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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2024年度診療報酬改定の基本方針論議続く、物価高騰対応の必要性言及を医療提供サイドは高く評価するが、費用負担者は効率化を強く要請

2023.10.3.(火)

9月29日に社会保障審議会の医療保険部会と医療部会が相次いで開催され、「2024年度診療報酬改定の基本方針」も議題の1つに上がりました(医療保険部会における訪問看護のオンライン資格確認等、薬剤自己負担見直しに関する記事はこちら、医療部会における「かかりつけ医機能報告」制度に関する記事はこちら)。

両部会ともに委員から様々な意見が出されており、引き続き議論を続け、12月上旬の基本方針策定を目指します。

9月29日に開催された「第168回 社会保障審議会 医療保険部会」

9月29日に開催された「第102回 社会保障審議会 医療部会」

物価高騰・人件費高騰への対応を基本認識の第1項目に位置付け

9月29日の両部会には、前回議論を受けた「基本認識」案、「基本的視点・具体的方向性」案が厚生労働省保険局医療介護連携政策課(医政局、老健局併任)の竹内尚也課長から示されました。前回の議論や、すでに進んでいる中央社会保険医療協議会の議論などを踏まえたものです(関連記事はこちらこちら)。

改定基本方針は、これまで「基本認識」と「基本的視点・具体的方向性」の2部構成となっています(2022年度の前回診療報酬改定の基本方針はこちら)。

前者の基本認識においては、近年の社会情勢・医療を取り巻く状況を踏まえ▼物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応▼全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福 祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応▼医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現▼社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和—の4点を、いわば「2024年度改定で目指すべき方向」として指示。

2024年度診療報酬改定基本方針における「基本認識」の案



そのうえで、後者の「基本的視点・具体的方向性」において、より具体的に次のような点を改定内容の中で勘案することを求めています。
▽ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携を推進する(医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進、生活に配慮した医療の推進、リハビリ・栄養管理・口腔管理の連携・推進、地域医療構想・地域包括ケアを踏まえた医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価、新興感染症対策、かかりつけ医機能の評価など)

▽現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等を推進する(医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み、働き方改革に向けての取り組みの推進など)

▽安心・安全で質の高い医療の推進(食材料費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応、アウトカム評価の推進、小児医療・周産期医療など重点的な対応が求められる分野への適切な評価、病棟薬剤師業務の評価、医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価、医薬品の安定供給の確保など)

▽効率化・適正化を通じた医療保険制度 の安定性・持続可能性の向上(後発医薬品の使用促進、長期収載品等の在り方見直し、費用対効果評価制度の活用など)

2024年度診療報酬改定基本方針における「基本的視点・具体的方向性」の案

費用負担者委員は「医療従事者の処遇改善は、医療機関の中での財源配分問題」も指摘

医療保険部会では、猪口雄二委員(日本医師会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)らが、基本認識の第1項目目に「物価高騰や人件費高騰への対応」が位置づけられた点を高く評価。池端委員は「保険医療機関の収入の大部分は診療報酬、つまり公定価格であり、物価や人件費の増加を価格に転嫁できない。このため他業種の賃金増に追いつかず、すでに人材不足が深刻な状況になっている。十分な賃金増を可能とする診療報酬上の対応を行うべき」と強く要請しました。

これに対し、費用負担者代表である佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「基本認識の最初に『物価高騰』などが位置づけられている点に違和感を覚える。これまで物価上昇がない中でもプラス改定が行われてきた点を考慮すべきである」「医療従事者の賃金アップは、本来は院内で対応すべき問題である」などと反論しています。

また、高齢者代表である兼子久委員(全国老人クラブ連合会理事)は「診療報酬の引き上げは患者負担増につながる」とし、経済的弱者の医療アクセスが阻害されないような対応を要望しています。

他産業並みの人件費増のためには「相当の診療報酬プラス改定が必要」と医療サイド

他方、医療部会でも加納繁照委員(日本医療法人協会会長)や神野正博委員(全日本病院協会副会長)らが、基本認識の第1項目目に「物価高騰や人件費高騰への対応」が位置づけられた点を高く評価しました。ただし、より具体的な方向を示す「基本的視点・具体的方向性」では「物価高騰や人件費高騰への対応」の内容が薄れてしまっているとし、「より明確に物価高騰や人件費高騰への対応を行うべきとのメッセージを示してほしい」旨の注文をつけています。この点、山崎學委員(日本精神科病院協会会長)は「2桁のプラス改定をしてもらわなければ、他産業並みの賃金増などが実現できない」と、神野委員は「3%の人件費増を賄うだけで、単純計算で2.19%のプラス改定が必要になる」と訴えており、城守国斗委員(日本医師会常任理事)も「確実に処遇改善が実現できるような診療報酬改定を行うべき」と強調しています。

一方、経済界を代表する井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)は「企業の賃上げは、イノベーションの推進や生産性向上など『経営の合理化』とセットで実現できている点を理解しなければならない」、「基本方針は2024年度改定のみならず、中長期的視点を持つべきである。物価高騰の影響は、医療界だけでなく、全産業・全国民に及んでいる点も考慮すべき」とコメントしています。

ただし、上述のように公定価格の縛りを強く受ける保険医療機関等では「コスト増を迅速に価格に上乗せすることは制度上できない」点への配慮も必要でしょう。

このほか、「救急患者を地域・在宅に円滑に戻すために回復期機能の強化を図るべき」(泉並木委員:日本病院会副会長)、「給食継続のために、別建て財源を確保するなどの対応を行うべき。30年来、入院時食事療養費は引き上げられていないが、街のレストランで30年同じ価格のところはない」(山崎學委員)、「病院薬剤師の確保に向けた評価充実を図るべき」(山口育子委員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「病棟・外来・訪問看護ステーションの看護師が連携し、重症化防止に努めることを高く評価すべき」(井伊久美子委員:日本看護協会副会長、香川県立保健医療大学学長)、「2024年度には診療報酬と介護報酬等との同時改定であり、医療・介護連携等を強く意識すべき」(佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長、都竹淳也委員:全国市長会、岐阜県飛騨市長)、「改定基本方針が、具体的な点数にどう反映されたのか検証してほしい」(小熊豊委員:全国自治体病院協議会会長)との意見が出されています。



なお、Gem Medでも報じているとおり、診療報酬改定論議は▼改定の基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。改定率についての要望が出ていますが、「どの程度の財源を、どの政策に充てるか」という国全体の予算編成論議の中で決定される事項であり、「物価高騰対応、人件費高騰対応」にどの程度の配慮がなされるのか今後の動きに注目する必要があります。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

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