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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

医師働き方改革の実現に向け、厚生労働大臣が国民全員に「協力」要請へ―医師働き方改革推進検討会(2)

2020.10.5.(月)

医師の働き方改革を実現するためには、行政(国・自治体)、医療機関の管理者、地域の医療関係者(医師会や病院団体等)、勤務医自身、さらに患者・国民といった全員の「協力・支援」が必要不可欠である。また、1860時間までの時間外労働が可能となるB水準医療機関は、2035年度までの「暫定」措置であり、段階的に解消していく必要がある—。

厚生労働大臣が、関係者への協力を求め、B水準の段階的廃止に向けた目標値を明らかにする「指針」を策定し、公表する―。

9月30日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、今検討会)では、こういった点についても了承されました。

9月30日に開催された、「第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」(新型コロウイルス感染症対策として一部委員はオンライン出席)

医師働き方改革は、医療機関単独では実現できない

2024年4月から、すべての勤務医に新たな時間外労働の上限規制が適用されます。原則として「年間960時間以下」が上限となりますが【いわゆるA水準】、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関【いわゆるB水準】や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師【いわゆるC水準】では、「年間1860時間以下」までに上限が緩和されます。ただし、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況そのものは変わっておらず、医療機関の管理者(院長等)には、▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―といった追加的健康確保措置を講じる義務が課されます【医師の働き方改革】



ところでこうした「医師の働き方改革」は医療機関だけで進めることはできません。国・自治体・地域の医療関係者(医師会、病院団体、看護協会など)、勤務医自身、さらに患者・国民の協力が必要不可欠です。

例えば、我が国では先進諸国に比べて「医療機能・医療資源が分散」してしまっています。もちろん「医療へのアクセス」が医療の質を考える上で極めて重要な要素であることに疑いはありませんが、アクセスのみを重視して、医療機関が乱立し、限られた医療資源が分散してしまっては、医療の質を確保できなくなる(Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨークリニックとの共同研究から医療資源の集約化が医療の質向上に必要なことが明らかになっている)とともに、個々の医療従事者の負担が過重になってしまいます。このため、医療機能の集約化、医療機関の再編・統合といった医療提供体制の再構築が、医師をはじめとする医療従事者の働き方改革にとって不可欠です。こうした点を、国・自治体・地域医療関係者が考えることが必要になってくるのです。

また、患者が「医療機関が空いているので、夜間(時間外)外来を受診しよう」などと考えたのでは、医療従事者の負担が軽減しないことは述べるまでもありません。



他方、上記B水準の時間外労働の上限時間となる「年間1860時間」は、経過的・暫定的なものであり、2035年度で廃止され、2036年度からは「C水準(研修医や高度技能獲得を目指す医師など)を除き、勤務医の時間外労働上限は960時間になる」こととされています。B水準の上限である「年間1860時間まで」は、人間の健康・生命を考慮した際「あまりにも長い」ためです(B水準は地域医療確保のために、例外的・暫定的に認められるもの)。

このため、2024年度から12年間かけて「B水準対象医療機関でも、時間外労働を1860時間より徐々に短縮していく」ことが求められます。



こうした点を考慮し、今検討会では、▼医師の時間外労働短縮目標ライン▼各関係者が取り組むべき推奨事項―を厚生労働大臣指針として策定する方針を決定しました。

前者の「時間外労働短縮目標ライン」は、B水準の時間外労働上限を徐々にA水準の960時間に近づけていくものです。厚労省は「例えば3年ごとの段階的な目標値」を設定し、徐々に960時間に近づけていく考えを提示しました。例えば、2024年4月時点で「1860時間」の上限いっぱいまでの時間外労働が必要なB水準医療機関では、「2036年度に960時間」とすることを目指し、▼2027年度には1635時間までに時間外労働を短縮させる▼2030年度には1410時間までに短縮させる▼2030年度には1185時間にまで短縮させる―という目標値(マイルストーン)を設定するイメージです。

大臣指針には、B水準廃止に向けた段階的な目標値を設定する(医師働き方改革推進検討会(2)1 200930)



この方向そのものに異論は出ていませんが、「2024年度に1200時間や1000時間などの、比較的低い上限設定をしている場合には、2036年度を待たず、より早期に960時間を達成するような目標値を設定すべきではないか」(家保英隆構成員:高知県健康政策部副部長)、「A水準の960時間は、一般則(360時間)に比べれば長い。医師の生命・健康保持のために960時間という上限についても短縮を進めていくべき」(仁平章構成員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)といった注文も付いています。



後者の「推奨事項」は、▼行政(国・都道府県)▼医療関係者(使用者)▼医師▼国民―のそれぞれに対し、厚生労働大臣から「こうした取り組みをすべきことが望ましい。協力してほしい」旨のメッセージと捉えることができます。

上述の通り、医師の働き方改革は医療機関だけでは実現できず、各関係者が「協力・支援」しあうことがどうしても必要なためです。また、患者にとって、医師の働き方改革は「安全で質の高い医療を受けられる」ことにつながるものであり、自身が良い医療を受けるためにも協力が必須であるという点を忘れてはなりません。

厚生労働大臣からは、行政に対しては「医師の働き方改革は『医療提供体制改革』と一体的に進め、評価結果等を公表すべき」ことなどが、医療関係者に対しては「適切な労務管理、タスク・シフティングを進めるとともに、医師の健康確保に配慮すべき」ことなどが求められます。

今後、指針に盛り込むべき内容の詳細をブラッシュアップし、医療法等の法律改正が行われた後に、告示の形で指針が関係者(国民全員)に示されることになります。

研修を受けた「面接指導実施医師」が、長期間勤務をする医師の健康状況をチェック

また9月30日の今検討会では、医師の健康確保措置の一環である面接指導等に関するマニュアル案の報告も行われました。

冒頭に述べたように、医師は一般労働者に比べて「長時間の時間外労働」に従事することになります。このため、医師の健康・生命を確保するための「追加的健康確保措置」がセットで組み込まれます。具体的には次のような内容です(関連記事はこちら)。

▽B水準・C水準医療機関で月960時間を超える時間外労働を行う勤務医について「28時間までの連続勤務時間制限」「9時間以上の勤務間インターバル」などを義務とし、A水準医療機関の勤務医、およびB・C水準医療機関で月960時間までの時間外労働となる勤務医ではこれらを努力義務とする【追加的健康確保措置1】

▽A・B・Cいずれの医療機関においても、月の時間外労働が100時間以上となる勤務医については産業医等が「面接指導」を行い、必要に応じて就業上の措置を行うことを義務とする(前月の労働が80時間を超えた場合、翌月に100時間以上となることを見越して面接指導の準備等を行う)【追加的健康確保措置2】



このうち面接指導は医師が行いますが、産業医の数は限られています。そこで、一定の研修を受けた「面接指導実施医師」(2022・23年度に8000名を養成)を指定し、産業医との連携によって面接指導を実施することを厚労省は想定しています。

面接指導実施医師は、医療機関の管理者(院長など)から▼前月の時間外労働時間▼直近2週間の1日平均睡眠時間▼労働者の疲労蓄積度の自己診断チェックリスト▼面接指導の希望―に関する情報提供を受け、対象(100時間を超える時間外労働を行った医師など)に対し、▼勤務の状況▼睡眠負債の状況▼疲労蓄積の状況▼心身の状況(うつ症状、心血管障害のリスクなど)―を実際の面接の中で確認していきます。その結果を産業医と共有し、必要な就業上の措置(勤務停止など)を医療機関管理者に進言することになります。

面接指導の実施方法(医師働き方改革推進検討会(2)2 200930)

疲労蓄積度自己診断チェックリスト(医師働き方改革推進検討会(2)3 200930)



医師の健康・生命を守るために、極めて重要な役割を担うことから、より多くの医師が研修を受け、一定の知識・技能を身に着けることが期待されます。

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