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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

どの医療機関が、外来化学療法等の「医療資源を重点活用する外来」を重点提供しているのか可視化してはどうか―医療計画見直し検討会

2020.3.13.(金)

外来化学療法や手術前後の外来など「医療資源を重点的に活用する外来」の定義・内容を明確にしたうえで、それらの提供実績を地域の医療機関ごとに把握・分析する。その結果を踏まえて地域関係者で協議し、患者・国民が「どの医療機関が『医療資源を重点活用する外来』医療提供を重点的に行っているのか」を把握できるようにするとともに、地域ごとに緩やかな重点化・集約化を協議する仕組みを設けてはどうか―。

3月13日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった具体的な考え方が厚生労働省から示されました。

議論は始まったばかりで、構成員からは賛否両論が出ており、今後の動向に要注目です。

3月13日に開催された、「第19回 医療計画の見直し等に関する検討会」

入院前後の医療や外来化学療法等が「医療資源を重点活用する外来」と考えられるのでは

安倍晋三内閣総理大臣が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」が昨年(2019年)末に、大病院における「紹介状なし外来受診患者」に対する特別負担の金額について、▼初診時5000円・再診時2500円を増額する▼徴収義務対象を『200床以上の一般病院』に拡大し、外来医療の機能分化を促す―などの方向性を示しました。

この方向性については、病院団体等からの「外来医療の機能分化やかかりつけ医機能についての議論をまずしっかりと行うべき」との強い指摘を受け(関連記事はこちらこちら)、▼社会保障審議会・医療部会等や検討会で、ベースとなる「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」に関する方向性を固める▼社会保障審議会・医療保険部会や中央社会保険医療協議会で「対象病院」や「金額」「医療保険の負担を軽減する仕組み」などを議論する―という2つのレールで議論を進めることになりました(関連記事はこちらこちら)。

検討会では(1)外来機能の明確化(2)かかりつけ医機能の強化(3)外来医療のかかり方に関する国民の理解促進―の3点を検討テーマとして議論を進め、4月に中間取りまとめを行います。このうち(1)に関しては、2月28日の前回会合で▼「医療資源を重点的に活用する外来について、医療機関ごとにその機能を明確化し、地域で機能分化・連携を進めていく枠組み」を検討する▼検討に当たっては、病床機能報告や地域医療構想などの既存制度との整合性、エビデンスを踏まえる―方向が確認されました。

地域の医療資源には限りがありますから、「医療資源を重点的に活用する外来」を「どの医療機関でも実施できる」ように整備することは不可能です。一定の医療機関に「重点化・集約化」していくことがどうしても必要であり(機能分化・集約化)、さらに「どの医療機関が『医療資源を重点的に活用する外来』を行っているのか」を患者・国民に分かりやすく情報提供していくことが必要になる(可視化、見える化)と厚労省は考えています。また多くの地域では「外来患者数がすでに減少傾向」にあり、医療機能の重点化・集約化は「医療の質」向上や、「経営の質向上」にも大きく関係してきます(少なくなる患者、少なくなる医療人材を奪いあい続ければ、共倒れもありうる)。

多くの2次医療圏では外来患者数はすでに減少モードに入っている(医療計画見直し検討会3 200313)



3月13日の検討会には、厚労省医政局総務課の高宮裕介企画官から、この機能分化・集約化の枠組みに関して、「『医療資源を重点的に活用する外来』を明確にしたうえで、各医療機関から『自院でどのような外来医療機能を果たしているのか』の報告を受け、『集約化・明確化に向けて地域で協議していく』」というイメージが示されました。例えば、「地域の医療関係者等が、各医療機関の外来診療データを踏まえながら、地域の実情を十分に勘案して、『医療資源を重点的に活用する外来』を提供する医療機関がどこなのかを明確化し、緩やかに集約化に向けた協議を進める」といった姿が考えられそうです。

まず【「医療資源を重点的に活用する外来」の類型・範囲】については、次のような類型と具体的な医療内容の例示が行われました。ただし、あくまで「例示」であり、今後の議論で追加・修正が行われていきます。

▽類型1:「入院の前後」の外来
→次のいずれかに該当する「入院」の前後30日間の外来
→▼手術(診療報酬のKコード)の算定▼処置(Jコード)のうち「DPCで出来高算定可能なもの」(1000点以上)を算定▼麻酔(Lコード)を算定▼DPC算定病床の入院料区分▼短期滞在手術等基本料2・3を算定―

▽類型2:「高額等の医療機器・設備」を必要とする外来
→次のいずれかに該当するもの
→▼外来化学療法加算を算定▼外来放射線治療加算を算定▼短期滞在手術等基本料1を算定▼550点以上の検査(Dコード)、画像診断(Eコード)、処置(Jコード)(地域包括診療料において包括範囲外とされている脳誘発電位検査、CT撮影など)▼手術(Kコード)を算定▼病理(Nコード)を算定―

▽類型3:「特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材」を必要とする外来
→次のいずれかに該当するもの
→▼ウイルス疾患指導料を算定▼難病外来指導管理料を算定▼診療情報提供料(I)を算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関」の外来―



これらの「医療資源を重点的に活用する外来」の実施状況を見てみると、「外来全体に占める『医療資源を重点的に活用する外来』の割合が20%以上」の施設は、医療機関全体(病院・クリニック)では8%にとどまりますが、病院では32%、中でも地域医療支援病院では99%、特定機能病院では100%になります。「地域医療支援病院・特定機能病院への重点化・集約化」が一定程度進んでいるように見えます。

「外来全体に占める『医療資源を重点的に活用する外来』の割合が20%以上」の施設は、地域医療支援病院では99%、特定機能病院では100%になる(医療計画見直し検討会1 200313)



ただし、「外来全体に占める『医療資源を重点的に活用する外来』の割合が40%以上、50%以上」の施設になると、その割合は大きく下がります(50%の施設割合は、いずれも1割に満たない)。もっとも、集約化の方向を進めれば、すべての地域医療支援病院等で「医療資源を重点的に活用する外来」を重点提供する必要はないとも考えられ(地域医療支援病院の中でも、とりわけ「医療資源を重点的に活用する外来」に特化した施設があって良い)、「医療資源を重点的に活用する外来」の実施割合が高い施設が少ないことそのものに大きな問題はありません(これを地域の関係者が「是」とし、それが明確化されれば良いと考えられる)。

「外来全体に占める『医療資源を重点的に活用する外来』の割合が50%以上」の施設は、地域医療支援病院・特定機能病院でも非常に限定される(医療計画見直し検討会2 200313)

外来医療実績を分析し、「医療資源を重点活用する外来」の基幹医療機関を明確化しては

このような「医療資源を重点的に活用する外来」を、各医療機関どの程度実施しているのかを把握する必要があります。この点、高宮企画官は病床機能報告制度に倣って、「国がレセプトデータから『医療資源を重点的に活用する外来』実施状況を集計し、それを各医療機関に提示し、医療機関がチェックする」仕組みとしてはどうか、との考えを示しています【外来機能を報告する仕組み】



さらに、重点化・集約化を進めるためには、「医療資源を重点的に活用する外来」の実績データを踏まえて、地域でさまざまな協議していくことが求められます。そこでは、例えば「『医療資源を重点的に活用する外来』提供が分散してしまっている。提供医療機関を絞って(つまり症例集約)、医療の質向上を目指してはどうか」との議論が行われることもあるでしょうし、「すでに『医療資源を重点的に活用する外来』提供施設が絞られており、これ以上の集約化は不要」との結論に達することもありうるでしょう【地域において協議する仕組み】

その際、地域における入院体制と外来体制を一体的に検討する必要がある(外来と入院は連続している)ことから、▼協議の場として「地域医療構想調整会議を活用できる」こととする▼外来機能の分化・連携に関しても「地域医療構想と同様の都道府県知事権限」を設ける▼「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する―ことなどを今後、検討していくことになるでしょう。基幹的医療機関の明確化に関して高宮企画官は、「公表し国民・患者に見える化する」「一定の『承認・認証』を行う」などの手法が考えられると例示しています。

「医療資源を重点活用する外来」の見える化・明確化の枠組み、賛否両論

こうした枠組みについて、初見であることも手伝い、3月13日の検討会では賛否両論が出されており結論には至っていません。

例えば、岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)や織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は、「地域によって外来医療の実態はまさに千差万別であり、同じ病院内でも診療科によって状況は全く異なる。一律の基準で『医療資源を重点的に活用する外来』を定めることには大きな弊害がある」と指摘。

また城守国斗構成員(日本医師会常任理事)は、「厚労省は『医療資源を重点的に活用する外来』をNDBデータ(レセプトデータ)をもとに定める考えのようだが、これでは本来の『外来医療の機能分化』とはマッチしない」と指摘。太田圭洋参考人(日本医療法人協会副会長、加納繁照構成員(同協会会長)の代理出席)も、「例えば、かかりつけ医機能を評価する診療報酬項目(地域包括診療料など)は在宅医療提供を重視しているが、患者の期待するかかりつけ医機能には在宅医療提供は上位にあがってこない。NDBのベースとなる診療報酬と医療提供機能とは必ずしも整合的でなく、診療報酬で評価されないかかりつけ医は数多いる」と述べています。

さらに城守構成員は「2020年度の診療報酬改定で『紹介状なしに外来受診する場合の特別負担』徴収義務対象病院が拡大(許可病床数200床以上の地域医療支援病院にも拡大)される。その効果・影響(患者の受療行動の変化など)を詳しく調査分析してから、こうした枠組みを検討すべきではないか」とも付言しています。



このように枠組みそのものへの慎重意見が医療提供サイドから相次ぎましたが、医療保険の費用負担者代表の立場で参画する本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)は、「外来医療の機能分化に関する議論はこれまで十分になされておらず、さまざまな意見(反対意見、慎重意見)が出ることは理解できる」としたうえで、「外来医療についても機能分化を進める方向には賛成である」と明言。患者・国民代表として参加する山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も明確な賛意こそ示さないまでも、厚労省提案に理解を示しています。

外来医療実績、クリニックからも報告を求めるべきか否かについても種々の意見

また、枠組みの内容についてもさまざまな意見が出ています。

まず【「医療資源を重点的に活用する外来」の類型・範囲】については、上述のように城守構成員・太田参考人が「診療報酬(NDB)をベースに考える点」に疑問を呈しているほか、山口構成員は「類型が、本当に病院の外来機能を表すものとなっているのか、慎重に考える必要がある」とも指摘しています。もちろん上述のように、類型や内容は「例示」であり、今後、修正・追加が検討されることに留意が必要です(上記の3類型や内容が「医療資源を重点的に活用する外来」と決定したわけではない)。



また【外来機能を報告する仕組み】について、山口構成員・本多構成員は「外来医療の全体像を把握することが重要であり、クリニックも含めた実績報告が必要である」との考えを示しましたが、今村聡構成員(日本医師会副会長)は「将来はさておき、現時点ではクリニックに機能報告の負担を課すことは非現実的である」と、今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「病床機能報告における8000超のデータ解析だけでも大変な作業だ。10万か所超あるクリニックのデータを含めた解析は極めて困難なのではないか」と反対しています。

「医療資源を重点的に活用する外来」の集約化・明確化という趣旨に鑑みれば、「まず病院に絞って実績報告を求める」という選択肢も十分にありそうですが、上記3類型・内容の医療提供を行うクリニックも少なくない点などをどう考えていくのか、今後の議論を注視する必要があります。



さらに【地域において協議する仕組み】に関しては、「地域医療構想調整会議の議論は十分に行われているとは言い難い。そこに外来医療の機能分化を付加しても実効性がないのではないか」との指摘が多数出されています。



多くの医療機関に医療資源(機器・設備や人材)が分散(当然、症例も分散する)すれば、患者のアクセスは向上するものの、症例が分散してしまい、「医療の非効率」が生じ、さらに「医療の質の低下」を招く可能性が高くなります。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨークリニックとの共同研究では、「症例数と医療の質は相関する」ことが明らかとなっています。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係



一方で、我が国では、地理状況、医療資源の偏在などから「地域医療の状況が千差万別である」ことから、「一律な機能分化推進は困難であり、危険ですらある」という医療提供サイドの指摘に十分に頷けるものです。



遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所長)は、「今後も議論を重ねていきたい」とコメントし、厚労省に構成員の意見を踏まえた資料整理・提案精査を命じています。4月の中間とりまとめに向けて、集中的な議論が行われることになるでしょう。



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