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外来医療の機能分化、まず「軽症再来患者の逆紹介」推進せよ、「初診料等相当の保険除外」は認められない―日病・相澤会長(1)

2020.11.30.(月)

外来医療の機能分化は非常に重要だが「紹介状なし患者の特別負担」だけでは解決できない。例えば「初診時の特別負担5000円」を「7000円」に引き上げても、思ったような効果はでないのではないか―。

また「紹介状なし患者」について「初診料・外来診療料相当を保険給付から除外する」提案がなされているが、他の診療報酬項目(医学管理料や検査など)にも拡大される可能性があり、認めることはできない―。

外来医療の機能分化では、初診ばかりが注目されるが、まず「軽症再来患者の逆紹介」を進めていくことが重要である―。

日本病院会の相澤孝夫会長は11月30日の定例記者会見(日本病院会・会長としての記者会見)、および11月27日の11月27日の日本病院団体協議会・代表者会議後の記者会見で、このような考えを述べました(関連記事はこちら)。

11月30日に定例記者会見(オンライン記者会見)に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

特別負担額を7000円にしても、外来医療の機能分化は進まないのではないか

Gem Medでもお伝えしているとおり、「紹介状なしに外来を受診する患者」に対する特別負担を拡大する方向の具体的内容が固まってきています。

これまでの各審議会・検討会の議論で、次のような仕組みの大枠が固まりつつあります(関連記事はこちらこちらこちら)。

(1)新設する「外来機能報告制度」に基づいて、各地域で「紹介患者への外来を基本とする医療機関」(「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関)を明確化し、そのうち一般病床200床以上の病院に「紹介状なし患者への特別負担徴収義務」を拡大する

特別負担徴収義務を拡大していく方向そのものに異論は出ていない(医療保険部会(1)1 201126)



(2)「敢えて紹介状なしに大病院外来を受診する」場合には、初・再診について保険給付を行う必要が低いと考えられることから、初診料相当額(例えば2000円)・外来診療料相当額(例えば500円)を保険給付から控除し、特別負担の下限(初診5000円以上、再診2500円以上)をそれ以上に引き上げる

特別負担額を引き上げ、初・再診料相当額を保険から控除する方向が示されている(医療保険部会(1)2 201126)



(3)特別負担の徴収除外規定について、患者の医療機関へのアクセスを過度に制限しないよう配慮したうえで「直接受診する必要性の高い患者」に限定する観点で検討を進め、あわせて「再診における特別負担が徴収されない理由」を分析し、実効性を高める対応を検討する

特別負担の徴収除外規定、病院側の判断で特別負担を徴収しないことが可能である(医療保険部会(1)3 201126)



こうした見直しは「外来医療の機能分化」を進めるところに狙いがあります。「まず身近なかかりつけ医等を受診し、そこから高度・専門的な外来医療を提供できる病院を紹介してもらう」という流れを全国で構築することを目指すものです。

しかし相澤会長は「特別負担を7000円程度に引き上げたところで、外来医療の機能分化が進むのだろうか。お金で患者の流れを変えるためには、特別負担を10万円、20万円などに設定しなければ無理なのではないか」と疑問を提示。定額負担だけでなく、他の仕組み(例えば「かかりつけ医機能を明確にし、その機能をどの医療機関が果たしているのか」を明確にするなど)を組み合わせ、各地域で「この地域における外来医療の在り方」を考えていくことが重要と思われます。

そうした前提に立って、相澤会長は「今回の仕組みに対する現時点の評価」を行っており、とりわけ(2)の仕組みについて「認められない」旨を明確にしています。

11月30日の会見では、「この仕組みによって国民皆保険制度が崩壊してしまうのではないか。今回の『初診料相当・外来診療料相当の保険給付からの除外』を認めれば、医療保険財政(ひいては国の財政)のために、他の診療報酬項目(医学管理、検査など)にも『保険給付からの除外』が拡大していくのではないか」と危機感をあらわにしました。

また11月26日の日病協代表者会議後の会見では、「個人の見解である」としたうえで、「逆紹介を推進していくこと」が外来医療の機能分化にははるかに効果があるとの考えを強調しています。

大病院で一定の治療を終えた患者については、地域の中小病院やクリニックに「逆紹介」を行うことで、▼大病院の外来負担軽減▼患者の通院負担軽減▼大病院と中小病院・クリニックとの連携強化―などの効果が期待できます。現在、逆紹介を行っても大病院(特定機能病院・一般病床200床以上の地域医療支援病院)を受診してしまう再来患者については、「2500円以上の特別負担を徴収する」こととなっていますが、厚生労働省の調べでは非常に低調(0.1%)な状況です。

逆紹介にもかかわらず、大病院再診を受診する患者が極めて多い(下段の票)(医療保険部会(1)2 201119)



今回の徴収義務拡大の枠組みでも「再来患者への対応」が重要ポイントとなることが確認されていますが、これまでに「効果的な対応方法」は浮上してきていません(今後、中央社会保険医療協議会で検討していく)。

相澤会長は「大学病院ですら、【外来診療料】+【処方料】程度の軽症患者が再来患者の多くを占めているというデータが数年前に出されていた。こういう軽症再来患者の逆紹介を進めていくことが重要である。初診ばかりが注目されるが、重要なのは再来である」と指摘しています。今後、中医協でどういった検討が行われるのか、その行方に注目が集まります。

病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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