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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

食材費等の高騰踏まえ、入院時の食費について「患者の自己負担」部分を1食につき30円アップ—中医協総会(1)

2023.12.8.(金)

昨今の食材費等急騰により医療機関での食事提供が困難となっている状況を踏まえて、「入院における食事療養」について「患者の自己負担部分を30円引き上げ」てはどうか—。

12月8日に開催された中央社会保険医療協議会総会で、こうした方針が了承されました。並行して進んでいる社会保障審議会・医療保険部会(12月8日開催)でも了承が得られており、「引き上げ内容は決定した」と言えるでしょう。

なお、この引き上げをいつ実施するのか(施行時期)については、12月中下旬の「2024年度予算案の編成過程」で決定されます。

なお、同日には2024年度の診療報酬改定「率」設定に向けた中医協意見が取りまとめられています。支払側から「プラス改定にする状況にない」との意見が、診療側から「プラス改定とせよ」との意見が出されています。今後、公益代表委員で両意見や薬価調査結果等を踏まえた「中医協の意見案」作成に入ります(その後、中医協で再度議論して意見をまとめ、武見敬三厚生労働大臣に宛てて「中医協議論を踏まえた対応を行ってほしい」との考えを伝える。厚労省は、この中医協意見も踏まえて年末に行われる鈴木俊一財務大臣との改定率決定折衝(2024年度予算案の編成過程で改定率等が決定される)に臨む)。

このほか同日の中医協総会では「診療報酬における書面要件のデジタル化(各種書面の電子データでの提出を認める)や「人生の最終段階における医療・ケアに係る適切な意思決定支援の推進」、「診療報酬の簡素化」、「生活習慣病対策」、「慢性腎臓病対策」、「医療従事者の処遇改善」なども議題に上がっており、別稿で報じます。

物価高騰等で病院の給食コストが急増し、食事提供で「赤字」が生じている

Gem Medでも繰り返し報じているとおり、入院時の食費(患者負担+保険給付の合計)事療養費は1994年以降、実質「据え置き」となっています(1994年に「1日:1900円」→1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)時に「1日:1920円」→2006年に「1食:640円」(1日3食とすれば1920円で同額))。

入院時の食費は「患者」と「医療保険」とで按分負担しており、患者の所得で按分状況が変わる(施設入所者の食費)を引き上げ(社保審・医療保険部会(1)2 231108)

入院時の食費の変遷(社保審・医療保険部会(1)3 231108)



一方、食事提供コストが大きく膨れ上がっていることから、病院の給食部門は「赤字」となっています。

この「赤字」を解消するため、中医協や社会保障審議会・医療保険部会において、厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の荻原和宏室長は「家計における食事支出や介護保険の食費も参照しつつ、入院時の食費を見直してはどうか」との提案を行っています(関連記事はこちら(医療保険部会)こちら(中医協))。

具体的には、入院時の食費は▼患者が食材費、調理費を負担する▼医療保険(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)が栄養管理費を負担する(入院時食事療養費)—という形での負担となっていると説明されていることから、昨今の食材費高騰を踏まえて「患者の自己負担」部分の引き上げが提案されています(保険給付部分は見直さない)。

12月8日の中医協総会では、荻原保険医療企画調査室から、次のような点を踏まえて「食材費等の高騰を踏まえた対応を行う観点から、入院時の食費を例えば30円引き上げてはどうか」との具体的な提案が行われました。1日3食をとった場合、▼1日では90円▼10日入院では900円▼30日入院では2700円▼90日入院では8100円—の患者負担増となります。

▽食材費をはじめとする物価の高騰、光熱水費の急騰、人件費の高騰により病院の食事提供コストは増加しており、「入院時の食費、1日1920円(患者負担+保険給付)」>「食事提供に係る医療機関の支出」(病院の給食事業者への委託費は2021年に1962円、2022年に1997円)となり、食事を提供するごとに病院の給食部門は赤字を生み出している2021年には1人・1日当たり42円の赤字、2022年には同じく77円の赤字)

▽家計調査や消費者物価指数から、食料費や食材費(食材の消費者物価指数)が2021年から22年にかけて大きく増加していることが分かる(現在は「食品値上げ」ラッシュなどでさらに食料費などが増加している可能性あり)

食材費の高騰が続き、病院の給食部門は赤字となっている(社保審・医療保険部会(1)1 231108)



▽介護保険における施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院など)入所者の食費に係る基準費用額(介護保険では食費は入所者自身が負担し、その標準額が定められている。施設・入所者の契約で増減することも可能だが、ほとんどは標準額が採用されている)は、現在「1食当たり約482円、1日当たり1445円」に設定されており、医療における入院患者の負担額(1食当たり460円)との間で「22円」の格差医が生じている

2021年度介護報酬改定で基準費用額(施設入所者の食費)を引き上げ(社保審・医療保険部会(1)4 231108)



この提案に対して中医協では、「物価が上がる中でも入院時の食費は30年間据え置かれており、もはや医療機関の経営努力だけでは食事提供が困難な状況に陥っている。食事は治療の一環であり、食事の質が下がれば、医療の質が低下してしまう。今回、患者負担部分をアップせざるを得ない状況であることを丁寧に周知する必要がある」(診療側の長島公之委員:日本医師会常任理事)、「病院団体では長きにわたって入院時の食費引き上げを要望してきた。低所得者への丁寧な対応・配慮も行いながら、食費アップを行ってほしい」(診療側の池端幸彦委員:日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)、「食材費アップに伴う患者負担増は致し方ない。食材費の上昇を踏まえたもので、保険給付分(栄養管理を評価する部分)には影響がないと認識している」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)、「物価上昇への対応は理解できる。ただし患者の生活にも影響を及ぼす見直しであり、引き上げ後の患者の声にもしっかりと耳を傾けてほしい」(支払側の佐保佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)といった具合に、「30円アップを了承」しました。



この点、入院患者や家族の中には「食費が上がった、なぜだ」と感じる方もおられるかもしれません。医療機関では患者・家族へ「食費増は物価等高騰を踏まえたものである」との説明を丁寧に行うことも重要です。あわせて、中医協では別に「入院時の栄養管理体制の充実」に関する議論も行われており、医療機関において「患者により充実した栄養管理を行う」ことで食費増に関する患者・家族の納得感向上に努めることも重要でしょう(関連記事はこちら)。



入院時の食事負担の在り方については医療保険部会でも並行して議論が進められています(中医協では「入院時の食費」全体を議論、医療保険部会で「患者負担」部分を議論)。同日開催の医療保険部会でも「患者負担を30円アップする」ことが了承され(中医協では「入院時の食費」を30円アップすることを、医療保険部会で「30円アップは患者負担の引き上げで対応する」ことを検討・了承するイメージ)、結果「入院時の食費について、患者負担を30円アップする(460円→490円など)」ことが決定した格好です。。



また、こうした「食費のアップ」をいつ実施するのか(施行時期)については、12月中下旬の「2024年度予算案の編成過程」で決定されます(関連記事はこちら(介護保険サービスの利用者負担2割の範囲拡大論議))。



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