NICUでも「2対1看護」を評価、小入管の「病室単位の取得」やハイリスク妊娠管理加算の拡大などを検討—中医協総会(4)
2023.12.5.(火)
診療報酬面でも「少子化対策」を進める必要があり、たとえば「小児入院医療管理料について病床単位の届け出や混合病棟でのユニット化などを検討する」「2対1看護の新生児特定集中治療室を評価する」「入退院支援加算3を実態に合わせて見直す」「ハイリスク妊娠管理加算の対象患者・算定可能日数を拡大する」などの対応を図ってはどうか—。
12月1日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした議論も行われました(同日の薬価・材料価格調査結果に関する記事はこちら、医療DX推進に関する記事はこちら、リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施に関する記事はこちら)。同日にはほかに「長期収載品の患者負担」「医療経済実態調査の評価」といった議論も行われており、これらは別稿で報じます。
目次
小児入院医療管理料、「病床単位の届け出」「混合病棟での小児ユニット設置」など検討
我が国では未曽有のスピードで少子高齢化が進んでおり、例えば「社会保障制度の崩壊」(財源の支え手、サービスに担い手が確保できなくなる)、「国家の崩壊」(国家として存続するために領土、国民、統治機構が必要である)といった大きな問題につながります。
そこで「少子化対策」が重視され、その一環として診療報酬面で「小児医療」や「周産期医療」をどう充実していくかも重要テーマの1つになります。
厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は、昨今の小児・周産期医療の状況に鑑みて、(1)小児入院医療(2)小児高度急性期医療に(3)医療的ケア児(4)小児科における児童精神医療(5)周産期医療—の5点について、どういった対応を図るべきか中医協に議論を要請しています。
(1)の小児入院医療については、まず「患者が減り続けている」という点への対応が求められています。
小児患者の入院医療を評価する【小児入院医療管理料】の届け出医療機関は横ばいですが、ベッド数、算定数は減少を続けており、結果、「1医療機関当たりの【小児入院医療管理料】の病床数」も減少しています。
そうした中では、「小児だけの病棟を維持する」ことが困難となり、「成人と小児との混合病棟」が増えています。混合病棟では「小児の成長発達に合わせた看護提供」や「小児にも成人にも対応できる看護職のチーム編成」が必要となります。
この点、医療現場では「混合病棟における小児患者にユニット化」が実践され、「子どもと家族が気兼ねせず安心して過ごすことができる」「ユニット内のスタッフを固定しチームとすることなどで、子どもと家族への継続的なケアを提供することが可能になる」といったメリットが期待されています。
こうした状況を踏まえて、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「例えば小児入院医療管理料3について『病床単位の届け出』を認めてはどうか」と提案。また支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も「子どもへの適切な療養環境を確保するためにユニットを進めるべきであろう。また小児患者減を受けて小児入院医療管理料の要件を見直す(病床単位の届け出など)余地がある。ただし、地域の医療ニーズを十分に踏まえ重点化・集約化(一部の病院に小児病棟を集約していく)を図っていくことも検討する必要がある」との考えを、木澤晃代専門委員(日本看護協会常任理事)は「少子化で小児患者が減る中で、多くの病院が小児・成人の混合病棟としており、小児の安心安全な療養環境確保のためにもユニット化・区域特定を推進する必要がある」との考えを示しています。
委員の考える方向は概ね一致していると言え、今後「病床単位での小児入院医療管理料届け出」や「混合病棟における小児病床のユニット化推進」などを具体的に詰めていくことになるでしょう。
小児入院医療管理料で「看護補助者配置」をどのように評価すべきか
また小児患者では精神が未発達なために「両親の付き添い」などが行われるケースも少なくありません。
この点、小児患者の療養環境をより良くするために「保育士の配置」を行う小児入院医療管理料病棟を評価する加算(注2加算:1日100点、注11加算:1日200点)が設けられていますが、「両親の負担を一定程度軽減する」効果があると見られています(一時的に保育士に世話などを依頼し、両親が休息をとるなど)。
一方、小児病棟では、多忙な看護師が「夜勤帯などに寝具交換や環境整備等の周辺業務を行う」割合が高い状況ですが、この背景には「看護補助者の配置を評価する加算が小児入院医療管理料では取得できない」という点も関係していると指摘されます。
このため「小児入院医療管理料病棟への看護補助者配置」は3割程度にとどまっており、看護職員から補助者へのタスク・シフトは困難な状況です。そこで木澤専門委員は「看護補助者配置などの評価」を要望。診療側の長島委員も「注2加算、注11加算にとどまらず、さらなる人員配置の評価も検討すべき」と提案しました。また支払側の松本委員も「看護職員のタスク・シフト推進のための看護補助者配置評価」に理解を示しましたが、「保育士配置と同様の評価は困難である」とも付言しています。
今後、具体的な評価内容の検討が進められます。
なお現在の医療保険制度では、かつての「患者負担による付き添い看護」(医療機関が、患者自身の費用で「付き添い看護」を行う者を雇用することを求め、清拭や介助などの業務を行ってもらう)は原則として認められていません。
また、患者に費用負担を求めない「家族等による付き添い」であっても、それらが「看護要員による看護を代替し、または当該医療機関の看護要員の看護力を補充する」ようなことは認められません。
こうした点への理解が医療現場に十分に浸透することにも期待が集まります(関連記事はこちら)。
NICUでも「2対1看護」を評価、入退院支援加算3を実態に合わせた見直し
低出生体重児(出産年齢の上昇などにより増加している)など、医療ニーズの極めて高い小児、乳幼児、新生児などに手厚い医療提供を行うために、新生児特定集中治療室(NICU)や小児特定集中治療室管理料(PICU)などの整備が進められています。
こうした医療体制の整備などにより低出生体重児や早期産児の死亡率は低下していますが、医療現場からは「NICUでは施設基準上、3対1看護が求められるが、実際にはより手厚い看護配置(2対1)が必要となっている。看護師の加配について診療報酬での手当てを行ってほしい」との声があります。例えば、成人の特定集中治療室を同様に「2対1看護」を求め、それに見合った点数を設定する(点数引き上げ)ことや、「看護師の加配」を加算で評価することなどが考えられそうです。
中医協では、「実際の手厚い看護体制を評価すべきである」(診療側の長島委員)、「実態に合わせて2対1看護配置の評価を検討すべきである」(支払側の松本委員)、「高水準な医療提供のためには2対1看護が必要である。あわせて専門的な知識・技術を持つ看護師の配置を推進するような評価も検討してほしい」(木澤専門委員)と委員の意見が一致しています。
今後、具体的な評価内容を詰めていくことになります。
このほか、▼小児患者の入退院支援に向けた取り組みを評価する【入退院支援加算3】について、「転院搬送された小児」「ユニットから小児病棟等を経て退院する小児」などにも算定可能な要件に見直す▼臓器移植患者では「移植前からの集中治療が必要で、ユニットの入室期間が長くなる」点を踏まえた算定可能日数を設定する—方向も概ね了承されています。
【入退院支援加算3】については、▼他院からの転院患者(小児)にをするためには、「転院前の医療機関で入退院支援加算3を算定した」ことが求められるが、そうでない小児患者にも十分な退院支援が必要である▼入退院支援部門への「5年以上の新生児集中治療経験を持つ看護師」配置が求められているが、退院支援で重要な経験は「新生児集中治療業務」だけでない—点を踏まえた要件見直しが検討されます。
発達障害児への対応などを診療報酬でどう支援していくか
また(4)では、発達障害を抱える児童の増加する一方で、適切な診断・治療を行える医師が限られていることから「発達障害の初診待ち」が大きな課題となっていることに注目が集まりました。
この点、支払側の松本委員は「小児患者へのかかりつけ医機能を評価する【小児かかりつけ診療料】の要件に、発達障害対応などを加えてはどうか」と提案しました。身近なかかりつけの医師が対応してくれることで、患者・家族の安心感が高まると期待する提案ですが、診療側委員はこの提案に反対。
他方、小児特定疾患カウンセリング料の算定制限について「柔軟化」(現在は月2回までであるが、より多くの算定を認める)を行うよう診療側・支払側ともに要望しています。1か月当たりの算定回数が増えることで、「診療待ちの患者・家族」にどこまで対応できるのか状況を注視する必要があるでしょう。
このほか、(3)(5)に関しては次のような見直し方向が概ね了承されています。
▽医療的ケア児の「入院受け入れに係る体制の整備」(在宅医療から入院医療への移行にあたっての十分な調整)が重要かつ有効であり、これを診療報酬で評価していく
▽ハイリスク妊娠管理加算について、▼算定対象外である「妊娠22週未満の患者」の入院・妊娠管理が一定程度行われている▼多くの患者で上限の「20日」まで算定がなされている—点を踏まえた見直し(対象患者の拡大、算定上限日数の延伸など)を行う
2026年度の診療報酬改定では「正常分娩の保険適用への対応」も検討されることになります。今後も診療報酬による少子化対策支援に期待が集まります。
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