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0819ミニセミナーGemMed塾

白内障手術など「入院」から「外来(短期滞在手術等基本料1)」への移行をさらに進めるために何が必要か―入院・外来医療分科会(4)

2025.7.23.(水)

白内障手術については、外来で行われる場合(短期滞在手術等基本料1)と入院で行われる場合とがあるが、本邦では先進諸国に比べて「入院で行われる」ケースが多く、また都道府県間・病院間で見ても入院・外来実施割合には大きなバラつきがある—。

入院で行われるケースの背景を詳しく分析したうえで、「入院から外来への移行」を診療報酬でどう推進していくべきか—。

7月17日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、こうした議論も行われました(同日の包括期医療その2論議の記事はこちら、外来医療その2論議の記事はこちら、薬剤業務論議の記事はこちら)。

7月17日に開催された「令和7年度 第7回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」

短期滞在手術等基本料3、在院日数の短縮を踏まえて点数を引き下げるべきか?

Gem Medで報じているとおり、2026年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会や下部組織の入院・外来医療分科会などで精力的に進められています。
(中医協論議)
医療機関を取り巻く状況(経営状況等)
医療提供体制
外来(その1)

(入院・外来医療分科会)
急性期入院医療
DPC
高度急性期入院医療
地域包括医療病棟
回復期リハビリ病棟
療養病棟
いわゆる包括期入院医療全体
その他、入院・外来全般
データ提出を評価する加算
生活習慣病管理料など
機能強化加算・地域包括診療料など
オンライン診療
入退院支援
看護師確保・負担軽減
多職種連携
急性期入院医療(その2)
重症度、医療・看護必要度
DPC(その2)
救急、高齢者入院医療
包括期医療(その2)
外来医療(その2)
薬剤業務



7月17日の入院・外来医療分科会では、▼外来医療(その2)▼包括期入院医療(その2)▼短期滞在手術等基本料▼薬剤業務—等のテーマに沿った議論が行なわれました。本稿では「短期滞在手術等基本料」などに焦点を合わせます。

短期滞在手術等基本料は現在、次のように設定されています(2022年度の診療報酬で、きわめて算定が低調であった基本料2を廃止)。

▽短期滞在手術等基本料1:K282【水晶体再建術】などについて「日帰り」で実施する場合、医療機関が【短期滞在手術等基本料1】を算定するか、出来高算定するかを選択する(届け出が必要、DPCでも算定可)

▽短期滞在手術等基本料3:K616-4【経皮的シャント拡張術・血栓除去術】などについて、「4泊5日」までに実施する場合、【短期滞在手術等基本料3】を算定する(届け出は不要、DPCで算定不可)

短期滞在手術等基本料の概要1(入院・外来医療分科会(4)1 250717)

短期滞在手術等基本料の概要2(入院・外来医療分科会(4)2 250717)



このうち【短期滞在手術等基本料1】の対象手術について「入院で実施されているものをどう考えるか」という論点があります。

例えば、白内障患者の水晶体再建術については、「外来で実施し、短期滞在手術等基本料1を算定する」ケースや、「入院で実施し、短期滞在手術等基本料3(4泊まで)や通常の診療報酬(5泊以上で入院料+手術料ほか、あるいはDPC点数)を算定する」ケースなどあります。

昨年(2024年)10月時点では、62.5%が外来で実施され、4割近くが入院で実施されており、また「ほとんどを外来で実施している病院もあれば、逆にほとんどを入院で実施している病院もある」ことが明らかにされています。

短期滞在手術等基本料の入院・外来実施状況1(入院・外来医療分科会(4)3 250717)

短期滞在手術等基本料の入院・外来実施状況2(入院・外来医療分科会(4)4 250717)

短期滞在手術等基本料の入院・外来実施状況3(入院・外来医療分科会(4)5 250717)



この点について社会保障審議会・医療保険部会では、都道府県によって「外来実施の割合に極めて大きな差がある」ことが問題視され、都道府県の医療費適正化計画の中に「白内障手術等の外来実施目標を定め、外来移行を推進していく」こととしています(関連記事はこちらこちら)。



白内障手術等を入院で実施する背景の1つに「入院で実施したほうが、請求点数が高くなる」ことがあり、ここからは「点数差を縮小する」(入院実施の点数を引き下げる、外来(短期滞在手術等基本料1)を引き上げる、あるいはその両方)ことが検討テーマの1つになる可能性が伺えます。

短期滞在手術等基本料1の入院・外来請求点数(入院・外来医療分科会(4)6 250717)



しかし、入院・外来医療分科会では▼白内障手術の外来実施状況を見ると、欧米先進諸国では9割程度、本邦では55%程度と差がある。ただし本邦では高齢化が進んでいるなど特殊事情があるのかもしれない。ただちに「入院での白内障手術実施=悪」とはならないのではないか(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)▼入院実施の背景には様々な要因がある点を勘案すべき(牧野憲一委員:旭川赤十字病院特別顧問・名誉院長、日本病院会副会長)▼本邦と諸外国、都道府県別の比較において「年齢構成と外来実施率」との関係を見ていくべき(池田俊也委員:国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)—との意見が出ています。

また、中野惠委員(健康保険組合連合会参与)は「外来実施が確立されており、外来移行を強力に推進していくべき。入院実施の理由について『入院>外来の点数差』なのか、『医療上の必要性』からなのか詳しく分析すべき」とコメントしています。

高齢患者では、手術を受けた場合の身体的・精神的負担も大きく「入院で実施せざるを得ない」状況もあると考えられ、そうした点を「データで確認する」ことが重要と多くの委員が指摘しています。



また、4泊5日の【短期滞在手術等基本料】については、2022年度から24年度にかけて「平均在院日数が短縮」している状況が明らかにされました。

短期滞在手術等基本料3の在院日数の状況1(入院・外来医療分科会(4)7 250717)

短期滞在手術等基本料3の在院日数の状況2(入院・外来医療分科会(4)8 250717)

短期滞在手術等基本料3の在院日数の状況3(入院・外来医療分科会(4)9 250717)



短期滞在手術等基本料は、入院料や検査料、手術料などを完全包括した診療報酬項目です。このため「在院日数が短縮」した場合には「入院料」コストも縮小していると考えられ、「包括点数の引き下げ」が検討される可能性があります。

もっとも、「在院日数短縮」の背景には「在院日数の短縮→入院料コストの縮減→利益の獲得」という病院サイドの経営努力があります。ここで包括点数を引き下げていったのでは「経営努力のモチベーションを削ぐことにもつながってしまう。そこを勘案した対応が求められる」と指摘する識者もおられる点に留意が必要でしょう。



なお、7月17日の入院・外来医療分科会では、「一般病院での精神科病床が減少傾向にあるが、精神疾患患者に身体合併症が生じた場合の対応を十分に行うため、診療報酬でどういった評価を行うべきか」という議論も行われています。高齢化が進展する中で「精神科」と「他診療科」との協働が必要となる場面が増えると考えられ、「一般病院における精神科入院医療の評価充実」も2026年度診療報酬改定に向けた重要論点の1つとなります。



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