慮すべき」と牧野委員は付言。秋山委員も同旨の考えを述べていますが、中野委員は「術後患者のICU管理は否定されるものではないが、そうした患者が多いICUと、重篤な患者を多く受け入れるICUとで同じ評価が行われるのはいかがなものか」ともコメントしています。
今後、さらに「看護必要度評価とSOFAスコアとの相関」などを詳しく分析しながら、「看護必要度+SOFAによる評価」方法の導入を具体的に検討していくことになりそうです。
なお、ICUに関連して牧野委員は「ICUでの患者管理には多くの医師が協力してあたっており、宿日直許可に関しては実態を適切に踏まえて判断することが必要である」と指摘しました(関連記事はこちら)。
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