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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2024年度診療報酬改定の基本方針を決定、「医療人材の確保・働き方改革等の推進」重点課題に据える

2023.12.11.(月)

12月8日に開催された社会保障審議会・医療保険部会と同・医療部会で、2024年度診療報酬改定の基本方針案が了承されました。(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進(3)安心・安全で質の高い医療の推進(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上—の4本の柱が打ち立てられています。

●2024年度診療報酬改定の基本方針はこちらこちら(概要)

12月8日に決定された「2024年度診療報酬改定の基本方針」の概要



基本方針は近く中央社会保険医療協議会に報告されますが、武見敬三厚生労働大臣からの正式な諮問(「基本方針を踏まえて改定内容を検討せよ」との諮問)は年明け(2024年1月)に行われます。

12月8日に開催された「第172回 社会保障審議会 医療保険部会」

医療従事者全体の働き方改革、処遇改善が重要課題

2024年度の次期診療報酬改定に向けた議論が中央社会保険医療協議会を中心に佳境に入りつつあります(関連記事はこちら)。

すでに報じているとおり、改定内容(点数や要件、施設基準など)は中医協で議論し、最終決定されますが、かつて「中医協の権能が大きくなりすぎ、汚職事件が発生した」ことの反省を踏まえ、▼基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担が行われています(関連記事はこちら)。

12月8日の医療保険部会・医療部会では「基本方針」を了承しています。

2024年度改定の柱は、冒頭に示したように次の4本です。
(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
(3)安心・安全で質の高い医療の推進
(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上



重点課題である「人材確保・働き方改革等の推進」に関しては、▼医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み▼各職種が高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進▼業務効率化に資するICT利活用の推進、他長時間労働などの厳しい勤務環境改善に向けた取り組みの評価▼地域医療の確保・機能分化を図る観点から、労働時間短縮の実効性担保に向けた見直しを含めた必要な救急医療体制等の確保▼多様な働き方を踏まえた評価の拡充▼医療人材・医療資源の偏在への対応—といった具体的な方向性が示されています。

2024年度から「勤務医の時間外労働規制」がスタートし、勤務医の労働時間短縮に向けた取り組みはその後も継続していく必要があります。「勤務医の生命・健康の確保」を目指すものですが、同時に「地域医療の確保」(=医療提供量の維持・確保)も必須であり、このためには「医師から多職種へのタスク・シフティングを進めていく」が必要です。その際、多職種の業務負荷が過重になってはいけないので、多職種から別の多職種へのタスク・シフティングも進めていかなければなりません。このように「医療従事者全体の働き方改革」が必要かつ重要となるのです(関連記事はこちら)。

また、岸田文雄内閣の方針に沿って多くの分野・企業で「賃上げ」が進む一方で、医療・介護分野では収益の大部分が公定価格(診療報酬・介護報酬)で縛られていることから、他産業並みの賃上げは行えていません。このため給与の低い職種を中心に、「医療人材の他産業への流出」が進み、医療提供体制の確保が難しくなる事態も予想されます(関連記事はこちら)。

こうした事態を踏まえて「「人材確保・働き方改革等の推進」が2024年度診療報酬改定の重点課題に位置づけられています。

2024年度は医療・介護・福祉の同時改定、各サービスの連携強化も重要推進課題

また(2)の「地域包括ケアシステムの深化・推進、医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進」に関しては、▼医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進▼生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取り組み▼リハビリ・栄養管理・口腔管理の連携・推進▼患者の状態、必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価▼外来医療の機能分化・強化等▼新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取り組み▼かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価▼質の高い在宅医療・訪問看護の確保—が具体的な方向として示されています。

2024年度には診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の同時改定が行われるため、この点を強く意識した項目(例えばリハビリ・栄養管理・口腔管理の連携など)が目立っています。

さらに、上記(1)とも関連して「限られた医療人材で、増大する医療ニーズに対応しなければならない」ために、医療DXの活用、機能分化の推進による「効率的かつ効果的な医療提供体制の構築」も進められます。

物価高騰へ対応するために「入院の食費」について患者負担を引き上げ

3本目の柱である「安心・安全で質の高い医療」に関しては、▼食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応▼患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価▼アウトカムにも着目した評価の推進▼重点的な対応が求められる分野への適切な評価(小児医療、周産期医療、救急医療等)▼生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理・重症化予防の取り組み推進▼口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進▼薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価▼薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価推進▼医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等—といった項目があがっています。「医療の質向上」を強く意識した項目が並んでいると言えます。

このうち「食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応」としては、例えば「入院の食費」について患者負担を30円アップする方針が固められています(関連記事はこちら)。

少子高齢化が進む中で「医療保険制度の安定性・持続可能性」確保も重要課題

他方、(4)の「医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」に関しては、▼後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等▼費用対効果評価制度の活用▼市場実勢価格を踏まえた適正な評価▼医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進—といった項目を掲げるとともに、▼医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進▼患者の状態・必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価▼外来医療の機能分化・強化等▼生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理、重症化予防の取り組み推進▼薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進—を再掲しています。

「医療技術の高度化」が進むことで、医療費も高騰していきます。脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。

同時に「高齢化の進展」による医療費高騰も続きます。ついに昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめており、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招きます。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならないために医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、さらに今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

こうした点を診療報酬改定でも十分の考慮し「適正化できる部分」に焦点を合わせた対応も強力に推進されます。



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