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「働き方改革に向けた病院内の意見交換会」、すべての病院で実施してほしい―医師働き方改革推進検討会

2022.3.24.(木)

勤務医の働き改革が2024年4月からスタートするが、若手からベテラン、経営者を含めた多くの医師、さらにメディカル・スタッフや事務職も交えて、病院内で「働き方改革に向けた意見交換を行う」ことが非常に重要なことが分かった。是非、すべての病院で意見交換会を実施してほしく、厚生労働省も支援をしてあげてほしい―。

3月23日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。

また同日には、C2水準に関する「技術の妥当性などを評価する審査組織の運用」方針なども固められています。

制度的な対応論議はすべて完了し、今後、厚生労働省でなど施行に向けた準備が進められます。直近で考えれば、この4月1日(2022年4月1日)に「B・C水準等を目指す病院で作成が義務付けられる医師労働時間短縮計画」を評価する【医療機関勤務環境評価センター】(従前は「評価機能」と呼ばれていた)の指定手続き・業務内容、評価事項等に関する事項が施行されます(1月19日に関係政省令が公布済)。

3月23日に開催された「第17回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」

できれば「全病院」で働き方改革に関する院内意見交換会を実施してほしい

2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



新たな時間外労働規制のスタートまで「2年」に迫りましたが、医療現場には「こうした情報が必ずしも正しく伝わっていない」「そもそも情報が全く伝わっていないケースもある」などの課題があります。

このため検討会の下に「勤務医に対する情報発信に関する作業部会」(以下、作業部会)が設置され、働き方改革の情報について▼分かりやすい「入門編・基礎編」▼詳しい「詳細編」―に分け発信していくことや、勤務医の情報入手ルートに鑑みて▼病院に説明スライドやポスターなどを配布する▼詳細な情報をネット確認できるように充実する―などの考え方をまとめました(関連記事はこちら)。

さらに作業部会では、冒頭に述べた「院内の意見交換会」が極めて有益であることを確認(関連記事はこちら)。多くの病院で意見交換会が開催されるよう、検討会や厚労省に「支援策の検討」も要請しています(関連記事はこちら)。

3月23日の検討会でも院内意見交換会に注目が集まり、▼世代を超えて情報・意見を交換でき、スタッフが同じ方向を向くことができる。医師以外のメディカルスタッフも含めた幅広い意見交換の場を是非広めてほしい(森正樹構成員:日本医学会副会長、東海大学医学部長)▼義務化は難しいかもしれないが、すべての病院で意見交換会が実施されるような支援を行ってほしい。制度情報の周知にとどまらず、勤務医の働き方改革で他職種はもちろん、病院全体がどう変わるのかを理解する会に発展させてほしい(今村聡構成員:日本医師会常任理事)▼臨床研修制度における「指導医講習会」などを参考に、全病院、全医師が定期的に話し合いに参画するようなことが望まれる(片岡仁美構成員:岡山大学病院ダイバーシティ推進センター教授)―などの意見が出されました。

厚労省は、医師労働時間短縮計画作成ガイドライン(B・C水準等を目指す病院では「医師労働時間短縮計画」を作成し、その評価を受けることが義務付けられる)の中に「勤務環境改善の取組は、医療機関全体に関わる課題であるため、様々な職種・年代のスタッフを参加させることが重要である。その際、例えば、医療機関内で世代や職位の異なる複数の医師、他の医療職種、事務職員等が参加する意見交換会を実施し、働き方改革に対する年代や職位による考え方の違いや改革を進める上での課題・役 割分担等について相互理解を深めることが、実効的な計画作成につながると考えられる」と記載し、意見交換会実施を推奨(時短計画作成ガイドライン案(厚労省サイト)はこちら)。併せて、意見交換会で用いることができる、分かりやすい「働き方改革の説明資料・スライド」作成なども進めます。

意見交換会は、上述作業部会の構成員である山内英子構成員(聖路加国際病院副院長・乳腺外科部長)が副院長を務める聖路加国際病院でも実施されました。山内構成員は当初「経営陣やベテラン医師の前で若手医師が委縮し、自由な議論にならないのではないか」と心配していましたが、開催後には「思いのほか、自由な意見交換が可能であった。極めて有意義であった」と意見交換会の意義を強調しています。全国の病院では、モデル3病院の取り組みも参考に「自院にマッチした意見交換会の開催方法」を検討してみてはいかがでしょう(意見交換会の実施報告資料(厚労省のサイト)はこちら(東海大病院)こちら(聖路加国際病院)こちら(愛仁会千船病院)こちら(アンケート結果))。

C2水準、技能の妥当性・研修計画の妥当性・教育環境の適正性の判断基準を明確化

また3月23日の検討会では、C2水準の技術について審査する「審査組織」の運用法についても大枠を固めました。

C2水準は「我が国の医療水準の維持発展に向けて高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要な分野において、当該技能を獲得しようとする医師(医師免許取得後6年目以降)」を対象とするものです。高度技能を獲得するためには、短期間に数多くの症例を経験する必要があり、960時間超1860時間以内の時間外労働を例外的に認めるもので、その大枠は次のようになります(関連記事はこちらこちら)。

(α)C2水準の対象となる「分野」を国・別に設置する審査組織が予め指定しておく(どういった技術分野がC2水準の対象になるのかが不明確では、医師サイドが申請しにくい)

(β)都道府県が「高度技能獲得のために必要な体制・設備を有している」などの要件を満たす医療機関をC2指定する(▼特定機能病院▼臨床研究中核病院▼基本領域の学会が認定する専門研修認定医療機関(基幹型のみ)―などは要件を満たすと考えられる(いわば自動指定)。それ以外でも要件を満たす病院はC2指定を受けることが可能)

(γ)「高度な技能獲得を目指す医師」が、自ら、主体的に「高度特定技能育成計画」を作成し、その必要性を所属する医療機関(C2指定を受けていなければならない)に申請する

(δ)申請を受けた医療機関が、計画に必要な業務について審査組織に申請し、承認を受ける

(ε)この承認によって、当該医師について上記36協定が適用され、協定に基づいた業務を実施できる

C2水準指定フロー(医師個人でなく、医療機関を指定する)(医師働き方改革推進検討会(2)4 210823)



3月23日には「δ」の審査組織について、運用の大枠を固めました。審査組織では、主に(1)申請された技術が高度でC2水準として妥当なものと言えるか(2)申請された計画が高度技能獲得のために適切かつ十分か(3)当該医療機関で高度技術獲得に向けた教育環境が整っているか―の3点を審査します。3点について全くの白紙では適切な審査が行えない(不公平が生じることも考えられる)ため、今般、モデル審査結果を踏まえて次のような考え方が整理されました。

まず(1)の「技術の妥当性」に関しては、モデル審査の中で「関連学会以外の専門家でも妥当性の判断が概ね可能であり『複数の専門家による審査』を行うことで透明性が担保できる」ことが確認されました。

どういった医療技術が「高度」「我が国の医療水準の維持・発展に必要」であるかを事前に定義しリスト化しておくことは困難です。しかし、分野の異なる専門家が複数人で審査することで「一定の水準が担保される」ことがモデル事業の中で確認されたのです。この点について「技術が広範に認められれば、研修施設(C2施設)の乱立、症例の分散を招き、医療の質向上に逆行してしまう」と懸念していた島崎謙治構成員(国際医療福祉大学大学院教授)も「モデル審査の結果を眺めると、専門家がけん制しあい、想像以上に厳格な審査が行われることが確認できた」と胸をなでおろしています。



また(2)の「計画の妥当性」については、▼長時間労働が本当に必要なのか▼予定症例数は妥当か―という2点について次のような評価視点が明示されました。

【長時間労働の必要性を評価する視点】
(ア)診療の時間帯を選択できない現場でなければ修得できない技術か?
▽平日・日中「以外」の時間帯でも実施されることの多い技能か
▽技能と関連した重篤な合併症への緊急対応の必要性が見込まれるか
(イ)同一の患者を同一の医師が継続して対応しなければ修得できない技術か?
▽特殊性の高い領域の技能等、特定医師の継続対応の必要性が見込まれるか
▽技能と関連した重篤な合併症の発生に備え、同一医師による継続対応の必要性が見込まれるか
(ウ)その技能に関する手術・処置等が長時間に及ぶか
▽技能および前後の業務を含めて時間外・休日労働が生じうるか

【予定症例数の妥当性を評価する視点】
▽技能名と最も関連の強い個別技能(主たる技能)の研修予定症例数が極端に少なくないか
▽主たる技能の研修予定症例数は、当該技能の医療機関の年間見込み症例数に対して割合が極端に低くないか
▽主たる技能の症例数1件あたりに必要とされる業務時間が特に長いか(重篤な症例が主な対象となる技能等)
▽主たる技能以外の研修予定症例数が極端に多くないか
▽基本19領域の専門医取得以降に取得する各種専門医の研修カリキュラムで必要とされる症例数と比較して大きな乖離がないか

様々な技術があるため「詳細な基準」を敷くことは困難で、上記のような「定性的な基準」とならざるを得ません。ただし森構成員は「これらの評価視点を踏まえて、19基本領域学会に、もう少し具体的な基準を明示してもらってはどうか。審査組織としても、もう少し具体的な基準が示されていた方が判断しやすい」と提案しています。

鈴木幸雄構成員(横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員)は「同一の患者を同一の医師が継続して対応しなければ修得できない技術か、という点は分業制等に逆行しないか。海外のエビデンスなども踏まえて検討していく必要がある」とコメントしています。

事例を積み重ねながら、明確化・具体化を含めた修正を行っていくことになります。



また(3)の「教育環境」に関しては、申請医師の所属する病院について、分野毎に▼基本領域の専門医取得以降の医師を指導できる医師・設備・症例数等が十分であるか▼基本領域の専門医取得以降の医師が修練するための学会施設認定を取得しているか―を見ていくことになります。

この点、家保英隆構成員(高知県健康政策部副部長)は「都道府県別等に、上述の認定基準等を満たす病院の数や配置状況を精査してほしい。症例数や設備のととのった都市部の病院での研鑽を希望する医師が増え、医師偏在が助長してはいけない」との考えを示しています。もっとも「地方の病院にも指導医を配置し、専門設備を配置し・・・」となれば医療資源が分散し、必要な高度研修を受けられなくなる可能性もある点に留意が必要です。



なお、多くの構成員が「C2技術が一定数集積された段階で概要を公表すべき」との要望も行っており、厚労省も「然るべきタイミングで概要を報告する」ことを約束しています。





医師働き方改革に関する制度対応論議は今回で完了しており、厚労省は今後、施行に向けた準備を進めていきます。

新たな時間外労働規制は2024年4月から適用されますが、その前に「B・C水準等の指定」が行われます。B・C等指定は、▼病院による医師労働時間短縮計画の作成→▼医療機関勤務環境評価センター(評価機能)による評価→▼評価結果を踏まえた都道府県による指定―という流れで進み、この4月1日(2022年4月1日)には「医療機関勤務環境評価センター」の指定手続きや業務規程の明確化、評価事項の明確化等に関する事項が施行されます(関係の政省令は1月19日に公布済)。

全国のB・C水準を目指す病院は、いそぎ「業務内容の見直し」「タスク・シフティング推進」などを行い、「医師労働時間短縮計画」の作成を進める必要があります。



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