特定集中治療室管理料5・6(ICU5・6)、入室患者の重症度は他のICU1-4と同様であり「点数差の縮小」検討が必要—日病協
2025.9.3.(水)
2026年度の診療報酬改定論議が進んでいるが、例えば「身体拘束の定義見直し」「地域包括医療病棟での内科疾患評価」などを検討する必要がある—。
また特定集中治療室管理料5・6(ICU5・6)の入室患者の重症度は、他のICU1-4と同様であり、現在の点数差(ICU3・4よりも1000点低い)は縮小する必要がある—。
全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)の代表者会議(会長、副会長クラスの意見交換会)が8月29日に開かれ、こうした議論が行われたことが望月泉議長(全自病会長)ら報告されました。

8月29日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ望月泉議長(全国自治体病院協議会会長)
身体拘束の定義、地域包括医療病棟の制度設計など検討しなおすべき
Gem Medでも報じているとおり2026年度の次期診療報酬改定に向けた議論が中央社会保険医療協議会を中心に進められています。また、基本方針策定論議が社会保障審議会・医療保険部会でも始まりました。
(中医協論議)
・医療機関を取り巻く状況(経営状況等)
・医療提供体制
・外来(その1)
・入院(その1)
・入院・外来医療分科会からの報告を受けた議論
・医療機関を取り巻く状況(経営状況等、その2)
(入院・外来医療等の調査・評価分科会論議)
・急性期入院医療
・DPC
・高度急性期入院医療
・地域包括医療病棟
・回復期リハビリ病棟
・療養病棟等
・いわゆる包括期入院医療全体
・その他、入院・外来全般
・データ提出を評価する加算
・生活習慣病管理料など
・機能強化加算・地域包括診療料など
・オンライン診療
・入退院支援
・看護師確保・負担軽減
・多職種連携・リハビリ
・急性期入院医療(その2)
・重症度、医療・看護必要度
・DPC(その2)
・救急、高齢者入院医療
・包括期医療(その2)
・外来医療(その2)
・薬剤業務
・短期滞在手術等基本料1など
・医師の診療科偏在是正支援
・身体拘束最小化・意思決定支援
・働き方改革支援
・中間とりまとめ
・医療従事者の賃上げ・処遇改善
・リハビリ全般(その2)
・回復期リハビリ病棟(その2)
・療養病棟等(その2)
・入院時の食事、人口・医療資源の乏しい地域への対応
・高度急性期入院医療(その2)
日病協は15の病院団体で構成され、主に「診療報酬改定に向けて病院団体の意見をすり合わせ、共同提案・要望を行う」などの活動をしています(もちろん、診療報酬以外の医療の諸課題についても議論を行っている)。
8月29日の代表者会議(15の病院団体の会長・副会長クラスによる意見交換会)では、これまでの改定論議を確認・検証したことが望月議長から紹介されました。例えば、▼身体拘束の定義を再度検討すべきではないか(最新技術を用いて身体活動の抑制とは考えにくいものも拘束に含まれてはいけない、関連記事はこちら)▼地域包括医療病棟では整形外科患者を受け入れることで収益が上がりやすくなるようだが、それは本来の趣旨とは異なっていないか(関連記事はこちら)▼特定集中治療室(ICU)について、「宿日直許可を得た医師」を配置していない入院料1-4と、配置している入院料5・6とでは、入室患者の重症度にはほぼ違いがないため、点数差を見直すべき(関連記事はこちら)—などの意見が出されています。
このうちICUについて望月議長は、個人的見解と断ったうえで「2024年度の前回診療報酬改定で『宿日直許可を得た医師』を配置する特定集中治療室管理料5・6(ICU5・6)が新設された。しかし、宿日直許可を得た医師も『ICUの外で休んでいる』わけではない。患者に変化があればすぐに対応できる体制を敷いている。点数差をつけることは医療提供の実態にマッチしておらず、また医師働き改革にも逆行する。『廃止してほしい』思いもあるが、前回改定で新設されたばかりであり『廃止せよ』とまでは要望しない。ただし現在は点数差が大きすぎる(ICU3・4に比べて1000点低い)ため、点数配分を十分に検討しなおす必要がある」との考えを示しました。
また、中医協の下部組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」では、「救急搬送受け入れ件数や全身麻酔手術件数を指標に、ICU設置がふさわしい病院の在り方」を検討しており、これは「ICUを絞り込んでいく方向」と理解できます。ICUがあまりに多くの病院に設置(つまり乱立)されれば、何よりも「医療資源(医師、看護師等)や症例(患者)が分散し、医療の質が保てなくなる」という大きなデメリットがあります。新たな地域医療構想論議でも、こうした点が強く意識され「急性期拠点機能の集約化」に向けた検討が進められています(関連記事はこちら)。
ただし、ICUは例えば「重篤な状態に陥って救急搬送患者を受け入れる」ことに利用されるケースも多く、この場合「緊急性がある、時間との勝負になる」と考えられます。このため、「がんなどの待てる急性期医療と同様にICUの集約化を進めて良いものか」と疑問を呈す識者もいます。
この点について望月議長は「今後の議論の経過を見守りたい。ICUをある程度集約化していく方向そのものには一定の合理性があるが、ハイケアユニット(HCU)の要件厳格化などをセットで進めると、医療現場に悪影響が出る可能性もある」旨をコメントしています。
今後、ますます2026年度診療報酬改定論議が熱を帯びていきますが、「高度急性期入院医療の在り方」も非常に重要な論点であることは述べるまでもありません。
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2026年度診療報酬改定、物価急騰等により医療機関経営が窮迫するなど従前の改定時とは状況が大きく異なる—中医協総会(1)
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