医師働き方改革、「1か月100時間以上の時間外労働する医師」にはA水準医療機関でも「面接指導」実施が必要―厚労省
2024.5.17.(金)
医師働き方改革がこの4月(2024年4月)からスタートしており、その一環として勤務間インターバルや面接指導などの追加的健康確保措置がある—。
面接指導は、「1か月当たりの時間外労働が100時間以上」となる医師が対象で、B・C水準等医療機関だけでなく、A水準医療機関でも義務である点に留意する必要がある—。
また1か月当たりの時間外労働が100時間を超える前に面接指導を行う必要があり、例えば「80時間に到達した医師については面接指導の準備を行う」などの院内ルールを設けることが重要である—。
厚生労働省は5月14日に「長時間労働を行う医師への面接指導のポイント」を示し、医療機関等に留意を求めました(厚労省サイトはこちら)。
1か月100時間以上の時間外労働する医師、A水準医療機関でも面接指導実施が必須
ついに、この4月(2024年4月)から、【医師の働き方改革】がスタートしました。
このうち「面接指導」は、「長時間労働で医師の心身に問題が生じていないか」をチェックし、必要に応じた対応(場合によっては業務のストップ)を行うもので、▼A・B・Cいずれの医療機関においても、月の時間外労働が100時間以上となる勤務医については産業医等が「面接指導」を行う▼前月の労働が80時間を超えた場合、翌月に100時間以上となることを見越して面接指導の準備等を行う—ことが求められています。
今般、厚労省はこの面接指導のポイントを(1)面接指導の対象となる医師(2)面接指導の適切な実施に向けたチェックリスト—の2点に集約し、簡潔に整理しました。
まず(1)の面接指導対象医師は「1か月100時間以上の時間外・休日労働が見込まれる医師」であることを強調したうえで、次のような点に留意することを求めています。
▽A水準の医師であるか、特例水準(B・連携B・C1・C2)の医師であるかを問わず、上記の基準に達すれば面接指導の対象となる
▽自院だけでは1か月100時間に満たない場合でも、「副業・兼業先の労働時間を通算して1か月100時間以上になる」ことが見込まれる場合には対象となる(関連記事はこちら)
→例えば「大学病院等から医師を受け入れている医療機関」にも面接指導の実施義務がかかるため、適切なルールづくりや手続きの整備が必要となる(後述(2)参照)
▽必要な面接指導を実施していない場合には次のようなペナルティが課せられる
→医療法第25条第1項に基づく立入検査で実施状況が確認され、指導や改善命令の対象となり、改善命令に従わない場合は罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる
→労働基準法第141条第3項の違反として労働基準監督署による指導や罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる
各医療機関でチェックリスト活用し「面接指導体制」整備を
また(2)では、面接指導の実施にあたってのチェックリストを提示。各医療機関で「漏れ」がないかを随時確認する必要があります。
▽面接指導の対象になる医師を把握しているか?
→面接指導対象医師の特定の前提として「適切な労働時間の把握」が必要となる
→労働時間の確認は、原則として「客観的な方法」で行う必要がある
→やむを得ず自己申告で行う場合には、「労働時間適正把握ガイドライン」に基づく措置を講じる必要がある
▽面接指導実施医師を確保しているか?
→面接指導は「面接指導実施医師」が実施する
→面接指導実施医師になるためには、厚労省の面接指導実施医師養成講習会を受講する必要がある
→医療機関の管理者(院長等)は、その医療機関に勤務する医師の面接指導実施医師にはなれない
→自院以外に所属する医師でも面接指導実施医師になることができる
→必要に応じて他医療機関とも連携して、面接指導対象医師に対して十分な数の面接指導実施医師を確保する必要がある
▽適切な時期に面接指導を実施しているか?
→時間外・休日労働が1か月100時間に達する「前」に面接指導を行う必要がある
→そのために、時間外・休日労働が「80時間前後」となるタイミングで実施するなど、自院のルールを定めることが重要である
▽医師が安心して面接指導を受けられる環境を整備しているか?
→「直属の上司を面接指導実施医師としない」など、マッチングへの配慮等が必要となる
▽面接指導の結果を踏まえた対応を検討/実施しているか?
→面接指導の結果を踏まえて、必要な場合には就業上の措置を実施する必要がある
→産業医とも連携しながら、労働時間の短縮や宿直回数の減少などの措置を検討する
→医師の時間外・休日労働が1か月155時間を超えた場合、労働時間の短縮のために必要な措置を「必ず」講じる
▽面接指導の結果を適切に保存しているか?
→面接指導結果・意見書は5年間保存しなければならない
なお、医師が「複数の医療機関で勤務」(副業 ・兼業)している場合には、▼勤務している医療機関の1つで面接指導を受けた場合、面接指導を受けた医師等が他医療機関にその面接指導結果を提出することで、提出を受けた他医療機関でも「面接指導実施済み」とすることができる▼いずれの医療機関で面接指導を実施するか、どのように面接指導の結果を提出するかについて、あらかじめ医師や他の医療機関と話し合うなどして決定しておく必要がある—点にも留意が必要です。
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