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病院管理者・指導医など層別に働き方改革情報を発信、モデル病院で意見効果の場を設置―医師働き方改革・情報発信作業部会

2021.12.22.(水)

医師の働き方改革の情報を的確に医療現場に届けるため、病院管理者・指導医などのベテラン医師・若手医師などの層別に情報発信を行っていくことにする。その際、「まず興味をもってもらう」→「興味を持ってもらったら、少し詳しい内容にアクセスできるようする」などの段階を踏むような工夫も行う―。

医師の働き方に向けた考えはさまざまである。そこでモデル病院をいくつか選定し、「若手からベテランまで多くの医師、さらにメディカル・スタッフや事務職も交えて、働き方改革に向けた意見交換を行う」場を設け、「働き方改革に向けた課題抽出」などを行ってもらうー。

12月17日に開催された「勤務医に対する情報発信に関する作業部会」(「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の下部組織、以下、作業部会と呼ぶ)で、こういった議論が行われました。

12月17日に開催された「第2回 勤務医に対する情報発信に関する作業部会」

管理者・ベテラン医師・若手医師など層別に「働き方改革」情報提供を行う

Gem Medで繰り返しお伝えしているとおり、2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



しかし医療現場には「なぜ働き方改革が必要なのか」「働き方改革の仕組みはどういったものなのか」などの情報が十分に伝わっていないことが大きな問題として浮上しています。そこで作業部会では「どういった情報・内容を発信すればよいのか」「どのように情報発信すれば現場に伝わるのか」という議論を現場目線で行っています。

12月17日の会合では、(1)どういった内容を情報提供していくか(2)現場の課題・声をどう抽出していくか―という点を議論しています。

まず(1)については、これまでに作業部会で共通認識となった「病院管理者、指導医、若手医などで必要となる情報は異なり、情報収集手段(雑誌なのかネット情報なのかなど)も異なる。層別の情報発信が必要となる」「▼興味を引くような簡単な情報→▼興味が湧いたら少し詳しい情報→▼さらに深掘りできるような詳しい情報—という具合に、情報がつながる形でのアピールが望ましい」などの意見を踏まえ、厚生労働省から次のような考えが示されました。

【院長・副院長】(病院管理職)向け
→▽働き方改革の趣旨▽働き方改革の法制度・解釈▽タスクシフト・シェア▽医療機関における実践の工夫▽休暇に関する法制度

【診療部長/教授】向け
【医長・副医長/准教授・講師】向け
【若手指導医/助教】向け
【専攻医・臨床研修医】向け
→▽働き方改革の趣旨▽働き方改革の法制度・解釈▽健康確保措置▽A水準▽B・連携B水準▽C水準▽タスクシフト・シェア▽医療機関における実践の工夫▽休暇に関する法制度

【学生】向け
→▽働き方改革の趣旨▽働き方改革の法制度・解釈▽健康確保措置▽休暇に関する法制度

働き方改革に関する情報発信内容(勤務医情報発信作業部会1 211217)



また、これらの内容を▼まず興味を持ってもらう(エレベーターや医局などへのポスター掲示など)→▼少し詳しい内容を検索などしてもらう(働き方改革のサイトに「クイズ→正答率に基づくレベル設定→レベルに応じた内容説明」などを設ける)→▼詳しい内容を示して行動変容や他者への情報共有を促す(学術集会等で講習会を設けるなど)—と段階的に提供していく考えも示されています。

情報発信は段階を分けて行っていく(勤務医情報発信作業部会2 211217)



こうした内容に異論は出ておらず、これから上述した情報提供内容(コンテンツ)を作成していくことになります。関連して木戸道子構成員(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)から、日本産科婦人科学会が指導医講習会で使用している教材などが紹介されました。そこでは、例えば▼社会保険労務士などの専門家によるレクチャー▼双方向性アプリを用いた参加型の講習を行う▼専門医機構指定講習や指導医講習会の指定をつけ興味や関心のない層にも受講を促す▼e-ラーニングを活用する▼確認テストなどを盛り込み「形だけ」に終わらせない―などの工夫がなされています。

これらの工夫に多くの構成員が賛同し、あわせて▼働き方改革についても新専門医制度における必須講習の1つに位置づけることなどを検討してほしい(鈴木幸雄構成員:横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員)▼米国では働き方やメンタルヘルス講習の受講が義務付けられ、それにパスしなければ勤務医IDを取得できない、そういう仕組みも検討すべき(山田悠史構成員:マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科医師)▼国や厚労省が表に出すぎず、インフルエンサー(世間に与える影響力が大きい行動を行う人物)に情報発信してもらう形が好ましいのではないか(谷口智也構成員:東京ベイ・浦安市川医療センター臨床研修医)▼医師だけでなく、タスク・シフト先となる看護師などのメディカル・スタッフも巻き込んだ情報発信・共有が重要ではないか(山内英子構成員:聖路加国際病院副院長・乳腺外科部長)—などの提案・意見も出ています。

こうした声も踏まえて、より「分かりやすく、届きやすい」コンテンツ作成などを進めていくことになるでしょう。



関連して、「どういった情報発信をすれば現場に届くのか」が気になります。「コンテンツを作ったはよいが、あまり見てもらえていない」というのでは寂しすぎます。

そこで厚労省は、いくつかの病院を選定し、そこに勤務する医師を対象に▼現在の働き方に満足しているか▼働き方改革について知っているか▼働き方改革の情報はどういった経路で入手しているか、どういう形が目にとまりやすいと思うか―といった点をアンケート調査する考えを示しています。答えやすいように、また負担が大きくならないように質問項目を絞り込んで年末・年始にかけてインターネットを活用して実施。結果が年明けの会合に報告され、それを踏まえて「どういった情報発信ツールを用いるのか」などを改めて練っていくことになります。

アンケート案(その1)(勤務医情報発信作業部会3 211217)

アンケート案(その2)(勤務医情報発信作業部会4 211217)

アンケート案(その3)(勤務医情報発信作業部会5 211217)

モデル病院を選定し「多くの医療者で働き方を語りあう」意見交換の場を設定

またこれまでの議論の中で、「働き方についてジェネレーションギャップがある」「効率的な仕事ぶりを評価される仕組みがなければ働き方改革は進まない」「組織全体、さらに広く国民も含めた日本全体で働き方改革を進める必要がある」という意見が出ています。

制度を設け、周知を行っても「働き方改革などどこ吹く風」と考える医師が大勢を占めていれば「時間合わせ」に終始し、中には脱法行為に走るケースも少なくないでしょう。これでは「医師の健康を守りながら、質の高い地域医療を確保する」という働き方改革の趣旨・目的は実現できません。

そこで厚労省は、働き方改革の実現にむけて「医療機関内の世代・立場間の受け止めの違いについて認識共有・相互理解を進める」必要があり、そのために「医療機関内での意見交換の場」を設けてはどうかとの考えを示しました。

いくつかの病院(モデル病院)を選定し、世代・職位の異なる医師はもちろん、多職種が集い▼各世代や職位ごとの医療機関における役割と働き方改革への現在の考え方・姿勢▼働き方改革を進めていく上での各世代や職位における課題▼今後、医療機関内で進めていくべき取り組み―などをテーマに意見交換。意見交換を通じて病院内で「働き方改革を進めていこう」という共通認識が醸成されることを期待するとともに、意見交換の内容から「働き方改革を実効性を持って進めるためのヒント(現場の課題抽出→改善策の検討)」を得ることにも期待が集まります。

モデル病院を選定し意見交換の場を設置する(勤務医情報発信作業部会6 211217)

意見交換の内容を整理し、働き方改革に向けた課題を抽出することが期待される(勤務医情報発信作業部会7 211217)



この「意見交換の場を設置する」考え方そのものには歓迎の声が多く、厚労省で年末・年始にかけてモデル病院を選定し年明け(2022年)2月中旬頃までに実際の意見交換を実施することになります。

構成員からは、▼対面形式では意見交換がしにくい。オンラインでの意見交換や「匿名」での意見交換などを考え、多くの意見を吸い上げる必要がある(木戸構成員)▼事前に「●●病院の取り組み例」などを示し、これを自院で導入する場合にどう考えるかという流れを用意しておくべき(中野円佳構成員:ジャーナリスト)▼モデル病院だけでなく、将来的には全国の多くの病院で「意見交換の場」を設置することに期待したいが、何かインセンティブを付与したり、設置をプッシュする仕掛けがなければならない。自主性に期待したのでは「意見交換の場」設置は進まないと思う(石田苑子構成員:神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野医学研究員)—といったアドヴァイスが出ています。建前の議論に終わらず、「本音で語り合える」ような工夫をすることが重要でしょう。



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