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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「意味のある医療・介護連携」が重要、「サービス担当者会議への出席」などを機能強化加算等の要件に据えるべきか—中医協総会(1)

2023.10.20.(金)

高齢化が進展し、医療・介護の双方のニーズを抱える高齢者が増加していく中では「医療・介護連携」がますます重要になる。その際、「意味のある、真の連携」が求められるが、例えば、かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料・加算や機能強化加算において「介護保険のサービス担当者会議への出席」などを義務化することをどう考えるか—。

高齢者施設と医療機関との連携をますます強化していく必要があり、その役割を担う医療機関としては「在宅療養支援病院・診療所」や「地域包括ケア病棟を持つ中小病院」などが相応しいと考えられる。こうした医療機関には、これまで以上に「往診対応」や「入院対応」の充実・強化を求めてはどうか—。

10月20日に開催された中央社会保険医療協議会・総会でこういった議論が行われました。同日の中医協総会では「訪問看護」も議題に上がっており、別稿で報じます。

地域括診療料・加算取得の要件に「介護保険のサービス担当者会議出席」など求めるべきか

2024年度の診療報酬改定は、「介護報酬」「障害福祉サービス等報酬」との同時改定になるため、「医療・介護・福祉の連携強化」が重要論点の1つとなります。

このため同時改定に向けて、中医協と社会保障審議会・介護給付費分科会との意見交換会が今春(2023年春)に開かれ、▼地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携▼高齢者施設・障害者施設等における医療▼認知症▼リハビリ・口腔・栄養▼人生の最終段階における医療・介護▼訪問看護—などに関する課題や方向性を共有し、例えば、医療サイドは「患者の生活」という視点を、介護サイドは「医療」の視点をより強く持ち、医療・介護双方のニーズを抱える高齢者に、切れ目のないサービスを連携して提供していくことが非常に重要である点が確認されています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。



10月20日の中医協総会では厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨医療会長が、その中から(1)主治医とケアマネジャーとの連携(2)高齢者施設における医療提供(3)障害福祉サービスと医療との連携(4)訪問看護—を抽出し、中医協委員に議論を要請しました。このうち(4)の訪問看護については別稿で報じます。

まず(1)の主治医・ケアマネ連携は、医療サイドが「患者の生活」という視点を持つこと、介護サイドが「医療」の視点を持つことのベースとなり、例えば▼要介護認定(介護保険サービス利用の入り口)において「主治医意見書」が必須の要素となる▼かかりつけ医機能を評価する【機能強化加算】では「保健・福祉サービスに係る相談に応じること」が、同じく【地域包括診療料】【地域包括診療加算】では「介護保険制度の利用等の相談への対応、主治医意見書の作成」などが要件となっている▼医療側の「介護連携」として「主治医意見書作成」を【地域包括診療料】【地域包括診療加算】取得の有無にかかわらず、ほとんどの医療機関で実施されている▼ケアマネサイドは主治医意見書を取得した医師に対してケアプランを提示している—などの取り組みが進んでいます。

機能強化加算(初診料の加算)では、介護保険主治医意見書作成などが求められている(中医協総会(1)1 231020)

地域包括診療料・加算では、介護保険主治医意見書作成などが求められている(中医協総会(1)2 231020)



ところで、ケアマネ・介護保険利用者(要介護者やその家族)は「主治医に意見書作成にとどまらず、サービス担当者会議等に出席してほしい」との希望を持っていることが分かっています。サービス担当者会議は、ケアマネを中心に、利用する介護サービスのスタッフや利用者・家族が参加し、ケアプランの詳細やサービス提供に当たって必要な留意事項などの情報を共有し、意見を交換する場です。より良い介護サービス提供にとって極めて重要で、ここに主治医が参加することで▼利用者・家族が「チームによる支援」を感じる場となる▼軽度者ほど、現実を直視できる場となる▼客観的な立場からの評価が得られる▼主治の医師、医師それぞれの役割が明確になる▼外来医療の情報は宝の山であり、意思決定支援の初め一歩となる—と期待されます。

ケアマネは主治医のサービス担当者会議への出席に期待している(中医協総会(1)3 231020)



しかし、「サービス担当者会議への主治医の参加」状況を見ると、地域包括診療料・加算取得施設でも54.0%、取得していない施設では33.9%にとどまり、また「ケアマネとのケアプラン策定等に係る相談時間の確保」は同じく53.5%、31.9%にとどまるなど、必ずしも十分には進んでいないようです。

医療サイドのサービス担当者会議への出席は低調である(中医協総会(1)4 231020)



このため、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「主治医意見書の作成は介護保険利用のために必須の要素である。真の連携とも言える『サービス担当者会議への参加』や『ケアマネからの相談対応』などを進めるため、地域包括診療料・加算等において、そうした取り組みを要件化してはどうか」と提案しました。

しかし、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「形だけではない、意味のある真の医療・介護連携が重要である」点では松本委員に同意したものの、「例えば『サービス担当者会議への出席』は、意味のある連携の1形ではあるが、それ以外にも様々な『意味のある連携』の形がある。現在、サービス担当者会議への医師出席はほぼボランティアであり(介護場所に医療機関会議室を無償提供するケースも少なくない)、そうした中でも対応している医師が少なからずいる点はきちんと評価してほしい。様々な形の『意味のある連携』が工夫・実施されている点に鑑みれば、『サービス担当者会議への参加』や『ケアマネからの相談対応』の要件化は好ましくない」と反論しています。今後、「かかりつけ医機能の評価」全体を議論する中でも詰めていくことになりそうです。



なお、情報連携に関して、ケアマネサイドは「ケアプランを主治医意見書作成医師に提出したが、それが診療に活用されていない、活用されているか不明である」との不安も抱えています。

主治医へのケアプラン提出をしても、活用に不安を覚えるケアマネが多い(中医協総会(1)5 231020)



診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「ケアマネ側には『十分に情報連携したいが医師が応えてくれない』との、医療側には『けあまねから十分に情報提供がない』との声が出ている。双方の情報を蓄積し、そこに必要な情報を取得するといった仕組みを考えるべきではないか」と提案。また同じく診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も「情報連携を進めるためには統一の書式、統一のシステム等の導入を考えてはどうか」と同趣旨を提案。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)や鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も「ICTを活用した医療・介護連携」に期待を寄せています。

この点、厚労省は健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」において、「医療・介護情報連携を推進するための制度上、技術的な課題の整理」を進めています。例えば「どういった情報項目を医療・介護の双方が欲しているのか」のヒアリングから始め、「連携対象とする項目にはどのようなものがあるのか」「情報連携の仕組みをどう考えるか」などの具体的な議論が行われています(関連記事はこちら)。

医療・介護情報連携システムが医療・介護現場に実装されるまでには少し時間がかかると思われますが、サービスの質が大きく向上することでしょう。



今後、より具体的に「主治医・ケアマネ連携を進めるための診療報酬上の手当て」を練っていきますが、介護サイドには「医療へ物申すのは敷居が高い」と感じる部分が依然として少なくないようであり、医療サイドから、これまで以上に「介護担当者に近づき、寄り添っていくいく」(サービス担当者会議への参加や、ケアプランを活用した医療情報のケアマネへの提供など)ことに期待が集まります。

高齢者施設の協力医療機関、在支病・診や地域包括ケア病棟を持つ中小病院が中心であろう

また(2)では「医療機関と高齢者施設等とが連携し、施設入所者等が医療が必要な状態になった際に、速やかに、かつ適切に対応できる」体制構築を目指す論点と言えます。

介護保険施設等では、施設類型によって▼医師が常勤しており、相当程度の医療は施設内で行うことが求められる(介護医療院や介護老人保健施設など)▼一定の医師等配置がなされおり、一定の医療は当該医師が対応することが求められる(特別養護老人ホームなど)▼医療従事者が配置されおらず、必要な医療は外部医療機関等から提供してもらう(特定施設など)—などの規定がなされています。

また、いずれの施設でも「協力医療機関を持つ」ことが求められています。医師が常勤している施設であっても「当該医師の手に余る状態」になった場合に、速やかに必要な医療提供を行うためです。この点、新型コロナウイルス感染症対策の中で「平時から医療機関と高齢者施設等が連携し顔の見える関係を構築しておくことが、極めて重要である」と確認されたことは述べるまでもないでしょう。

しかし、医療機関と高齢者施設等との連携関係を見ると、次のような課題もあります。

▽一部の高齢者施設では「特定機能病院」を協力医療機関としている(緊急時の往診対応などに不安がある、関連記事はこちら

▽「病院と施設の関係者での定期的に会議」などの連携関係が十分でない施設もある(上述した長島委員の指摘する「形だけの連携」に終わっている可能性大、関連記事はこちら

介護医療院等と併設医療機関との連携関係3(中医協総会(1)8 231020)



▽施設入所者の急変時における「主たる協力病院」の外来・入院対応は、平日日中では「受けてくれる」が多いが、夜間休日では低くなり、また「併設病院でない」場合には必ずしも十分とは言えなくなる(同じく「形だけの連携」に終わっている部分もあると考えられる、関連記事はこちら

介護医療院等と併設医療機関との連携関係1(中医協総会(1)6 231020)

介護医療院等と併設医療機関との連携関係2(中医協総会(1)7 231020)



こうした状況を踏まえると、医療機関・高齢者施設間で「より意味のある、真の連携」構築の必要性が高いと考えられます。

この点については、「高齢者施設の協力医療機関については、特定機能病院などではなく、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟をもつ中小病院等を中心に考えるべきではないか。また協力医療機関による『平時からの情報連携』などへのインセンティブも考慮する必要がある。さらに、協力関係がない施設から要請を受けて往診を行う場合、『ACP対応』『複数の併存疾患への対応』など非常に多くの苦労が生じるため、報酬上の評価(通常の往診よりも高い点数の設定)などを考えていくことも重要である」(長島委員)、「在支病・診や地域包括ケア病棟を持つ中小病院と、高齢者施設等とが日頃から連携し、介護サイドから気軽に声かけできるような環境を構築していくことが重要である。診療報酬・介護報酬の双方からの手当てが必要である」(江澤委員)、「施設サイドの求める相談対応・緊急往診・入院などに対応できる在支病・診や地域包括ケア病棟を持つ中小病院との連携が重要である。平時からの連携関係が構築されていれば、安易な救急搬送も減ると期待できる」(池端委員)、「施設との連携は、在支病・診や地域包括ケア病棟を持つ中小病院の役割であろう。なお、在支病などでも往診・入院対応などは必ずしも十分に行われていないようであり(下図表参照)、今後、施設支援機能を施設基準に盛り込むことなども考えていく必要がある」(松本委員)といった声が出ています。診療側・支払側ともに類似の意見を述べており、具体的な見直し方向が見えてきそうです。

地域包括ケア病棟を持つ病院でも、往診対応などが必ずしも十分にはできていないようだ1(中医協総会(1)9 231020)

在宅療養支援病院でも、往診対応などが必ずしも十分にはできていないようだ2(中医協総会(1)10 231020)



また、(3)の障害者施設・医療機関連携に関しては、▼個々の入所者に必要な医療は異なっており、全体に必要な医療提供が可能となるような給付調整の仕組みを考えていくべき(長島委員)▼感染対策向上加算の枠組みを活用・拡大して、平時からの障害者施設・医療機関連携を推進すべき(江澤委員)▼入退院支援加算において「地域連携部門の業務」の1つに障害者施設との連携を明示するなどして連携を促してはどうか(松本委員)—といった提案が出ています。



介護報酬等での対応が必要となる意見(高齢者施設の協力病院要件など)も出ており、介護給付費分科会での議論にも注目が集まります。



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