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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2024年度診療報酬改定、「高齢者の救急搬送等」にどう対応すべきか、「かかりつけ医機能」をどう報酬で評価すべきか—中医協(2)

2023.9.28.(木)

2024年度の次期診療報酬改定に向け、9月27日に開催された中央社会保険医療協議会の総会、および診療報酬基本問題小委員会で「入院医療等の調査・評価分科会」の中間まとめ報告が行われました。入院医療・外来医療のそれぞれについて、今後の個別具体的な第2ラウンド論議に資する技術的検討事項が整理されています。

また、同日の中医協総会では「2022年度医療費の動向」を踏まえ、医療機関の経営状況をどのように見るべきか、という議論も行われています(同日の認知症治療薬「レケンビ」の薬価特別ルール設定に向けた議論の記事はこちら)。

「高齢者の救急搬送、急性期入院医療」にどのように対応すべきかが最重要論点

Gem Medで報じているとおり、中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」で中間まとめが行われました(関連記事はこちら(急性期入院医療)こちら(回復期、慢性期入院医療)こちら(外来医療等))。例えば急性期入院医療では「高齢の救急搬送患者、急性期患者をどの病棟で受けるべきか、関連して看護必要度の評価内容をどう見直すべきか」「平均在院日数の基準を短縮すべきか」、回復期リハビリ病棟では「リハビリ・栄養・口腔管理の一体的実施をどう進めるか」、外来では「がん化学療法の外来移行をどう進めるか」などが重要検討項目として浮上しています。

9月27日の基本小委・総会には、この中間まとめが報告されました。中医協委員からは、今後の議論に資するよう、例えば次のような「分析の深掘り」「技術的・専門的な見地からの更なる検討」を行ってほしいとの要請がなされています。

【急性期入院医療について】
▽総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行の背景には「点数差」(急性期充実>総合入院)があるのではないか。総合入院体制加算の役割を踏まえた「点数引き上げ」を検討すべき(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)

▽看護必要度A項目について2022年度に「点滴ライ同時3本以上管理」が「薬剤3種類以上管理」に見直されたが、該当割合が急増している。どういった薬剤が使用されているのかなどを詳しく見るべき(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)

▽高齢者の救急搬送・急性期入院医療をどういった病棟で主に対応するかも考慮した制度設計を考えていく必要がある(松本委員)

▽「高齢者の救急搬送・急性期入院医療にどう対応していくか」が今後ますます重要な課題となる。その際「地域包括ケア病棟で受ければよいではないか」といった乱暴な議論をするのではなく、「2次救急病院では、まず急性期病棟で初療し、必要に応じて地域包括ケア病棟へ転棟する」「2次救急対応ができない病院の地域包括ケア病棟では、まずトリアージをきちんと行える急性期病院で初療し、必要に応じて下り搬送で受け入れる」といった丁寧な視点で検討していかなければならない(診療側の島弘志委員:日本病院会副会長)

【DPC改革について】
▽効率性係数・指数については「本来の趣旨に沿わないケース」があることを踏まえて「計算方法の見直し」などを検討すべきだが、複雑性係数・指数については「計算方法の見直し」ではなく、データ数の少ない病院などはDPCからの退出を促すルールを検討すべき(松本委員)

【回復期入院医療について】
▽高齢者の救急搬送・急性期入院医療について、「下り搬送を行い地域包括ケア病棟で受ける」ことが現実的であろう。ただし、「地域包括ケア病棟に直接入棟する患者」と「急性期病棟を経て地域包括ケア病棟に入棟する患者」都では、医療資源投入量等が大きく異なり、両者を同様に扱うことには疑問がある。そうした点を専門的視点で整理してほしい(松本委員)

▽回復期リハビリ病棟における「FIM測定の適正化、第3者評価」に関連して、「入棟中のFIMの定期的な評価」を導入する方向で検討を進めてほしい(松本委員)

【慢性期入院医療について】
▽療養病棟における医療区分の精緻化・細分化の方向には賛同できる。介護施設等との役割分担も踏まえ、どういった患者をどういった医療機関で受け入れることが適切かの検討を進めてほしい(松本委員)

【入院に係る横断的事項】
▽「病院に歯科があるケース」と「外部から歯科クリニックが関与するケース」との違いなどについて分析を進めるべき(診療側の林正純委員:日本歯科医師会副会長)

【外来医療について】
▽特定疾患療養管理料では、在宅時総合医学管理利用などと異なり「時間外加算1取得医療機関での算定多い」との傾向は見られないが、それは特定疾患療養管理料の算定要件に「時間外加算1取得」が含まれていないためで、当然のことではないか。「時間外加算1を取得していない医療機関」がかかりつけ医機能を果たしていないわけではない。特定疾患療養管理料算定病院が地域で果たしている「かかりつけ医機能」について、より多面的な分析をすべきである(長島委員)

▽かかりつけ医機能発揮の観点から、「どのような疾患を特定疾患療養管理料の対象に含めるべきか」を検討すべきである(例えば慢性腎炎や間接リウマチ、認知症なども対象に含めるべき)(長島委員)

▽コロナ禍で慢性疾患患者の受診控えが生じ、「治療間隔の延伸」「治療中断」なども起こっている。医学管理の質を確保する観点から、「長期処方の増加度合」やそれに伴う「医療機関の負担増」なども分析すべき(長島委員)

▽高血圧症などの慢性期疾患の管理について、生活習慣病管理料や地域包括診療料等の算定は極めて少ない。既存の「かかりつけ医機能を評価する」とされている診療報酬項目を体系的に整理しなおし、慢性疾患の管理をどの診療報酬項目で評価するかを考えていくべき(松本委員)

▽特定疾患療養管理料でも「計画書作成・交付」などを要件化し、より効率的・効果的な疾患管理を行えるようにすべき(松本委員)

▽オンライン診療の適切な実施に係る指針では「初診での睡眠薬処方は禁止」されているが、不眠症が上位疾患に浮上しており「不適切なオンライン診療の可能性」が示唆されている。さらなる分析を進め「健全な形でのオンライン診療の普及」を目指すべき(松本委員)



こうした意見を踏まえて、入院・外来医療分科会で改めて「深掘りの分析・議論」を行うと同時に、中医協総会で今後本格化する「個別具体的な第2ラウンド論議」も進められていきます。

コロナ診療報酬臨時特例で9000億円、不妊治療の保険適用で897億円、医療費が増加

また9月27日の中医協総会には、厚労省から「新型コロナウイルス感染症への診療報酬臨時特例」(コロナ患者の医療費ではない点に留意)や「不妊症治療の保険適用」が2022年度医療費に及ぼした影響について報告が行われました。

前者の「コロナ診療報酬特例」については、9000億円(入院4000億円、入院外5000億円)の医療費増加をもたらしています(医療費全体46兆円に占めるシェアは、1.9%(入院2.2%、入院外2.8%))。

コロナ診療報酬特例の医療費(中医協総会(2)1 230927)



また国民1人当たり医療費は36万8000円で、このうちコロナ特例分は「7000円」に相当します。さらに、1人当たり医療費を「1日当たり医療費」と「1人当たり診療日数」に分解すると、「1日当たり医療費:1万8600円」×「1人当たり診療日数:19.5日」となり、前者の1日当たり医療費のうち「400円」分がコロナ特例分に相当します。

コロナ診療報酬特例の1人当たり医療費への影響(中医協総会(2)2 230927)



この点に関連して、診療側の長島委員は「1人当たり医療費からコロナ特例分を除く『36万7000円』は前年度に比べて1.5%増であるが、コロナ禍前の『1人当たり医療費の伸び率』(5年間平均)1.78%に比べて低い水準にとどまっている。一方、医療現場はコロナ対策でコストが大きく増加しており、医療機関経営が非常に厳しいことを確認できる。コロナ臨時特例は継続されるわけでなく、今後も厳しい状況は続く」と分析しました。

これに対し支払側の松本委員は「診療報酬はサービスの対価であることを考慮すれば『1日当たり医療費』が重要であり、年々増加していることを確認できる」と述べ、長島委員の「医療機関経営は厳しさを増している」との分析に反論しています。

両者の視点は異なっており、また「1人当たり医療費、1日当たり医療費の伸びが、ダイレクトに医療機関の経営状況を示す」ものでもありません(経営を考える上では非常に重要な指標になるが、その場合でも「個別医療機関の数値」を見る必要がある)。今後示される「医療経済実態調査」結果を眺め、医療機関経営が好転しているのか、厳しさを増しているのかを見ていく必要があります。



他方、後者の「不妊治療の保険適用」による医療費増は「897億円」(医療費46兆円の0.2%)で、内訳を見ると▼病院の入院:9億円(不妊治療の1.0%)▼病院の入院外:104億円(同11.6%)▼クリニックの入院:8億円(同0.9%)▼クリニックの入院外:776億円(同86.5%)—であることが示されました。産科クリニックの外来で不妊治療の大部分が実施されていることが伺えます。

不妊治療医療費(中医協総会(2)3 230927)

不妊治療医療費の内訳(中医協総会(2)4 230927)



この点については、「保険適用により、どの程度、不妊治療実施が増え、妊娠につながったのかなどの効果を検証していくべきである」との声が支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)や公益代表の永瀬伸子委員(お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授)から出ています。

近い将来「正常分娩の保険適用」論議も進むため、一定の時期に「不妊治療の保険適用による効果」を見ていくことも重要となるでしょう。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

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