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病床機能報告 看護モニタリング

勤務医の労務管理や追加的健康確保措置など、「医師働き方改革」に関する詳細を解説—厚労省

2024.7.24.(水)

厚生労働省が7月23日に事務連絡「『医師の働き方改革に関するQ&A』等について(周知依頼)」を示し、労務管理の在り方や追加的健康確保措置などについて詳細な考え方を示しました(厚労省サイトはこちら)。

あわせてQ&Aでは「医師働き方改革」に関する法令などを一覧で整理しており、これらも参考にしながら、各医療機関で「医師働き方」に向けた取り組みを充実することが求められます。

労務管理は「客観的な手法」が基本となるが、やむを得ず自己申告に基づくケースも

ついに、この4月(2024年4月)から、【医師の働き方改革】がスタートしました。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



時間をかけて制度詳細を固め、医療機関等にも情報提供が行われてきていますが、新たな仕組みであることから、現場には様々な疑問が生じます。そこで今般、この疑問に答えるQ&Aが示されました。

まず、医師働き方改革では「適切な労務管理」が出発点となります。「どの医師が何時間働いているのか、どういった業務を行っているのか」を正確に把握しなければ、「働き方改革」を検討することすらできません。この点について厚労省は次のような考えを明示しています。

【労働時間の把握方法】
▽労働時間の適正把握には「労働日ごとの始業・終業の時刻を確認し、記録する」ことが必要であり、始業・終業時刻の確認・記録は、原則として「タイムカードによる記録、PC等の使用時間の記録などの客観的な方法」によることとされている(厚労省サイトはこちら(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)
→ただし、やむを得ない場合には「自己申告によって当該確認・記録を行う」こともできる
→その場合、「自己申告により把握した労働時間」が「実際の労働時間」と合致しているかを、必要に応じて実態調査し、所要の補正を行うなどの措置を講じる必要がある(「所要の措置」の詳細は労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインを参照)

【複数医療機関に勤務する医師】
▽自院で雇用する医師が副業・兼業を行っていることを把握している場合には、医師本人の自己申告等により「副業・兼業先の労働時間」を把握し、把握した副業・兼業先の労働時間と自院での労働時間を「通算」して労働時間を管理する必要がある
→このため「副業・兼業先の勤務予定や労働時間を把握するための仕組み」作りが重要となる(労働時間通算の考え方等はこちら(副業・兼業の促進に関するガイドライン)

面接指導や勤務間インターバルなど追加的健康確保措置の考え方も解説

また、上述のように勤務医の時間外労働時間は「原則960時間以内」とされ、特別な場合にのみ「1860時間以内」とすることが許されます(B水準、特例B水準、C1水準、C2水準)。「1860時間」はもちろん、原則となる「960時間」であっても、一般労働者よりもはるかに長い労働となるため、「健康確保」(追加的健康確保措置)が重要となります。

追加的健康確保措置としては、例えば▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―などがあります。このうち面接指導については、「1か月当たりの時間外労働が100時間以上」となる医師が面接指導の対象で、B・C水準等医療機関だけでなく、A水準医療機関でも義務である点に留意する必要がある、1か月当たりの時間外労働が100時間を超える前に面接指導を行う必要があり、例えば「80時間に到達した医師については面接指導の準備を行う」などの院内ルールを設けることが重要である、などの考えが既に示されています(関連記事はこちら)。

この追加的健康確保措置について、今般のQ&Aでは次のような考えが明確化されました。

【追加的健康確保措置の実施時期】
▽2024年4月1日から医療法における追加的健康確保措置に関する規定が適用されている
→36協定の起算日にかかわらず、医療機関の勤務医について、2024年4月1日以降、時間外・休日労働時間が1か箇月に100時間以上になると見込まれる場合には、管理者は面接指導を行わなければならない
→また、時間外労働時間が年720時間、または月45時間を超える月数が1年に6か月を超えると見込まれる場合には、勤務間インターバル・代償休息を確保するよう努めなければならない

【勤務間インターバル、代償休息】
●代償休息付与
▽例えば「24時間以内に9時間以上の勤務間インターバルが確保できる勤務シフト」を組み、連続した9時間の休息を確保した後、次の予定された始業までの間に急遽呼び出しの業務(1時間程度)が発生した
→9時間の連続した休息時間を超える分の時間について業務が発生したとしても、代償休息付与の義務は生じない

●兼業先との移動時間
▽副業・兼業先との間の往復の移動時間は、各職場に向かう通勤時間であり、通常は使用者の指揮命令下になく労働時間に該当しないため、勤務間インターバルに含めることができる
→ただし、遠距離の自動車運転等で休息がとれないことも想定され、「別に休息時間が確保できる」よう、十分な勤務間インターバルを確保するなどの配慮が必要となる

●オンコール待機時間
▽オンコール待機時間が労働時間に該当するかどうかは、待機中に求められる義務態様が医療機関ごと、診療科ごとに様々である
→▼呼び出しの頻度がどの程度か▼呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか▼呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか—などを踏まえ、オンコール待機時間全体について「労働から離れることが保障されているか」どうかで、オンコール待機時間が労働時間に該当するかを個別具体的に判断しなければならない
→オンコール待機時間が労働時間に該当しない場合は、当該時間を勤務間インターバルや代償休息を確保する時間として充てることができる

→代償休息については、疲労回復に効果的な休息の確保の観点から「オンコールからの解放など、業務から切り離された状況において確保する」ことを想定している
→オンコール待機時間を代償休息の時間に充てることについては、当該観点に十分留意し、勤務医の理解促進のため、各医療機関で十分に周知する必要がある

●宿日直許可
▽「宿日直許可のある宿日直の時間」を代償休息に充てることはできない(宿日直許可の効果は、労働基準法上の労働時間等に関する規定の適用を除外するもの、許可のある宿日直の時間を労働時間ではないとするものではない)

「業務の開始から46時間以内に18時間の連続した休息時間を付与する」とのルールは、宿日直許可のない宿日直に従事させる場合で、「業務開始から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保しない」ときに適用できる
→宿日直許可のない宿日直に従事させる場合、これとは別に勤務時間の一部に9時間未満の宿日直許可のある宿日直に従事させることがあっても、「業務開始から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保しない」場合には、「業務の開始から46時間以内に18時間の連続した休息時間」を適用することが可能である

●対象医師
▽連携B・B・C1・C2水準の対象となる医師(特定対象医師)は、各医療機関で36協定締結に合わせて「名簿を作成する」などにより、該当者を特定する
→結果的に960時間以内の時間外・休日労働となる(なった)場合であっても、特定対象医師として特定されている場合には、「勤務間インターバル、代償休息の確保」が管理者の義務となる(努力義務となるのは特定対象医師以外(はじめからのA水準医師)となる)
→「36協定締結当初、B水準等に関する業務に従事し、年960時間を超える時間外・休日労働が見込まれることから、B水準等の特定医師」としていた医師を、対象期間の途中に「A水準」に変更することは可能であるが、その変更は、妊娠や長期間の病気療養など「年960時間を超える時間外・休日労働を行う必要がなくなったことが客観的に明らかである」といえる事由がある場合に限るようにする必要がある(厚労省サイトはこちら(医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A)

特定対象医師における勤務間インターバル等の考え方1

特定対象医師における勤務間インターバル等の考え方2



ほか、「医師労働時間短縮計画の作成の対象に管理監督者は含まれないが、医療機関全体の勤務環境改善に向けた取り組みを進める観点から、管理監督者を含めた同計画の策定も考えられる」との考え方も示されました。



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