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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

介護保険利用で「2割負担」となる高齢者、医療と介護の特性、利用控えなどに配慮して政治の場で範囲拡大を決定へ—社保審・介護保険部会

2023.12.8.(金)

介護保険利用で「2割負担」となる高齢者の範囲をどこまで拡大するか—。

この点については、2024年度の介護報酬改定(利用者負担にも一定の影響が出る)の内容も踏まえながら、「医療と介護の特性の違い」「負担増でサービス利用に支障が出ないか」などを勘案しながら、2024年度予算案を編成する「政治」の場で決定することとする—。

12月7日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、こういった点が了承されました。12月中下旬に2024年度予算案が決定されますが、その中で「いつから、年収●円以上の人に、新たに2割負担をお願いする」という内容が明らかになります。

介護報酬改定の内容・影響も踏まえて「2割負担の範囲」を予算案を編成する過程で検討

昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢者の増加は「要介護・要支援高齢者の増加」を意味し、結果「介護費の増加」を招きます。

その一方で、支え手となる現役世代人口は2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者・介護費」を支えなければならないために介護保険制度の制度基盤が極めて脆弱になり、今後も厳しさを増してきます(医療保険制度でも同様の構造にある)。

このため、介護保険部会で「保険制度の持続性・安定性の確保」に向けた議論が重ねられていますが、Gem Medで報じているとおり、昨年12月(2022年末)にまとめられた介護保険制度改革では、「給付と負担の見直し」(保険制度の持続性・安定性の確保方策)については、次のように「結論の先送り」がなされました。委員間で意見の隔たりがあまりに大きかったためです(関連記事はこちら)。

【早急に検討、遅くとも来夏(2023年夏)までに結論】
(1)高所得者の第1号保険料の負担の在り方
→国の定める標準段階の多段階化、高所得者の標準乗率の引上げ、低所得者の標準 乗率の引下げ等について検討を行うことが適当(具体的な段階数、乗率、低所得者軽減に充当されている公費と保険料の多段階化の役割分担等について、次期計画(2024年度からの第9期計画、以下同)に向けた保険者(市町村)の準備期間等を確保するため、早急に結論を得る)

(2)「一定以上所得」の判断基準
→「一定以上所得」(2割負担)の判断基準について、 後期高齢者医療制度との関係、介護サービスは長期間利用されること等を踏まえつつ、高齢者の方々が必要なサービスを受けられるよう高齢者の生活実態や生活への影響等も把握しながら検討を行い、次期計画に向けて結論を得ることが適当

(3)多床室の室料負担
→介護老人保健施設・介護医療院の多床室の室料負担の導入について、在宅でサービスを受ける者との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等、これまでの本部会における意見を踏まえつつ、介護給付費分科会において介護報酬の設定等も含めた検討を行い、次期計画に向けて結論を得る

【第10期計画期間の開始までの間(つまり2026年度まで)に結論】
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
→利用者やケアマネジメントに与える影響、他のサービスとの均衡等も踏まえながら、包括的に検討を行い、第10期計画期間の開始までの間(つまり2026年度中)に結論を出すことが適当

(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
→介護サービスの需要が増加する一方、介護人材の不足が見込まれる中で、現行の総合事業に関する評価・分析等を行いつつ、第10期計画期間の開始までの間(つまり2026年度中)に、介護保険の運営主体である市町村の意向や利用者への影響等も踏まえながら包括的に検討を行い、結論を出すことが適当

【将来の検討課題】
(6)被保険者範囲・受給権者範囲
→、介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当

(7)補足給付に関する給付の在り方
→補足給付に係る給付の実態やマイナンバー制度を取り巻く状況なども踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当

(8)「現役並み所得」の判断基準
→「現役並み所得」(3割負担)の判断基準については、医療保険制度との整合性や利用者への影響等を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当



このうち(1)(2)については、骨太方針2023(経済財政運営と改革の基本方針2023)で「本年(2023年)末までに結論を得る」こととされ、(1)の「高所得者の第1号保険料の負担の在り方」については、11月6日の介護保険部会で、2024年度から▼高所得者の保険料をより高く設定し、そこで生まれる保険料増収分を低所得者の保険料軽減に充てる▼これまで低所得者の保険料軽減に充てていた公費の一部を「介護保険制度の充実」に振り替える—方針が固められました。

一方、(2)の「2割負担を求める高齢者の範囲」については、「介護保険制度の持続性確保、現役世代の負担抑制、世代内の負担の公正性(負担能力に応じた負担)から拡大を進めるべき」との意見と、「利用料が増加することで介護サービスを受けられずに状態が悪化し、結果、重度者増→介護費増につながる。医療と異なり、介護は長期利用となるため利用料増の影響は高齢者にとって極めて大きい。範囲拡大は極めて慎重に考えるべき」との意見とが対立し、11月6日の介護保険部会では結論に至りませんでした(関連記事はこちら)。

この(2)の論点(2割負担を求める高齢者の範囲)についても年内に結論を出す必要がありますが、厚生労働省は次のような点を考慮し、介護保険部会での結論を待たず、「2024年度予算案を編成する過程の中で決定する」考えを示しました。

▽現在、2024年度介護報酬改定論議が社会保障審議会・介護給付費分科会で進んでおり、この内容も「利用者負担」に大きく影響するため、両者(改定内容と2割負担の範囲)を合わせて考える必要がある

▽2割負担の範囲をどう設定するかで介護給付費が大きく変化し、介護給付の25%を占める国費も大きく変化する(2割負担の範囲を大きくすれば介護給付費が減少し、国費も減る)ため、他施策の動きも見ながら検討する必要がある

▽我が国の経済・財政のあるべき方向を議論する「経済財政諮問会議」でも上記の方向で検討が進んでいる(「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」の中で上記の見解が打ち出されている)

経済財政諮問会議資料より(社保審・介護保険部会4 231207)



この方針に対しては、「介護保険部会を形骸化するもので納得がいかない」といった声も出ていますが、予算とも密接に関連するため「やむを得ない」と了承されています。

長期利用となる介護サービスの特性、サービス利用控えの懸念なども踏まえた検討を

もっとも介護保険サービスの利用料は、要介護・要支援高齢者とその家族の日常生活にも極めて密接に関連するため、介護保険部会委員からは多数の意見も併せて出されています。

まず「医療と介護との特性の違いを踏まえるべき」との意見です。介護保険サービスは、ほとんどの場合「長期間の利用」、極端に言えば、一度利用し始めたら死ぬまで利用することになります。したがって「利用料のアップ」(1割→2割など)は「極め長期間にわたって、高齢者の生活を圧迫する」ことになります。この傾向は「高齢者医療よりも強い」と考えられます。

これに伴って「経済的負担が重くなり、サービス利用控えが生じるのではないか」と心配する意見も多数出ています。

厚生労働省老健局介護保険計画課の簑原哲弘課長が示した資料を見てみましょう。

現在は「合計所得160万円以上」(概ね単身世帯で年収280万円以上に相当)で「2割負担となり、それ以下では「1割負担」となっていますが、この「2割負担の基準」を下げていくと、次のように介護サービス利用の月額が増加する計算になります。あくまで機械的な計算に過ぎない点に留意が必要ですが、「2割負担の基準」を下げていけば、当然、負担増となる高齢者数も多くなります(影響が大きくなる)。

【合計所得「150万円以上」に拡大した場合】(概ね単身270万円以上、夫婦2人世帯以上で336万円以上に相当)
→8万人程度が「負担増」となり、その内訳は以下のとおり
▽月0-2000円の増加となる者:1万7000人増
▽月2000-4000円の増加となる者:1万人増
▽月4000-6000円の増加となる者:8000人増
▽月6000-8000円の増加となる者:6000人増
▽月8000-1万円の増加となる者:6000人増
▽月1万-1万2000円の増加となる者:7000人増
▽月1万2000-1万4000円の増加となる者:7000人増
▽月1万4000-1万6000円の増加となる者:7000人増
▽月1万6000-1万8000円の増加となる者:5000人増
▽月1万8000-2万円の増加となる者:4000人増
▽月2万-2万2000円の増加となる者:4000人増
▽月2万2000-2万4000円の増加となる者:0人増
(月当たりの利用者負担上限額(高額介護サービス費)に到達するため、2万4000円をこえる負担増となる人は生じない)

【合計所得「110万円以上」に拡大した場合】(概ね単身230万円以上、夫婦2人世帯以上で296万円以上に相当)
→45万人程度が「負担増」となり、その内訳は以下のとおり
▽月0-2000円の増加となる者:9万4000人増
▽月2000-4000円の増加となる者:5万5000人増
▽月4000-6000円の増加となる者:4万2000人増
▽月6000-8000円の増加となる者:3万1000人増
▽月8000-1万円の増加となる者:3万2000人増
▽月1万-1万2000円の増加となる者:3万7000人増
▽月1万2000-1万4000円の増加となる者:4万1000人増
▽月1万4000-1万6000円の増加となる者:3万9000人増
▽月1万6000-1万8000円の増加となる者:3万人増
▽月1万8000-2万円の増加となる者:2万4000人増
▽月2万-2万2000円の増加となる者:2万1000人増
▽月2万2000-2万4000円の増加となる者:2000人増
(月当たりの利用者負担上限額(高額介護サービス費)に到達するため、2万4000円をこえる負担増となる人は生じない)

【合計所得「70万円以上」に拡大した場合】(概ね単身190万円以上、夫婦2人世帯以上で256万円以上に相当)
→75万人程度が「負担増」となり、その内訳は以下のとおり
▽月0-2000円の増加となる者:15万7000人増
▽月2000-4000円の増加となる者:9万1000人増
▽月4000-6000円の増加となる者:7万1000人増
▽月6000-8000円の増加となる者:5万2000人増
▽月8000-1万円の増加となる者:5万4000人増
▽月1万-1万2000円の増加となる者:6万2000人増
▽月1万2000-1万4000円の増加となる者:6万8000人増
▽月1万4000-1万6000円の増加となる者:6万5000人増
▽月1万6000-1万8000円の増加となる者:5万人増
▽月1万8000-2万円の増加となる者:4万人増
▽月2万-2万2000円の増加となる者:3万5000人増
▽月2万2000-2万4000円の増加となる者:4000人増
(月当たりの利用者負担上限額(高額介護サービス費)に到達するため、2万4000円をこえる負担増となる人は生じない)

2割負担を拡大した場合の「負担増」となる人数と金額の状況(社保審・介護保険部会1 231207)

現在の介護保険サービス利用負担の状況(社保審・介護保険部会2 231207)

資産の前提(社保審・介護保険部会3 231207)



この点、例えば「夫婦2人世帯で年収336万円」の世帯の支出モデルを見ると、支出が320万円で「年間の余剰が16万円」となります。これを12で割ると、所得ベースでは最高でも「あと1万3333円までしか追加負担ができない」計算となり、上記例(1つ目の例)にあてはめると「1万4000円以上の負担増」となる2万人は、「預金の取り崩し」などで2割負担に対応しなければならないと推測できます。

同様に、「夫婦2人世帯以上で256万円」の世帯では、主出が245万円であり、所得ベースでは「年間11万円、月当たり9166円までしか追加負担ができない」計算です。上記例(3つ目の例)にあてはめると、「1万円以上の負担増」となる32万7000人は、「預金の取り崩し」などで2割負担に対応しなければならないと推測できます。

単身高齢者世帯の収入・支出構造(社保審・介護保険部会5 231207)

高齢者夫婦2人世帯の収入・支出構造(社保審・介護保険部会6 231207)



このように「負担増となる」「預金を取り崩さなければ2割負担に対応できない」となれば、「介護保険サービスの利用を控えよう」(今まで週に3回利用していたサービスを2回、1回に減らそう)などの動きも出てきかねません。この場合「適切なサービスを受けられずに重度化してしまう」ことも懸念されます。

介護保険部会委員の多く(ほとんど)が、こうした点を十分に考慮して「2割負担の範囲」を決定するよう厚労省に強く要請。こうした声に対し厚労省老健局の間隆一郎局長、同局総務課の山口高志課長、簑原介護保険計画課長は「意見を重く受け止め、議論・検討に反映させていく」考えを強調しました。



なお、介護保険に限って見ても「2割負担の範囲拡大」のほかに、介護報酬の見直し(例えば介護医療院や一部の介護老人保健施設での多床室室料負担導入、食費・居住費の利用者負担標準額(基準費用額)の引き上げ)といった負担増が、さらに後期高齢者医療制度において患者負担を現在の「1割負担」→「2割負担」に増加することも、今後の2024年度予算案を編成する過程で検討が行われます。

こうした高齢者の負担増については、「社会保障財政が厳しくなる中で、高齢者だけでなく国民全体が少しずつ負担増となっている点を理解しなければならない」「高齢者の多くは収入のベースが公的年金であるが、年金額が上がらない(収入が増えない)一方で、物価の高騰や医療・介護負担の増加が集中し、生活が非常に厳しくなる点に最大限の留意が必要である」など様々な見方があります。短期的な視点と、中長期的な視点の双方で、こうした負担増の是非を考えていく必要があります。

その際、佐藤主光委員(一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授)や井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)、伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)らは、「所得だけでなく、預貯金をはじめとする資産も勘案し、高齢者の負担能力を見ていく必要がある。低所得・低資産の人には十分な配慮を行ったうえで、一定の所得・資産がある人には能力に応じた負担を求めていかなければ保険制度を維持できない」と指摘しています。



なお、2割負担の範囲は一定程度拡大されると思われますが、それにより上述した「サービス利用控え」などが生じていないかをしっかりと検証することも重要で、座小田孝安委員(民間介護事業推進委員会代表委員)らは、この点についても強く厚労省に要望しています。



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