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診療所の良好な経営状況に鑑み、2024年度診療報酬改定では「診療所は5.5%のマイナス改定」が妥当!―財政審建議

2023.11.21.(火)

財務省の財政制度等審議会(以下、財政審)が11月20日、来年度(2023年度)予算編成等に関する建議をまとめ、鈴木俊一財務大臣に提出しました(財務省のサイトはこちら)。

財政健全化の必要性がこれまで以上に高まっている中で、診療所経営が良好であるとのデータをもとに「診療所の診療報酬を5.5%引き下げる(マイナス改定とする)」べきなどと提言しています。

診療所の経営状況は良好であり、今後も継続する可能性が高い

建議ではまず、「巨額の政府債務残高を抱える中で金利が上昇すれば、財政運営に支障を来すおそれがあり、我が国の事業会社や金融機関などの資金調達にも悪影響を及ぼし得る」とし、「物価高などの足もとの課題への対応」は必要であるが、経済が平時化する中にあって「歳出構造を平時に戻し、財政を健全化していくことは当然」であると強調。このために、医療・介護をはじめとする社会保障改革を進めていく必要性を訴えました。

医療保険制度、介護保険制度においては財源の25%が国費である(関連記事はこちら)ことから、「医療費・介護費の増加」→「その25%に相当する国費支出の増加」→「国家財政の圧迫」につながっていると指摘され、そこで財政制度分科会では、「国家財政を健全化させる(端的に「入り」を増やし、「出」を抑える)ために、医療費や介護費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」方策の検討を進め、提言を行っているのです。

まず、来年度(2024年度)の診療報酬改定に関しては、改めて次のような点をあげて「診療所の経営状況は極めて良好である」と指摘。診療所の診療報酬について、国民負担を極力抑制する観点を考慮し「5.5%のマイナス改定」を行うよう提言しました(診療所の経常利益率(8.8%)と全産業・サービス産業平均の経常利益率(3.1-3.4%)の差をマイナス調整する)。

▽診療所の経常利益率は過去2年間で3.0%→8.8%へ急増(収益:12%増、費用:6.5%増)、診察を縮小している診療所を除くと経常利益率は更に高くなるとの指摘がある
→この利益剰余金は「看護師等の現場従事者のプラス3%の賃上げ」に必要な経費の約14年分に相当する

▽消費者物価指数が約3%上昇したでも、「収益の増加」>「費用の増加」となり、経常利益率も7.4%から8.8%へと上昇している

財政審2 231101



▽診療所の収益率は、病院よりも一貫して高い傾向にある

財政審3 231101



▽法人登記が古い医療法人ほど経常利益率が低くなる。これは「設置者である医師が内部留保を給与の形で取り崩している」ためであり、診療報酬改定の根拠とされてきた医療経済実態調査では、この内部留保取崩しによる経常利益率低下を看過して診療報酬引き上げをしてきていると考えられる

財政審4 231101



▽診療所の直近の経常利益率(8.8%)は、コロナ禍の高密度診療(コロナワクチン接種、コロナ検査等)は少なくとも2年間(2024年度改定の対象期間)継続すると考えられる

▽診療所の単価(1受診当たり医療費)は診療報酬のコロナ特例等の一時的要因を除いても過去3年間「物価上昇率を上回る」ペースで継続的に上昇しており、こうした単価増の傾向は今後2年間継続する可能性がある



あわせて、▼医療従事者の処遇改善に向けて、医療法人の利益剰余金(1法人当たり1億2400万円)の活用、強化される賃上げ税制の活用、その他賃上げ実績に応じた報酬上の加算措置などを検討していく▼診療所の地域間の偏在への対応として、将来的に地域別の報酬体系への移行を視野に入れつつ、当面の措置として「診療所過剰地域における1点単価(10円)の引き下げを施行し、それによる公費節減等の効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化する—ことも提案。

ほかに、▼リフィル処方箋の推進(積極的な取り組みを行う保険者へのインセンティブ措置、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みなど)▼看護職員等の処遇改善の検証▼10:1急性期入院料を廃止し、回復期への転換を促す▼処方箋集中率が高い薬局等について調剤基本料1の適用範囲等を見直す▼「医薬品のイノベーション評価の観点からの見直し」と「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し」とをセットで実施する▼毎年度薬価改定を完全実施する(現在は乖離率の大きな品目に限定)▼医療DXによる医療費適正化の推進(重複投薬、重複検査等の適正化)—などを実行するよう強く求めています。



また介護報酬改定については、「介護費用が高齢化等で毎年増加する中、介護報酬改定においては、必要な介護サービスを提供しつつ、国民負担を軽減する観点から、報酬の合理化・適正化等を進めていく必要がある」と指摘。

改定に当たっては、▼現役世代の保険料負担増等を最大限抑制する▼労働力の確保が課題となる中、テクノロジーの導入・活用促進や人員配置基準の柔軟化を強力に進めていく▼ICT機器の活用や、経営の協働化・大規模化を推進することで、限られた介護人材のリソースを有効に活用し、生産性を向上させる▼人材紹介会社の規制を強化する—ことなどを改めて強調しています。

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さらに、介護事業所の経営状況については、「特別費用(事業所から本部への繰り入れ)を除けば、収支差率は4.7%で、中小企業全体の水準(3.3%)を上回っている」ことを指摘(つまり、中小企業全般よりも介護事業所のほうが経営状況が良好である)。ここから「介護報酬の適正化・効率化」を徹底して図るべきとも提案しました。

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改定率は内閣が12月中下旬の予算案編成過程で決定し、改定内容は中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・介護給付費分科会で検討が進められます。こうした決定・検討に向けて、今般の建議がどういった影響を及ぼすのか、今後の議論の行方を注視する必要があります。

医療費・介護費は、何らかの形(保険料、税、一部負担)で我々国民が負担しなければなりません。▼医療技術の高度化▼高齢化の進展—などにより医療・介護費が増加を続ける一方で、支え手となる現役世代は急激に減少していくため、「医療・介護などの支出を抑えながら、負担(保険料や自己負担)水準を上げていかなければならない」ことは、火を見るよりも明らかです。そうした現実も見ながら、今後の社会保障制度を考えていくことが非常に重要です。



Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは2024年度の診療報酬改定の議論と対策を考える「WEBセミナー」(本年(2023年)10月から来年(2024年)3月頃、24時間・365日何度でも視聴可)も開催しております。是非、あわせてご活用ください。



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