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療養病棟、処置内容により医療資源投入量が大きく異なる点踏まえて「医療区分の細分化」へ―入院・外来医療分科会(4)

2023.9.8.(金)

療養病棟では、同じ医療区分でも処置内容などによりd医療資源投入量が大きく異なっており、「医療区分の細分化」を進めていくべきである—。

中心静脈栄養の適応場面について、「経管栄養が実施できない場合」などに限定すべきであろうか—。

9月6日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、回復期入院医療に関してこうした議論も行われています(急性期入院医療に関する看護必要度や平均在院日数などの指標、リハビリ・栄養改善に関する記事はこちら、DPC制度改革に関する記事はこちら、回復期リハビリ病棟・地域包括ケア病棟に関する関する記事はこちら)。

療養病棟の医療区分を細分化へ、処置内容等で資源投入量が大きく異なる

8月10日に開催された入院・外来医療分科会では、療養病棟の医療区分について「細分化を検討してはどうか」との議論が行われました(関連記事はこちら)。

療養病棟では、「3つの医療区分」と「3つのADL区分」とを掛け合わせて患者の状態を評価し、9区分の報酬が設定されています。また、療養病棟入院基本料1では「医療区分2・3の患者割合が80%以上」、療養病棟入院基本料2では同じく「50%以上」といった施設基準が定められています。急性期病棟などでは「重症度、医療・看護必要度」で患者を評価しますが、療養病棟では「医療区分」で患者の状態を評価しているのです。

医療区分は(a)一定の疾患・状態に該当するか(b)一定の処置を行っているか—という2つの軸で「どの区分に該当するか」が判断されます。

例えば、医療区分3では、(a)の疾患・状態には▼スモン病▼医師・看護職員により常時、監視・管理を実施している状態—が該当し、(b)の処置には▼中心静脈注射▼24時間持続点滴▼人工呼吸器▼ドレーン法、胸腔・腹腔洗浄▼気管切開・気管内挿管が行われ、かつ発熱を伴う状態▼酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る)▼感染症治療の必要性による隔離室での管理—が該当します。

療養病棟入院基本料の概要(入院・外来医療分科会(4)1 230810)



これらのうちいずれかの項目1つに該当すれば「医療区分3」となりますが、厚労省の分析では「同じ医療区分3であっても(a)の疾患・状態に該当する患者と、(b)の処置に該当する患者とでは、医療資源投入量に一定の相違がある」ことが判明しました(関連記事はこちら)。



さらに9月6日の入院・外来医療分科会では(a)の「疾患・状態」と(b)の「処置」とをクロスして「医療資源投入量」を比較。具体的には、例えば「疾患・状態の医療区分3、かつ処置等の医療区分1」「疾患・状態の医療区分3、かつ処置等の医療区分2」「疾患・状態の医療区分3、かつ処置等の医療区分2」・・・という具合に患者を群分けし、それぞれで医療資源投入量を比較。そこからは、下図のように「大きな差がある」「同じ医療区分の患者でも、処置の内容が変われば医療資源投入量に差がある」ことが確認されています。

同じ医療区分でも、処置内容などにより医療資源投入量に大きな違いがある1(入院・外来医療分科会(4)1 230906)

同じ医療区分でも、処置内容などにより医療資源投入量に大きな違いがある2(入院・外来医療分科会(4)2 230906)

同じ医療区分でも、処置内容などにより医療資源投入量に大きな違いがある3(入院・外来医療分科会(4)3 230906)



こうした状態を見て井川誠一郎委員(日本慢性期医療協会副会長)は「処置内容によって医療資源投入量に大きな差がある。これを同じ医療区分でくくれば、診療報酬でコスト改修ができない。医療区分を細分化し、各区分に見合った報酬を設定することが必要である」と改めて強調。また中野惠委員(健康保険組合連合会参与)も「疾患・状態と処置の組み合わせで医療資源投入量が大きくことなっており、精緻化が大事である」との考えを示しています。

今後、医療区分の細分化に向けた検討が進められますが、井川委員は「細かくしすぎれば現場の事務負担が大きくなる。その点に配慮・工夫をしてほしい」と要請しています。

さらに井川委員は将来の検討課題として「例えば医療区分2について、該当する処置が重なれば(複数処置の実施)、医療資源投入量が大きくなる。そうした点に対しる対応も検討してほしい」と要望しました。上述の医療区分細分化が実現すれば、「医療資源投入量の実態」などがよりクリアに見えてくると思われ、そのデータをもとに「複数処置実施をした場合の対応」を将来的に検討していく可能性があります。

もっとも、同じ包括評価であるDPCでも「最も医療資源投入量を投入した傷病」に基づく診療報酬が支払われる仕組みとなっており、「複数傷病に該当したからといって、複数の診断群分類の報酬を算定できる」わけではありません(もちろん合併症などでの配慮はなされている)。こうした点を考慮すると「複数処置を行った場合に、多くの報酬を得られる仕組み」の検討・実現には、いくつものハードルがあると考えられそうです。

なお、井川委員は「例えば中心静脈栄養からの離脱を実現した場合には、医療区分が下がってしまうことがある。こうした場合には、一定期間、元の医療区分が維持されるような仕組みを検討すべき」とも提案しています。「状態が改善した場合に報酬が下がってしまう。このため状態改善に向けた取り組みが消極的になってしまう」ことは介護保険でも問題視され、「要介護度が改善した場合の加算(ADL維持等加算)」が設けられています。こうした事例も参考に「状態改善へのインセンティブ」を将来的に検討していく必要がありそうです(関連記事はこちら)。

療養病棟での「中心静脈栄養の適応」場面を、経管栄養不能な場合などに限定すべきか

また入院・外来医療分科会の下部組織「診療情報・指標等作業グループ」からは、▼経口摂取が不可能な場合や中心静脈栄養から胃ろうや腸ろうなどへ栄養方法を変更する場合の「医療者からの患者・家族への情報提供や意思決定支援」が重要である▼中心静脈栄養は「経管栄養が実施できない限られた病態」に応じて実施されるべきである▼中心静脈栄養では、経管栄養と比べて生命予後が不良であることから、医療区分3としての評価について適切な指標となるよう見直すべき—などの提案が出ています。

このうち「中心静脈栄養は経管栄養が実施できない限られた場合に実施すべき」との考えに対しては、「現場感覚では、中心静脈栄養の適応はより広範であると感じている。中心静脈栄養実施の限定は慎重に考えるべき」(猪口雄二委員:日本医師会副会長)、「中心静脈栄養カテーテルの適応はあまり限定せず、現場の柔軟な判断に委ねてほしい。一方でピックカテーテル(腕から挿入する中心静脈カテーテル、他の中心静脈カテーテルと比較して簡単に挿入でき、感染リスクが低いとされる)の活用促進も検討の必要がある、これらにより身体拘束を防止することも可能ではないか」(井川委員)といった意見が出ていますが、田宮菜奈子委員(筑波大学 医学医療系 教授)は「中心静脈栄養の選択が相応しい場面があることはもちろん承知している。ただし漫然と長期間にカテーテルを留置することは好ましくなく、必要性を十分に勘案して実施することが重要である」と指摘しています。ここも、さらに議論を深めるべき重要論点の1つです。

なお、療養病棟の入院料I区分(医療区分1・ADL区分1)において「リハビリ実施が他の入院料と比べて著しく多い」こともわかりました。2022年度の前回診療報酬改定では「経過措置型療養でリハビリ実施が著しく多い」ことが判明し、「疾患別リハビリ料を算定する患者に月1回以上のFIM測定を義務付け、これ行わない場合には▼算定可能な疾患別リハビリ料は1日2単位までに制限▼算定する入院基本料は医療区分2の患者でも「医療区分1に相当する点数—とする」との対応が図られました(関連記事はこちら)。今後、入院料Iでも同様の対応をとるべきか、検討が進められます。

療養病棟の入院料Iでは、リハビリ実施が著しく多い(入院・外来医療分科会(4)4 230906)



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