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診療所経営は極めて良好、2024年度改定で診療所点数を適正化し「看護職員等の処遇改善」財源を生み出せ―財政審

2023.11.6.(月)

診療所の経営状況は極めて良好である点等を踏まえ、2024年度の次期診療報酬改定では「診療所の報酬単価を引き下げる」ことなどによって「医療従事者の処遇改善」などの課題に対応するとともに、診療報酬本体を「マイナス改定」とすることが適当である—。

11月1日開催された財政制度等審議会・財政制度分科会において、財務省がこうした提案を行いました(財務省サイトはこちらこちら(参考資料))。

これに対し日本医師会では、「診療所の利益率上昇は、新型コロナウイルス感染症対応(ワクチン接種対応、発熱外来対応等)による一過性のものに過ぎない」と反論しています(日医のサイトはこちら)。

診療所の経営は極めて良好、「看護職員等処遇改善」財源を診療所点数適正化で生み出せ

「医療技術の高度化」が進むことで、医療費が高騰していきます。脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。

同時に「高齢化の進展」による医療費高騰も続きます。ついに昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢者になれば傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長くなること、介護ニーズが高まることから、高齢者の増加は「医療費の増加」「介護費の増加」を招きます。

医療保険制度、介護保険制度においては財源の25%が国費である(関連記事はこちら)ことから、「医療費・介護費の増加」→「その25%に相当する国費支出の増加」→「国家財政の圧迫」につながっていると指摘されます。

そこで財政制度分科会では、「国家財政を健全化させる(端的に「入り」を増やし、「出」を抑える)ために、医療費や介護費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」方策の検討を進め、提言を行っています。

11月1日の財政制度分科会では、財務省から社会保障改革、とりわけ2024年度の診療報酬・介護報酬改定に向けた考え方が示されました。

まず診療報酬改定については、例えば次のような根拠をあげて「診療所の経営状況は極めて良好である」と指摘し、▼「診療所の報酬単価を引き下げる」ことなどによって「医療従事者の処遇改善」などの課題に対応する▼診療報酬本体を「マイナス改定」とする—ことが適当と提案しています。

▽過去20年間、医科診療所(入院外)における1受診当たり医療費は、物価上昇率が低迷する中でもほぼ一貫して増加してきた。とくに2019-22年度にかけては「年間プラス4.3%」と、近年増加傾向にある物価上昇率(年間プラス1.02%)を大幅に超えた水準で急増している(受診していない者も含めた国民1人当たりの医療費は年間プラス3.8%の増加)

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▽診療所の経常利益率は過去2年間で3.0%→8.8%へ急増(収益:12%増、費用:6.5%増)、診察を縮小している診療所を除くと経常利益率は更に高くなるとの指摘がある
→この利益剰余金は「看護師等の現場従事者のプラス3%の賃上げ」に必要な経費の約14年分に相当する

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▽診療所の収益率は、病院よりも一貫して高い傾向にある

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▽法人登記が古い医療法人ほど経常利益率が低くなる。これは「設置者である医師が内部留保を給与の形で取り崩している」ためであり、診療報酬改定の根拠とされてきた医療経済実態調査では、この内部留保取崩しによる経常利益率低下を看過して診療報酬引き上げをしてきていると考えられる

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これに対し日本医師会は「診療所の利益率上昇は、新型コロナウイルス感染症対応(ワクチン接種対応、発熱外来対応等)による一過性のものに過ぎない」と反論しています。

勤務医の働き方改革、公立病院改革などを推進せよ

また病院については、「看護配置が比較的小さい病棟でも、病床機能報告で「急性期」と報告しているケースがままある」といった問題点を指摘したほか、「勤務医の働き方改革を進める」「公立病院改革を進める」ことを提案しています。

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一方、調剤報酬に関しては、▼薬局における「対物業務→対人業務」を進めているが、表面上にとどまっている▼処方せん集中率が高い薬局への対応(低い基本料算定)が行われてたが不十分である▼敷地内薬局の誘致が過熱している—点への対応が必要としています。

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さらに訪問看護(医療保険)について、「介護保険のように区分支給限度基準額の概念がなく、ケアプランの作成も努力義務にとどまる」ために「歯止めが効いていない」(全体の1%強が月額60万円以上、最大値が116万円と高額)とし、「適正化」を行う必要性を指摘しています(関連記事はこちら)。

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また、薬価制度改革に関しては、「国民皆保険の持続可能性確保」と「イノベーション推進」の両立を目指し、▼毎年薬価改定の「完全実施」が必要である(現在は「乖離率の大きな品目」に限定した毎年度改定である)▼⾧期収載品に依存しない創薬開発型企業への転換を促す薬価制度へと改革していく▼後発医薬品の安定供給に向け薬価での対応も検討していく—ことなどを提案しました。

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このほか、医療制度に関して財務省は、▼医療法人の職種別給与・人数の把握、医療法人立以外の法人の経営状況の見える化を進めていく必要がある▼医療機関経営の実態を正確に把握し、それを診療報酬改定などに活かしていく必要がある(現在の医療経済実態調査にはサンプル数が少なく、バイアスがかかっているなどの課題あり)▼医療DXを着実に実施し、効率的な医療提供を行う必要がある—とも付言しています。

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介護報酬改定でも「国民負担の軽減」を意識した適正化が必要

介護報酬改定については、「介護費用が高齢化等で毎年増加する中、介護報酬改定においては、必要な介護サービスを提供しつつ、国民負担を軽減する観点から、報酬の合理化・適正化等を進めていく必要がある」と指摘しました。

改定に当たっての重要な視点として、例えば▼現役世代の保険料負担増等を最大限抑制する▼労働力の確保が課題となる中、テクノロジーの導入・活用促進や人員配置基準の柔軟化を強力に進めていく▼ICT機器の活用や、経営の協働化・大規模化を推進することで、限られた介護人材のリソースを有効に活用し、生産性を向上させる▼人材紹介会社の規制を強化する—ことを強調。

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また、介護事業所の経営状況については、「特別費用(事業所から本部への繰り入れ)を除けば、収支差率は4.7%で、中小企業全体の水準を上回っている」ことを指摘(つまり、中小企業全般よりも介護事業所のほうが経営状況が良好である)。ここから「介護報酬の適正化」が可能であるとの提案につなげています。

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このほか、▼サービス付き高齢者向け住宅等では、居住者に特定の事業者が集中的にサービスを提供している実態があり、ケアマネジメントの適正化などが求められる▼複雑化している加算について、重点化・整理統合を進める必要がある—など具体的な指摘も行っています。

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すでに、中央社会保険医療協議会などで議論が始まっている項目も含まれ、今後の議論の行方に注目する必要があります。

その際、重要となるのが「財務省が社会保障費の伸びを抑制する姿勢を極めて強く打ち出している」という点です。国の財政(=我々国民の財布)には限界があり「必要なので青天井に社会保障費を用意・支出できる」わけではありません。▼医療技術の高度化▼高齢化の進展—などにより医療・介護費が増加を続けます。一方、現役世代は急激に減少していくため、「支え手」(費用の支え手、サービスの担い手)が減っていきます。このため、「医療・介護などの支出を抑えなければいけない」「負担(保険料や自己負担)を上げていかなければならない」ことは、火を見るよりも明らかである点にも留意した議論が必要です。



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