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診療放射線技師による造影剤注入や臨床検査技師による直腸機能検査など、安全性をどう確保すべきか―医師働き方改革タスクシフト推進検討会

2019.11.12.(火)

医師から、診療放射線技師への「造影剤注入装置から動脈への造影剤注入行為(抜針およ止血を行う行為を含む)」や、臨床検査技師への「直腸肛門機能検査(肛門内圧検査・直腸バルーン知覚検査)実施」などをタスク・シフティングする場合、安全性を確保するためにどのような教育・研修等が必要になるのか、関係学会等ら広く意見を募り、それを踏まえてタスク・シフティングの可能性を探っていく―。

11月8日に開催された「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった点が固められました(前回会合の記事はこちら)。

厚生労働省は、関係学会をはじめ広く国民から意見募集を始めました。意見は11月22日まで受け付けています。

11月8日に開催された、「第2回 医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」

医師から他職種へのタスク・シフティング、「安全性の確保」が最も重要な視点

厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」が3月末(2019年3月末)に報告書をとりまとめ、次のような方針を明確化。現在、B・C水準医療機関の指定等に向けた具体的な仕組みの検討が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)【いわゆるA水準】
▽ただし、「3次救急病院」や「年間に救急車1000台以上を受け入れる2次救急病院」など地域医療確保に欠かせない機能を持つ医療機関で、労働時間短縮等に限界がある場合には、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする【いわゆるB水準】
▽また研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合には、時間外労働を年間1860時間以下までとする【いわゆるC水準】



こうした時間外労働上限の遵守を可能とするためには、今後、すべての医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)や「労働時間そのものの短縮」を強力に進めていくことが求められます。労働時間の短縮については、例えば▼「医師免許を保有していなくとも実施可能な業務」を他職種に移管し、医師は「医師でなければ実施できない業務」に特化する(タスク・シフティング)▼特定の医師に集中している業務を、より多くの医師で分担する(タスク・シェアリング)―ことが考えられます。

そこで厚労省は、検討会に対し「医師が担っている業務のうち、どの業務を、どういった職種に移管できるのか」を議論し、必要な対応法をまとめることを要請しました。

今夏(2019年6-7月)に30の医療関係団体から実施したヒアリングにおいて、6分野・286の業務・行為が「医師から他職種にタスク・シフティングできる可能性がある」との意見が出されており(医師側が「他職種に担ってほしい、また担ってもらえる」と考えている業務・行為、メディカル・スタッフ側が「我々が担える」と考えている業務・行為、ヒアリングに関する記事はこちらこちらこちら)、検討会ではこれらを次の3グループに区分。

(A)現行制度の下で実施可能である業務
(B)現行制度の下で実施可能か否かが明確に示されていない業務
(C)現行制度の下では実施できないが、実務的には十分実施可能で法改正等を行えば実施可能となる業務

区分(A)については、現行制度下で実施可能ながら「タスク・シフティングが進んでいない」業務で、例えば▼診断書作成補助業務(医師事務作業補助者等への移管が可能)▼創部ドレーンの抜去(心嚢ドレーン、胸腔ドレーン、腹腔ドレーンの抜去は特定行為研修を修了した看護師に移管が可能)―などで、改めて「タスク・シフティング可能である」旨を通知等で明示するとともに、タスク・シフティングが進まない背景を分析し、対応策を探っていきます。

また区分(B)については、業務・行為の内容を整理し「どういった部分が実施可能で、どこからが実施不可能か」を、通知等で明確化していきます。例えば「臨床検査技師による輸液路確保」に関しては、採血を伴う翼状針(留置針)穿刺は実施可能であるものの、輸液を目的とした輸液路確保は実施できない、ことなどを1つ1つ明確化します。

さらに(C)については、さまざまな業務が含まれますが、▼各資格法における資格の定義と、それに付随する行為の範囲内であること▼その職種が担っていた従来の業務の技術的基盤の上にある隣接業務であること▼教育カリキュラムや卒後研修などによって安全性を担保できること―という要件を満たせば、法令改正等の対応により「タスク・シフティング」が可能ではないか、と考えられます。

例えば、(1)診療放射線技師による「造影剤注入装置から動脈への造影剤注入行為(抜針および止血を行う行為を含む)」など(2)臨床検査技師による「直腸肛門機能検査(肛門内圧検査・直腸バルーン知覚検査)実施」など(3)臨床工学技士による「血液浄化施行時のバスキュラーアクセスへの穿刺によるカニューレ留置、および不要カニューレの抜去(動脈表在化等を含む)」など(4)救急救命士による「(院内での)静脈路確保(輸液)」など―については、前2者の要件は満たしていると考えられますが、安全性担保については判断に苦しむところがあります。

このため検討会では、5職種(診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、看護師)による業務実施について、関係学会などから「安全性が担保できるのか」という点について広く意見を募ることとしたものです。例えば、「現行の教育・要請過程で学ぶ行為であり、新たな教育・研修等を行わずとも安全性が担保できるのか」、あるいは「新たな教育・研修が必要と考えられるのか」などを、当該業務・行為に精通した医療関係者等の目で検証してもらうことが目的です。寄せられた意見を踏まえ、「メディカル・スタッフでも実施可能で、かつ安全性を担保できることから、タスク・シフティングを進めるべき行為」を探っていく考えです。

●意見募集に関する厚労省サイトはこちら



なお、臨床工学技士については、臨床工学技士法で「医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作および保守点検を行う」こととされており、例えば▼内視鏡▼心臓血管カテーテル―などの操作を行うに当たっては、「これらの機器が生命維持管理装置に当たるのか」という点をクリアしなければならないことを猪口雄二構成員(全日本病院協会会長)や根岸千晴構成員(埼玉県済生会川口総合病院副院長(麻酔科主任部長兼務))は強調しています。

タスク・シフティング、「実現可能性」と「効果」の両面からの検討が重要

11月8日の検討会では、タスク・シフティングの可能性を探る際には、「行為の侵襲性」や「当該職種の教育課程」、「当該職種の人数」、「医療現場でのタスク・シフティングのこれまでの推進状況」なども勘案すべきとの指摘が多数出ています。

今村聡構成員(日本医師会副会長)は、検討時間が限られている(年内に検討会で一定の意見をまとめる)ことから、「実現可能性」と「タスク・シフティングの効果」の両面を見た効率的な議論を進めるべきと改めて主張。

厚労省は区分(C)の各行為について、「どの程度、医師の業務時間が削減可能か」を試算しています。例えば、▼診療放射線技師に「造影剤注入装置から動脈への造影剤注入行為(抜針およ止血を行う行為を含む)」を移管した場合:1か月に0.1時間以下▼臨床検査技師に「直腸肛門機能検査」を移管した場合:同0.7時間▼臨床工学技士に「血液浄化施行時のバスキュラーアクセスへの穿刺によるカニューレ留置、および不要カニューレの抜去」を移管した場合:同1.5時間―などの医師負担軽減が見込まれます。

これらの数字を見ると「効果はあまり大きくないのではないか」とも思われますが、診療放射線技師が「X線検診車で胃がん・乳がん検診の撮影を、医師の包括指示で実施できる」ようになれば、1か月当たり160時間程度の医師負担軽減が見込まれます。

もっとも、これらタスク・シフティング効果は、実際の医療現場における業務から試算したものですが、医療機関によって実施している行為の種類・量は異なるため、単純に数字のみを比較することは困難です。今後、どのように「効果が大きく、実現可能性も高い」行為をピックアップしていくのかも重要な視点となりそうです。

救急救命士へのタスク・シフティングは、別検討会での検討テーマだが・・・

なお、救急救命士について「現在可能な行為を、医療機関内でも実施できるようにすべきか」という論点については、本検討会ではなく、「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」で議論することになっています。しかし、齋藤訓子構成員(日本看護協会副会長)や秋山智弥構成員(岩手医科大学看護学部特任教授)、木澤晃代構成員(日本大学病院看護部長)は、「看護職で十分に対応できる」「救急救命士の教育課程と看護師の教育課程を考えると、救急救命士に医療機関内で処置等を実施させるには、大幅な基礎教育の見直し・強化が必要となるのではないか」と慎重な検討を求めています。

一方で、猪口構成員や根岸構成員ら、医師サイドからは救急救命士の活躍に強い期待を寄せており、メディカル・スタッフ団体の様々な思惑も絡む難しい議論となる可能性もあります。

 
 
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