回復期リハ病棟での栄養・口腔管理推進、療養病棟の医療区分細分化、入院全般での身体拘束ゼロ等などが重要論点―入院・外来医療分科会(2)
2023.9.15.(金)
9月14日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、分科会)で、これまでの議論を整理した「中間とりまとめ」を行いました。尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)が最終の文言調整を行い、近く親組織である「中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会」に報告します。
本稿では回復期入院医療、慢性期入院医療、入院医療に横断的な事項に焦点を合わせます(急性期入院医療に関する記事はこちら)。
目次
地域包括ケア病棟、救急搬送患者と並んで緊急入院患者の受け入れも適切な評価を
回復期入院医療のうち「地域包括ケア病棟」については、次のような見直し方向が整理されました(関連記事はこちらとこちら)。
▽救急搬送患者受け入れの推進方策を検討する
▽緊急入院患者(いわゆるウォークイン)受け入れについても、医療資源投入量が多い点等を踏まえた評価を検討する
▽在宅医療提供の推進方策を検討する
▽高齢の急性期患者を地域包括ケア病棟で受ける方向に照らし、「夜間も含めた手厚い看護配置」を進める方策を検討する
▽短期滞在手術等基本料について、診療実績等の計算基準から除外することを検討する
これまでに議論されてきた方向であり異論・反論は出ていません。井川誠一郎委員(日本慢性期医療協会副会長)は「緊急入院の受け入れは実態を踏まえた十分な評価が必要である」と改めて要請しています。
回復期リハビリ病棟、リハ・栄養・口腔の一体的実施などをより意識せよ
また回復期リハビリ病棟については、次のような見直し方向案が浮上しています(関連記事はこちら)。
▽適切なFIM測定に向けて第3者評価の積極受診方策等を検討する
▽運動器リハについて、「実施単位数に応じた評価」の見直しなどを検討する(6単位超の実施でも効果があがらないとのデータあり)
▽栄養管理・口腔管理の積極的な実施に向けた方策を検討する
▽退院前指導の積極的な実施に向けた方策を検討する
▽身体拘束ゼロに向けた取り組み方策を検討する
このうち、運動器リハに関しては「都道府県ごとに査定のローカルルールがある点も考慮すべきではないか」との指摘が井川委員や津留英智委員(全日本病院協会常任理事)から出ています。例えば、ある県では「診療報酬点数上は疾患別リハ料は1日9単位まで算定可能であるが、高齢者への運動器リハは6単位までしか請求を認めない」(超過分は査定、カットする)などの運用がなされています。このため「8単位、9単位のリハビリを実施し、効果をあげても、見かけ上6単位リハの効果(高い効果)となり、6単位超のリハでは効果が上がらないように見えるのではないか」といった点を心配する向きもあります。
しかし、上述した「6単位超の実施でも効果があがらないとのデータ」は、いわば査定前の「医療機関でのリハビリ提供量」で測定されており、上述した心配はないようです。
今後、「運動器リハビリ料の実施上限を9単位から6単位に引き下げてはどうか」などの議論が進むと予想されます。
また飯島勝矢委員(東京大学未来ビジョン研究センター/高齢社会総合研究機構教授)は「栄養管理、口腔管理、退院前指導など、いずれも『実施した方が良い』『実施することが回復期リハビリ病棟では当たり前である』ことであるが実施されていない実態もある。この『実施して当たり前のこと』をどのように実施してもらうかという点をさらに深く考える必要がある」と指摘しています。施設基準や算定要件において「●●を実施しない場合には回復期リハビリを取得できない、算定できない」ことが明示されていますが、さらに強力な方策を検討することはできないかという指摘と考えることができるかもしれません。
療養病棟の医療区分、「疾患・状態」×「処置」をベースに細分化を進める
他方、療養病棟に関しては次のような見直し方向が議論されてきています(関連記事はこちら)。
▽医療区分の細分化を検討する(疾患・状態×処置の組み合わせなどを検討)
▽中心静脈栄養からの早期離脱や、適応の限定等を検討する
▽入院料I(医療区分1・ADL区分1)においてリハビリが著しく多い点への対応などを検討する
この点、井川委員は▼現場負担を考慮し、各医療区分の項目(例えば医療区分3の疾患・状態であれば『スモン』『医師・看護師により常時監視・管理を実施している状態』)については現行を維持してほしい▼中心静脈栄養について「経腸栄養が禁忌の場合に限定する」ことは行き過ぎではないか、経腸栄養の効果が十分でない場合などにも中心静脈栄養選択が有用である—と注文を付けました。また中野惠委員(健康保険組合連合会参与)も▼医療区分見直しでは現場の混乱を避ける必要がある▼中心静脈栄養からの早期離脱に向け、まだ改善の余地がある—との考えを示しています。
急性期入院でもリハビリ・栄養・口腔の一体的推進が非常に重要
このほか、入院医療全般に関係する事項などとして、次のような方向が示されました。
▽入院医療全般において身体拘束ゼロを目指した取り組み推進方策を検討する(関連記事はこちら)
▽入退院支援・入院時支援のさらなる積極的実施を進める(例えば、入院料に応じた入退院支援加算等の基準設定なども考えられる)関連記事はこちら)
▽急性期入院医療においても、リハビリ・栄養管理が積極的に進むような方策を検討する(関連記事はこちら)
いずれも重要な論点であり異論・反論は出ていません。今後、より具体的に、「方向性の是非」や「具体的な点数・施設基準への落とし込み」に向けた議論が進んでいきます。
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