地域医療構想などを包括する安倍政権最重要プロジェクトの正体
2015.6.5.(金)
第二次安倍政権の最重要プロジェクト「地方創生」を指揮する「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部」(詳細はこちら)をご存じですか。2015年度の地域創生枠の予算規模は約1.4兆円という大型予算です(詳細はこちら)。医療関連では、病院関係者が注目する「地域医療構想」や「地域包括ケアシステム」の推進も含まれています。
政府は、人口減少が消費・経済力の低下につながり、日本経済が低迷することを懸念しています。人口減少の要因はさまざまですが、特に、大都市での超低出生率・地方から都市への人口流出と低出生率が日本全体の人口減少につながっています(図表1)。ただし、地域によって状況異なり中でも著しい東京一極集中が大きな課題となっています(図表2)。こうした地域性を考慮した上で、人口減少に歯止めを掛け、60年に1億人程度の人口を確保することを、政府は目指しています。
また、東京圏の高齢者は病院や施設を奪い合う可能性が高く、4日政府は地方移住を促す提言もしました(『東京圏の高齢者、地方移住を 創成会議が41地域提言』※2015年6日5日掲載確認)。
政府は「まち・ひと・しごと創生」を掲げて、人口減少克服と地方創生を併せて行い、将来にわたって活力ある日本社会を維持する戦略を描いています。その核となるのは、(1)東京一極集中の是正と若い世代の結婚・子育て支援による人口減少の克服(2)地域特性に応じた処方せん――の2つです。
2つの核で「まち・ひと・しごと創生」を推進し、60年に1億人程度の人口を確保するため政府は、「地方における安定した雇用を創出する」「地方への新しいひとの流れを作る」「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「時代にあった地域を作り、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する」という4つの基本目標を掲げています。
まず、国が60年に向けた長期ビジョンを描き、15―19年度(5カ年計画)の政策目標・施策(総合戦略)を策定します。その上で、地方が各々のビジョンと総合戦略を策定するというものです。
医療関係者からすると、厚生労働省が取りまとめた「地域医療構想ガイドライン」に基づき、都道府県で地域医療構想や医療計画などを策定する流れに似ていると思われるのではないでしょうか(「地域医療構想」の関連記事はこちら)。
また、国は各地方が長期ビジョンと総合戦略を推進していくために、3つの視点から支援を行います(図表3)。
まずは情報支援として地域経済分析システム「RESAS」を提供します。RESASは地方自治体が自らの産業構造や人口動態、観光の人の流れなどの現状・実態を正確に把握し、それぞれの地域の強み・弱みなどの特性を可視化するためのツールです。例えば、「観光マップ」の「From―to分析(滞在人口)」では、どこからどこに人が集まっているのか期間を区切り、市区町村単位で詳細を視覚的にも確認することができます(図表4)。
次に、人的支援では国家公務員を小規模市区町村の補佐役として派遣する「地方創生人材支援制度」、さらには潤沢な予算枠での各種財政支援なども行っていきます。
「まち・ひと・しごと創生」関連事業の予算には、(1)地方に仕事をつくり、安心して働けるようにする(2)地方への新しい人の流れをつくる(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える(4)時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する―の4つから成る「まち・ひと・しごと創生総合戦略における政策パッケージ」と、「その他財政的支援(国家戦略特区・社会保障制度・税制・地方財政等)」の2つの枠があり、後者には「地域医療構想の策定」や「地域包括ケアシステムの構築」も含まれています。
病院大再編時代の引き金にもなりかねない地域医療構想の動向に病院関係者の注目が集まりますが、別の視点から見ると地域医療構想は地方創生の一つのオプションでもあるのです。地域医療構想に着目する一方で、そのほかの地方創生プロジェクトがどのように進捗しているかという幅広い視点も、今後の医療関係者たちには求められるのではないでしょうか。
こうした政策や病院経営に関する情報を、GHCでは恒例の社員研修で共有しています。今回は6月3―5日の3日間、長野県八ヶ岳に来ています。
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