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高度技能獲得を目指すC2水準、「長時間の手術等伴う保険外の医療技術」などが該当―医師働き方改革推進検討会(2)

2021.8.26.(木)

医師が高度技能獲得を目指す場合、「短期間に多くの症例を集中的に経験する」必要があるため、どうしても長時間労働となってしまう。このためC2水準として960時間を超える時間外労働が認められるが、その対象は、例えば「長時間の手術・処置などを伴う保険外の医療技術」などが該当することとしてはどうか―。

8月23日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われています。

8月23日に開催された「第14回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」

今後、医学会等の協力を得ながら、より具体的に「どういった医療技術がC2の対象となるのか」が示されていきます。

C2水準の対象は「長時間の手術等が必要な、保険外の医療技術」など

2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況に鑑みた、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



現在、2024年度の実施に向けて、より具体的な準備が検討会で進められています(関連記事はこちら(各医療機関の評価など)こちら(追加的健康確保措置の詳細など)こちら(地域医療への影響に関する調査結果など)こちら(医師勤務時間短縮計画など))。



C水準(研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師などで、長時間の労働を認める)には、▼臨床研修医(医師免許取得から2年以上)、日本専門医機構の専門研修を受ける専攻医を対象とするC1水準▼我が国の医療水準の維持発展に向けて高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要な分野において、当該技能を獲得しようとする医師(医師免許取得後6年銘以降)を対象とするC2水準―があります。

後者のC2水準については、例えば心臓血管治療や脳手術などの「高度な技能」を身に着けるためには、短期間に数多くの症例を経験し(集中的に短期間の長時間労働をし)、「腕を磨く」必要があることから設けられました(外科系を例にあげたが、内科系などでも診断・治療に高度の知識・スキルが必要なケースが無数に考えられる)。逆に、これを設けなければ、我が国の医療・医学水準の維持・向上が困難になってしまいます。

C2水準の指定・運用については、これまでに次のような考え方が示されています(関連記事はこちらこちら)。「高度な技能獲得を目指す」という医師の熱意に応えるものです(ただし、C2指定は医師個人でなく、医療機関が受ける点に留意)。

◆対象となる「分野」を国・審査組織(別に定める)が予め指定しておく(対象分野が不明確では、医師サイドが申請しにくい)

◆都道府県が「高度技能獲得のために必要な体制・設備を有している」などの要件を満たす医療機関をC2指定する(▼特定機能病院▼臨床研究中核病院▼基本領域の学会が認定する専門研修認定医療機関(基幹型のみ)―などは要件を満たすと考えられ、それ以外でも要件を満たす病院はC2指定を受けることが可能)

◆「高度な技能獲得を目指す医師」が、自ら、主体的に「高度特定技能育成計画」を作成し、その必要性を所属する医療機関(C2指定を受けていなければならない)に申請する

▼申請を受けた医療機関が、計画に必要な業務について審査組織に申請し、承認を受ける

▼この承認によって、当該医師について上記36協定が適用され、協定に基づいた業務を実施できる

C2水準指定フロー(医師個人でなく、医療機関を指定する)(医師働き方改革推進検討会(2)4 210823)



ただし、「具体的にどういった分野・技能が対象になるのか」が明らかにされていません。従前は「いわゆるスーパードクターやゴッドハンドでは狭すぎる。専門研修程度では広すぎる」ほどの考えが示されるにとどまっていました。

この点、8月23日の検討会で、厚労省から次のような考え方が示されました。医学会との意見調整を踏まえたものです。

▽「我が国の医療水準の維持発展のために必要な診療領域において、高度な技能を有する医師を育成することが公益上特に必要と認められる医療の分野」とは、日本専門医機構の定める19基本領域とする

▽C2水準の対象となりえる技能としては、▼医学研究や医療技術の進歩により新たに登場した、保険未収載の治療・手術技術(先進医療を含む)▼「良質かつ安全な医療を提供し続けるために、個々の医師が独立して実施可能なレベルまで修得・維持しておく必要がある」が、基本領域の専門医取得段階ではそのレベルまで到達することが困難な技能―とする

▽技能の修得にやむを得ず長時間労働が必要となる業務としては、(ア)診療の時間帯を選択できない現場でなければ修得できない(イ)同一の患者を同一の医師が継続して対応しなければ修得できない(ウ)その技能に関する手術・処置等が長時間に及ぶ―の1つ以上に該当するものとする

C2水準の対象技能の考え方(医師働き方改革推進検討会(2)1 210823)



ここからは、例えば「新専門医制度におけるサブスペシャリティ領域のうち、長時間の集中的研鑽が必要なもの」というイメージが浮かびます。ただし、サブスペ領域に限られるわけでなく、また「高度な技能獲得を目指す医師」が専門医資格の保有者である必要もありません。

例えば、「保険適用されていないが、有用と考えられるX技術」を身に着けようと熱意を持った医師が、申請を行い、当該技能が上記の要件を満たしていることが確認され、技能獲得の計画などに問題がなければ、サブスペ領域でなくとも、当該医師が専門医資格保有者でなくとも、C2水準として960時間を超える時間外労働が認められることになります。



上述のように、C2水準の実施については「高度な技能獲得を目指す医師」からの申請がベースになります。この申請をしやすくするために、「どういった分野が対象となりえるのか」の大枠を国や審査組織(技能がC2に適しているかを審査する専門家組織、別途、設置される)が示すことが求められ、上記要件は、その大枠を示す際の「拠り所」になります。



この考え方に反対意見は出ていませんが、「長時間労働が必要となる業務について、上記の(ア)(イ)(ウ)でカバーしきれない可能性がある。例示にとどめるべき」(島田陽一構成員:早稲田大学法学部教授)、「保険未収載の治療・手術技術との縛りでは、有象無象の技術が入ってしまう可能性がある。もう少し明確にすべき」(島崎謙治構成員:国際医療福祉大学大学院教授)などの注文が出ています。厚労省で、より明確になるような整理が行われます。

また、若手医師代表として参画する鈴木幸雄構成員(横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員)は「C2の申請を行う若手医師からすると、まだイメージがつかみにくい。どういった事例・技能なのか、可能な範囲で具体的に示してほしい」と要望しています。今後、国や審査組織で、上記要件をベースに「どういった分野が対象となりえるのか」の大枠・ガイドについて、もう少し具体的に提示されることになります。

C2希望する医師が「技能獲得計画」作成しやすいよう、様式など2021年度中に提示

また、上記のように、新たに「審査組織」が設置され、そこで「分野の大枠の提示」や「申請された個別技能の審査」「医療機関の教育研修環境の審査」「医師から申請された技能獲得に向けた計画の審査」などを行います。厚生労働大臣が、こうした業務を「審査組織」に委託することとなり、そこでは専門的な知識が必要となるため「医学会の協力」が欠かせないと考えられます。

厚労省は審査組織の考え方、業務スケジュール案についても示しています。上記の要件をもとに、「分野の大枠・ガイド」が提示され、それを踏まえて2022年度から医療機関の研修環境・個別医師の技能獲得計画に関する審査がスタートする見込みです。このため厚労省は、本年度(2021年度)中に「医師個人が作成する技能研修計画等の申請書類の様式、審査方法等を策定する」考えも明らかにしています。

審査組織の業務スケジュール(医師働き方改革推進検討会(2)3 210823)

審査組織の概要(医師働き方改革推進検討会(2)2 210823)



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