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がん患者・非がん患者・小児患者の特性を踏まえた「身体的苦痛・精神的苦痛の緩和」を診療報酬でもさらに推進―中医協総会(4)

2023.11.27.(月)

末期がん患者や、がん以外の末期患者の身体的・肉体的苦痛を緩和・除去し、人生の最終段階を穏やかにすごすために「がん診療連携拠点病院の緩和ケア体制充実」「がん診療連携拠点病院と、それ以外の病院や在宅療養支援診療所などとの連携強化」「外来における疼痛緩和の充実」「非がん患者、小児患者の特性を踏まえた緩和ケアの実施推進」などを診療報酬面でもサポートしてはどうか—。

11月24日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした議論も行われています(同日の長期収載医薬品の患者負担見直しに関する記事はこちら、DPC制度改革に関する記事はこちら、医療経済実態調査結果に関する記事はこちら)。

緩和ケアにおいて「精神担当医」の役割が重要だが、がん診療連携拠点病院でも配置は不十分

2024年度の次期診療報酬改定に向けた議論が精力的に進められており、11月24日には「緩和ケア」が議題の1つにあがりました。がんはもちろん、がん以外にも心不全・呼吸器不全などの末期患者に対し、「身体的苦痛」の除去に加え「精神的苦痛・不安」の解消を進めることが非常に重要です。

厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は、次の3つのテーマを議論してほしいと中医協に要請しています。
(1)多様な苦痛に対応する緩和ケアの提供
(2)切れ目のない緩和ケアの提供体制
(3)非がん等の緩和ケア



まず(1)では、身体的苦痛のみならず「精神的苦痛・不安への対応」や「より専門的な疼痛緩和(緩和的放射線治療や神経ブロックなど)」を、すべてのがん患者に提供することを目指してはどうかというテーマです。

がん診療連携拠点病院の新指定要件(整備指針)では、例えば▼がん診療に携わる全ての診療従事者により、全てのがん患者に対し入院、外来を問わず日常診療の定期的な確認項目に組み込むなど頻回に苦痛の把握に努め、必要な緩和ケアの提供を行う▼がん患者の身体的苦痛や精神心理的苦痛、社会的な問題等の把握およびそれらに対する適切な対応を、診断時から一貫して経時的に行う—ことなどが求められています(関連記事はこちら)。

がん診療連携拠点病院の整備指針(指定要件)では緩和ケア提供を求めている(中医協総会(4)1 231124)



診療報酬でも【がん拠点病院加算】が設けられ、緩和ケア提供が要件に盛り込まれている(加算はがん診療連携拠点病院などを評価し、拠点病院では緩和ケア提供が要件となっている)ものの、緩和ケアチームによる精神的・身体的苦痛除去を評価する【緩和ケア診療加算】や【外来緩和ケア管理料】の取得は、それぞれ81.6%、71.2%にとどまっています。この背景には「人員(とりわけ専従・専任の精神担当医など)の確保が難しい」ことが挙げられています。

緩和ケア診療加算の概要と算定状況(中医協総会(4)2 231124)

外来緩和ケア管理料の概要と算定状況(中医協総会(4)3 231124)

緩和ケア診療加算等のハードル(中医協総会(4)4 231124)



また、医療技術の進展に伴い「緩和的放射線治療」や「神経ブロック」といった、より専門的な緩和ケア技術が浸透してきていますが、▼がん診療連携拠点病院「以外」の病院▼在宅療養支援診療所では、人員や設備などの関係から、「緩和的放射線治療」や「神経ブロック」緩和的放射線治療を「実施や利用できない、していない」ところが多いのが実情です。

緩和家的放射線治療について(中医協総会(4)5 231124)

腹腔神経叢ブロックについて(中医協総会(4)6 231124)



こうした状況の改善に向けて、眞鍋医療課長は次のような点を検討するよう中医協に要請しました。
(a)緩和ケアの提供に係る精神科の医師が果たしている役割を踏まえ、がん診療連携拠点病院等における評価のあり方をどのように考えるか

(b)緩和ケア提供を受けているがん患者の難治性がん疼痛に対する対応の実態等を踏まえ、質の高い緩和ケアの提供を推進する観点から、緩和的放射線治療や神経ブロックを必要に応じて実施できる体制の推進をどう考えるか

例えば(a)では「専従・専任の精神担当医などを配置し、多職種チームで緩和ケアを実施する」がん診療連携拠点病院などに新加算を設けることや、(b)では「がん診療連携拠点病院等と連携し、緩和的放射線治療や神経ブロックを必要に応じて実施できる体制を確保する病院や在宅療養支援診療所」などに新加算を設けることなどが考えられそうです。



この点については、「(a)について、精神担当医の配置が緩和ケアの充実に重要であるが、地域がん診療連携拠点病院・地域がん診療病院では過半数(50.5%)で、都道府県がん診療連携拠点病院でも41.2%で配置ができておらず、報酬上の評価は時期尚早ではないか。(b)について、まずがん診療連携拠点病院での緩和的放射線治療や神経ブロック実施体制を強化すべきではないか」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「(a)について、がん診療連携拠点病院では精神担当医の配置が努力義務となっており、配置が促進されるような対応を検討してはどうか。(b)について、高点数のがん拠点病院加算において『麻薬対応』『精神、心理的苦痛への対応』『緩和的放射線治療や神経ブロック実施体制の整備』などを要件化してはどうか」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)といった意見が出ています。

診療側・支払側ともに、がん拠点病院加算について、「がん診療連携拠点病院である」だけでなく、さらに上乗せの要件を求めるべきと進言していると考えられますが、「がん診療連携拠点病院等の指定要件(整備指針)」とも絡めた議論が必要になってくるかもしれません。

「精神面にも配慮した緩和ケアを進めるべき」「より専門的な緩和ケア医療体制を構築すべき」との方向性に診療側・支払側ともに異論はなさそうですが、「診療報酬での評価」については少し工夫・検討が必要なようです。

外来化学療法においても「疼痛緩和、不安除去」などを推進する方策を検討

また(2)では、例えばがん患者について「診断時から末期まで、その時々に応じた苦痛(精神的、身体的苦痛)に切れ目なく対応する体制を構築する」というテーマです。

この点、上述のようにがん診療連携拠点病院では「緩和ケア体制の充実」が指定要件となっていますが、がん患者の半数は「拠点病院以外」で初回治療を受けており、「拠点病院以外の病院」における緩和ケア体制の充実が求められていると言えます。この点、「緩和ケア体制の充実した拠点病院」と拠点病院以外とが連携することが有用ではないかと考えられます。

半数のがん患者は、がん診療連携拠点病院「以外」でがん診断などを受ける(中医協総会(4)7 231124)

がん診療連携拠点病院と、それ以外病院との精神症状に関する連携例(中医協総会(4)8 231124)

がん診療連携拠点病院と、それ以外病院とのICTを活用した緩和ケア提供例(中医協総会(4)9 231124)



また、がん治療の3本柱(手術、化学療法、放射線治療)の1つである化学療法については「外来への移行」が進められ、2022年度の前回改定で【外来腫瘍化学療法診療料】が創設。患者の不安などに寄り添った外来がん化学療法の浸透に期待が集まり、2024年度改定でも重要な論点の1つとなっています(関連記事はこちら)。

しかし、外来腫瘍化学療法診療料を取得する医療機関でも、▼緩和ケア研修を受け、緩和ケアを実施する医師が、WHO方式のがん性疼痛の治療法に従って、副作用対策等を含めた計画的な治療管理・指導を行うことを要件とする【がん性疼痛緩和指導管理料】を取得していないところがある▼【がん患者指導管理料】の「ロ」(医師、看護師、公認心理師が心理的不安を軽減するための面接を行う)や【外来緩和ケア管理料】(疼痛緩和のために麻薬が投与されている患者へ、医師、看護師、薬剤師等が共同して療養上必要な指導を行う)の取得割合は低い—ことが分かっています。

外来腫瘍化学療法診療料を取得する病院でも、緩和ケアは十分とは言えない(中医協総会(4)10 231124)

がん性疼痛緩和指導管理料の概要と算定状況(中医協総会(4)11 231124)

がん患者指導管理料「ロ」の概要と算定状況(中医協総会(4)12 231124)

外来緩和ケア管理料の概要と算定状況(中医協総会(4)13 231124)



こうした状況を踏まえ、眞鍋医療課長は次のような点を検討してほしいと中医協に求めています。

(a)治療期からの切れ目のない緩和ケアの提供を推進する観点から、外来腫瘍化学療法を実施している医療機関での「がん疼痛や心理的不安を軽減するための介入の評価」をどう考えるか

(b)がん診療連携拠点病院「以外」の医療機関に入院中のがん患者に対し、治療期からの切れ目のない緩和ケアを提供する観点から「ICT等を用いたがん診療連携拠点病院との連携」をどう考えるか

例えば(a)では【外来腫瘍化学療法診療料】の要件厳格化や、さらなる取り組みを行った場合の新加算創設などが、(b)では連携関係を評価する新加算創設などが思い浮かびます。



この点について診療側の長島委員は「(a)について、外来化学療法において疼痛緩和や他医療機関等の連携を評価することも考えられる。多職種連携においては『対面の会議』だけでなく、ICT利活用も重要である」との考えを、支払側の松本委員は「外来腫瘍化学療法診療料で『疼痛緩和』『不安軽減』などを要件化することを検討してはどうか。がん診療連携拠点病院と、それ以外の病院とのICT活用も念頭においた連携を進めてはどうか。転院を避けることなどができ、患者にも医療保険財政にも好ましい」との考えを示しました。

診療側と支払側とで、やや見解が異なっている((a)では診療側は新加算などを、支払側は要件化などを求めている)ため、今後、調整が進められることでしょう。

なお、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「疼痛緩和における医療機関と薬局との連携評価も検討してはどうか」と要請しています。

非がん患者・小児患者の特性踏まえた緩和ケアを推進

緩和ケアが必要な患者は「末期がん患者」に限りません。例えば「呼吸不全の患者」「心不全の患者」では、大きく身体的・精神的な苦痛を抱えており、その緩和が非常に重要となります。

このため眞鍋医療課長は次のような点を検討し、「より広い患者への充実した緩和ケア提供体制を構築してはどうか」と提案しています。

(a)緩和ケアを必要とする患者について、いかなる療養の場でも「充実した緩和ケア」を提供する観点から、「在宅『非がん』患者への麻薬による症状緩和」のあり方をどう考えるか

非がん患者にも麻薬使用がなされている(中医協総会(4)14 231124)

非がん患者へのオピオイド使用1(中医協総会(4)15 231124)

非がん患者へのオピオイド使用2(中医協総会(4)16 231124)

非がん患者へのオピオイド使用3(中医協総会(4)17 231124)



(b)小児における緩和ケアは対象となる疾患、臨床経過・必要なケアが成人の緩和ケアと異なることを踏まえ「小児の緩和ケアに対する評価」をどう考えるか

緩和ケア診療加算・小児加算の算定状況(中医協総会(4)18 2831124)

都道府県別に小児加算(緩和ケア診療加算の上乗せ加算)の算定状況にはバラつきがある(中医協総会(4)19 2831124)

小児緩和ケアに多職種チームが対応するケースもある(中医協総会(4)20 2831124)



この点については、「現場で実践されている取り組みを積極的に診療報酬で評価してほしい」(診療側の長島委員)、「非がん患者への麻薬使用の評価は、実態を見て丁寧に検討すべき。小児への緩和ケアは、その特性を踏まえた評価を検討すべき」(支払側の松本委員)などの意見が出されました。今後、詳細を詰めていくことになります。





なお、診療側の長島委員、支払側の松本真人ともに「診療報酬での対応にとどまらず、人材育成や医療機関間連携などを併せて進めていくことが緩和ケア提供体制の充実にとって必要不可欠である」と強調している点にも留意が必要です。



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