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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

紹介状なし患者の特別負担徴収義務拡大で外来機能分化は進むか、紹介中心型か否かは診療科ごとに判断すべきでは―社保審・医療部会(1)

2020.12.25.(金)

12月25日に開催された社会保障審議会・医療部会で、(1)医療計画の見直し、地域医療構想の実現(2)外来医療の機能分化推進(3)医師の働き方改革(4)医療機能情報提供制度、医療広告規制の見直し(5)全国の医療機関等で患者の医療情報等を確認出来る仕組み(EHR)、電子カルテの標準化(6)乳がん集団健診(マンモグラフィ)における医師の立ち合い―という、非常に幅広い項目について、関係検討会等から報告を受け、各項目に関する意見交換を行いました。

来年(2021年)の通常国会には、大きな医療法等改正案が提出されることを意味します。

12月25日に開催された「第77回 社会保障審議会 医療部会」

制度本来の趣旨・意図とは離れた問題点が浮上する可能性も

医療部会は、我が国の医療提供体制整備・確保の基本的事項について議論を行い、必要な法律改正(例えば医療法や医師法など)に向けた提言等を行います。ただし、医療提供体制と一口に言っても、非常に広範なため、項目ごとに専門家で構成される検討会等を設置し、そこでの議論・報告を踏まえて(議論の確認等が都度、医療部会で行われる)、最終的な改正方向の医療部会で決定します。

本稿では、(2)の「外来医療の機能分化」に焦点を合わせ、他の項目に関する議論は別稿で報じることとします。

外来医療の機能分化の大枠は、「一般外来は中小病院やクリニックが担当」し、大規模病院は「紹介外来や専門外来に特化する」ことを目指すものと言えるでしょう。高度・専門的な医療提供を行う大規模病院に軽症患者が殺到したのでは、真に当該病院での治療が必要な患者の医療アクセスが阻害され、また大規模病院勤務医の負担が過重になってしまうためです。

これまでにGem Medで繰り返しお伝えしているとおり、政府の 全世代型社会保障検討会議の議論・指示を受けて、医療計画の見直し等に関する検討会や社会保障審議会・医療保険部会において次のような枠組みが固められました(関連記事はこちらこちら)。医療部会で議論する事項は(A)(B)で、医療保険制度の範疇である(C)は議論対象ではありません。ただし、これらは密接に関連するために、委員からは(A)(B)(C)全体についての意見が出されています。これらの意見も参考に制度設計・運用面での留意事項を探っていくことになります。

(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】

(B)提出された外来診療データをもとに、各地域で「医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院」を明確化する

(C)「医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院」へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とし、紹介状を持たない患者からは特別負担を徴収する(除外要件に該当する場合以外は義務)

また、「医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院」への紹介を行う、「かかりつけ医」や「かかりつけ医の持つべき機能」についても明確化を図っていく方向が確認されています。

特別負担徴収義務を拡大していく方向そのものに異論は出ていない(医療保険部会(1)1 201126)

特別負担額を引き上げ、初・再診料相当額を保険から控除する方向が示されている(医療保険部会 201202)



「医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院」について、詳細は今後の議論を待つ必要がありますが、▼国が一定の目安(当該病院の基準等)を示し、各地域で実情を踏まえた基準等を設定する▼病院の手上げをもとに、各地域で当該病院を明確化する―ことが明確になっています。

この点、相澤孝夫委員(日本病院会会長)や神野正博委員(全日本病院協会副会長)、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は、「同じ病院内にあっても、例えば、外科では高度専門的な治療に特化するが、眼科は一般的な診療も行い、いわゆる『かかりつけ医機能』を持つなど、診療科で機能は異なる。『医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う』かどうかは、病院単位でなく、診療科単位で考えるべきではないか」との考えを提示しました。

医療資源を重点的に活用する外来医療のイメージ(案)(医療計画見直し検討会1 201030)



検討会でも、こうした意見が出ていますが、「診療科単位よりも、病院単位のほうが、患者・国民が理解しやすい」という点を踏まえて、まず「病院単位で『医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う』かどうかを明確化する」こととなりました(検討会の取りまとめでは「診療科単位での検討も進める」ことが明記されている)。制度の詳細は今後、固めていくことになりますが、相澤委員らの指摘をどう踏まえるのか、今後の検討(国レベルの検討、地域レベルの検討)に注目する必要があるでしょう。



また相澤委員は、「紹介を受けようにも、自分のかかりつけ医がどこなのかが分からなければ紹介を受けることができない。まず『かかりつけ医とは何か』『かかりつけ医機能とは何か』を明確にする必要がある」と強調。さらに(C)の「紹介状なしに直接、病院を受診する患者について保険給付からの一部除外する仕組み」で外来機能分化が進むとは到底考えられないとも付言しています。

この点、山崎學委員(日本精神科病院協会会長)も、「高齢期になれば様々な疾患を抱えるケースが多く、例えば、眼科のかかりつけ医は●●委員、整形外科のかかりつけ医は●●クリニックなどと決めるのか。あるいは、地域でトリアージ機能を果たし、必要に応じて専門病院等を紹介するのがかかりつけ医なのか。そうした定義が全く不明確である。私は後者がかかりつけ医に近いと思うが、そうした機能を担う総合的な診療能力を持つ医師の養成論議を十分にしなければならない」と指摘。12月16日の四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)・総合部会でも類似の議論が行われ、山崎委員は「医師免許取得後に病院で少なくとも15年ほど『何でも屋』として勤務し、その後に地域のかかりつけ医として開業すべきである。9時から17時までしか診療を行わず、夜間は無人になる、いわゆる『ビル診』はかかりつけ医とは呼べない」との見解を終了後の記者会見で披露しています。非常に重要な視点と言えます。



一方、河本滋史委員(健康保険組合連合会理事)は「『医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院』は、病院側の手上げをもとに、地域で明確化するが、これで明確化されるのか心配である。一定の基準値に該当するにもかかわらず手上げをしない病院がある場合には、しかるべき対応を検討するなどの仕組みも重要ではないか」との考えを示しました。

たしかに、「軽症の外来患者が多く、紹介中心型に特化したい」と考えている病院であれば、手上げをせずとも、すでに準備されている「200床以上病院で、紹介状を持たない患者から特別負担を徴収できる」という選定療養の仕組みを活用しているはずです。一方、「自院は200床以上だが、地域住民のかかりつけ医機能も果たしており、紹介中心型になるべきではない」と考えている病院であれば、手上げをしなければよいだけのことです。新たな仕組みに、どれだけの実効性があるのか、今後の制度設計も含めて検証していく必要があるでしょう。



なお、島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、すでに導入されている大学病院・一般病床200床以上の地域医療支援病院における「紹介状なし患者の特別負担徴収義務」によって、地域医療の現場でトラブルが生じていることを紹介します。例えば、▼特別負担を嫌った患者が一度病院を出て、そこで119番で救急車搬送を要請するケース(救急搬送患者では特別負担が発生しない)▼「紹介状作成屋」のような医療機関が跋扈する―などです。こうした制度の趣旨・意図に反するケースは、どういった場合にも出てきますが、可能な限り対処できるような制度設計を中医協で議論していくことも必要でしょう。

特別負担の徴収除外規定、病院側の判断で特別負担を徴収しないことが可能である(医療保険部会(1)3 201126)

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