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0819ミニセミナーGemMed塾

病院におけるポリファーマシー対策などの前提となる「病院薬剤師の確保」を診療報酬でどう進めていけば良いか―入院・外来医療分科会(3)

2025.7.22.(火)

医師・看護師から薬剤師へのタスク・シフト、病院薬剤師と薬局薬剤師との情報連携、病院におけるポリファーマシー対策などが重要となるが、「病院薬剤師の確保」が難しく、こうした取り組みが必ずしも十分に進んでいない状況をどう改善するか—。

7月17日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、こうした議論も行われています(同日の包括期医療その2論議の記事はこちら、外来医療その2論議の記事はこちら)。同日には、ほかに「短期滞在手術等基本料」なども議題に上がっており、別稿で報じます。

7月17日に開催された「令和7年度 第7回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」

病院薬剤師、全都道府県で「必要な人員配置」を達成できていない

Gem Medで報じているとおり、2026年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会や下部組織の入院・外来医療分科会などで精力的に進められています。
(中医協論議)
医療機関を取り巻く状況(経営状況等)
医療提供体制
外来(その1)

(入院・外来医療分科会)
急性期入院医療
DPC
高度急性期入院医療
地域包括医療病棟
回復期リハビリ病棟
療養病棟
いわゆる包括期入院医療全体
その他、入院・外来全般
データ提出を評価する加算
生活習慣病管理料など
機能強化加算・地域包括診療料など
オンライン診療
入退院支援
看護師確保・負担軽減
多職種連携
急性期入院医療(その2)
重症度、医療・看護必要度
DPC(その2)
救急、高齢者入院医療
包括期医療(その2)
外来医療(その2)



7月17日の入院・外来医療分科会では、▼外来医療(その2)▼包括期入院医療(その2)▼短期滞在手術等基本料▼薬剤業務—等のテーマに沿った議論が行いました。本稿では「薬剤業務」に焦点を合わせます。

かねてより「病院薬剤師の確保が極めて難しい」ことが問題視されています。2023年に厚生労働省が行った調査によれば、「すべての都道府県で病院薬剤師の目標値・必要数をクリアできておらず、最も多い京都府でも目標値の94%にとどまり、最も低い青森県では目標値の55%しか病院薬剤師を確保できていない」ことが分かっています。

薬剤師偏在指標(入院・外来医療分科会(3)1 250717)



また、厚労省は(1)タスク・シフト/シェア(2)薬剤情報連携(3)ポリファーマシー対策—という3つの視点で薬剤業務に関する課題を分析しています。

まず(1)のタスク・シフト/シェアでは、医師や看護師等の業務のうち薬剤関連業務を「薬剤の専門家である薬剤師」に委ねることで、より質を高めることが期待されています。

この視点に立って、診療報酬でも例えば▼手術室の薬剤師が病棟薬剤師と薬学的管理を連携して実施すること評価する【周術期薬剤管理加算】(麻酔管理料(I)(II)への75点の加算)がん化学療法において、医師の診察前に、薬剤師が服薬状況や副作用の発現状況等を確認・評価し、医師に情報提供、処方提案等を行うことを評価する【がん薬物療法体制充実加算】(外来腫瘍化学療法診療料1への100点の加算)—などが創設されています。しかし、【周術期薬剤管理加算】、【がん薬物療法体制充実加算】ともに算定状況は芳しくなく、その背景には「病院薬剤師の不足」が指摘されています(どれだけ点数をつけても、薬剤の専門家である薬剤師がいなければ算定できない)。

がん薬物療法体制充実加算の状況(入院・外来医療分科会(3)2 250717)

周術期薬剤管理加算の状況(入院・外来医療分科会(3)3 250717)



また(2)の薬剤情報連携の重要性は述べるまでもないでしょう。例えば、入院患者が退院し、地域の医療機関に通院したり、在宅医療を受ける際に「入院中の薬剤情報」などを共有することで、継続した治療内容が確保できます。

診療報酬では【退院時薬剤情報管理指導料】が設けられ、入院時に「当該患者が服薬中の医薬品等」を確認するとともに、当該患者へ「入院中に使用した主な薬剤の名称や副作用等に関する情報」をお薬手帳に記載し、退院に際し患者・家族等に「退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行う」ことを評価しています(退院日に90点)。

また、入院前の内服薬を変更・中止した患者について、保険薬局に対して文書により当該患者の状況を情報提供した場合、上記指導料に上乗せする【退院時薬剤情報連携加算】(60点)も準備されています。

しかし【退院時薬剤情報連携加算】については、「保険薬局への情報提供時に限定され、転院時の他医療機関への情報提供等については評価の対象となっていない」ことなどから、算定状況は芳しくありません。

退院時の薬剤情報提供の状況(入院・外来医療分科会(3)4 250717)



さらに(3)のポリファーマシーとはポリファーマシーとは「多剤投与の中でも害を伴うもの」と定義されます。

高齢になると、どうしても複数の傷病を抱え、各傷病治療のために「多剤投与」が行われがちです。一方で、高齢になると▼細胞内水分の減少▼血清アルブミンの低下▼肝血流や肝細胞機能の低下▼腎血流の低下—といった生理機能の低下が生じるものの、薬物吸収能には大きな変化がないため「医薬品が効き過ぎる」状態に陥りやすくなります。つまりポリファーマシーが生じやすくなるのです。

高齢化が進行する中で、「ポリファーマシー」対策が極めて重要となってきます。高齢者におけるポリファーマシーを防止するために、厚労省は「高齢者医薬品適正使用検討会」の議論を踏まえ、例えば2018年5月に「高齢者の医薬品適正使用の指針【総論編】」(主に急性期入院医療を対象としている)を、2019年6月に「同指針【各論編(療養環境別)】(外来・在宅医療、回復期・慢性期入院医療、介護保険施設を対象)をまとめ、さらに2021年3月に通知「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」を発出するなどの対策を講じています。

診療報酬でも診療報酬上の評価が様々になされており、例えば【薬剤適正使用連携加算】((認知症)地域包括診療料・地域包括診療加算を算定している患者が入院・入所し、入院・入所先医療機関等と「医薬品の適正使用に係る連携」を行った場合に、地域包括診療料などに80点を上乗せする)が設けられています。しかし、本加算は「入院・入所患者の医薬品の適正使用に係る連携」を評価している一方で、「他院にも併せて通院する外来患者について、処方内容、薬歴等に基づく相談・提案を当該他院へ行う」ことは評価の対象になっていないと指摘されます。また算定状況を見ると「極めて低い」と言わざるを得ません。

ポリファーマシー対策の診療報酬での評価(入院・外来医療分科会(3)9 250717)

薬剤適正使用連携加算の状況(入院・外来医療分科会(3)5 250717)



他方、病院では「患者のそばに、常に医療従事者がいる」ことから、ポリファーマシー対策を進めやすくなります(例えば減薬によって患者の病態が悪化した場合に、すぐに医療従事者がそれを察知し、投薬内容をすぐに修正できる)。このため「病院でのポリファーマシー対策」に大きな期待が集まっていますが、▼急性期では在院日数が短く十分な介入ができない▼人手不足で、対象患者の抽出や、検討する時間を確保できない—ことから十分に取り組めない場合が多いのも実際です。

入院中のポリファーマシー対策実施状況(入院・外来医療分科会(3)6 250717)

高齢者医薬品適正使用の取り組み状況(入院・外来医療分科会(3)7 250717)

薬剤師にさらに求められる業務(入院・外来医療分科会(3)8 250717)



こうした状況に対し、入院・外来医療分科会では▼病院でのポリファーマシー対策が進まない理由として「薬剤師不足」をあげる声が多いが、そもそも薬剤の処方権は医師にあることを忘れてはならない。薬剤師のせいにしてはいけない(飯島勝矢委員:東京大学未来ビジョン研究センター/高齢社会総合研究機構教授)▼ポリファーマシー対策を評価する診療報酬として【薬剤総合評価調整加算】があるが、「入院時から退院時にかけて2剤の減薬」が求められている。急性期病院では入院期間も短く、この要件をクリアすることは難しすぎる。減薬の結果だけでなく「薬剤調整の質」を評価していくことを検討すべき。また病院薬剤師確保に向けて「診療報酬で人件費を確保できる」ような点数引き上げが必要である(眞野成康委員:東北大学病院教授・薬剤部長)▼院内処方と院外処方では点数差が大きすぎる点を再度検討すべきではないか(牧野憲一委員:旭川赤十字病院特別顧問・名誉院長、日本病院会副会長)▼薬剤師資格を得た後、2年程度「病院での臨床研修」義務付けなどを真剣の考える時期にきている(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)▼診療ガイドラインや専門医教育カリキュラムなどでポリファーマシー対策を十分に勘案すべき(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長)—などの意見が出されています。

診療報酬には直接関係ない意見も出ていますが、「病院薬剤師の確保が極めて重要であり、診療報酬にとどまらない、総合的な手当てが必要である」という委員の強い思いが伺えます。さらに「病院薬剤師確保のために診療報酬を中心にどのような対策が考えられるか」を議論していきます。

院内処方と院外処方の比較(入院・外来医療分科会(3)10 250717)



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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