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全都道府県で「病院薬剤師」の必要数を確保できず、最高の京都府でも94%、最低の青森県では55%しか確保できず—厚労省

2023.6.16.(金)

都道府県別に「薬剤師が多いのか、少ないのか」を見てみると、病院薬剤師については「すべての都道府県で少ない」(目標値・必要数をクリアできていない)ことがわかった—。

最高の京都府でも「目標値の94%」にとどまっており、最低の青森県では「目標値の55%」しか確保できていない—。

薬剤師の偏在解消に向けて、また病院薬剤師の確保に向けて、「3年を1期とする薬剤師確保計画」を各都道府県で作成し、これに沿って計画的・戦略的に薬剤師確保を進めることが必要である—。

厚生労働省は6月9日に「薬剤師確保ガイドライン」と「薬剤師偏在指標」を公表し、こうした考えを明らかにしました。
【厚労省サイト】
▽ガイドラインはこちら
▽ガイドライン概要はこちら

▽現在の偏在指標はこちら
▽2036年度の偏在指標はこちら
▽現在と将来の偏在指標比較はこちら
▽偏在指標の計算方法などはこちら

薬剤師偏在を計画的に解消していく1

薬剤師偏在を計画的に解消していく2

医師偏在指標に倣い、薬剤師についても「地域ごとに多い、少ないの順位付け」

病院薬剤師不足を指摘する声が非常に大きくなっています(関連記事はこちら)。

2024年度からの第8次医療計画に向けた議論の中でもこの点が重視され、次のような取り組みを行うことになりました(関連記事はこちら)。
▽次期「医療計画作成指針」で、薬剤師確保に関して以下の点を記載する
▼病院薬剤師・薬局薬剤師のそれぞれの役割
▼地域医療において必要な医療機関・薬局における薬剤師の就労状況を把握したうえで、地域の実情に応じた薬剤師の確保策を講じる
▼「地域医療介護総合確保基金」(修学資金貸与、病院への薬剤師派遣)の積極的な活用、薬学生を対象とした就職活動に係る情報発信等を行う
▼都道府県の薬務主管課と医療政策主管課が連携して取り組む
▼病院薬剤師の確保策を検討する際は、都道府県薬剤師会だけでなく都道府県「病院薬剤師」会と連携して取り組む

▽国が都道府県に対し、都道府県における薬剤師の偏在状況の把握、薬剤師確保対策の検討に資する情報(医師・歯科医師・薬剤師統計を活用したデータ、薬剤師確保に係る厚労省調査事業など)の周知・共有を行い、活用を促す



今般、後者に関連し、「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の議論も踏まえ、「薬剤師の偏在状況」(偏在指標)が公表されました。地域ごとの「人口10万人あたり薬剤師数」をベースに、医療受療率(受療率が高ければより多くの薬剤師が必要となる)や薬剤師の労働時間(労働時間が短ければより多くの薬剤師が必要となる)、流出入(流出が多く、流入が少なければより多くの薬剤師が必要となる)などを加味して、「地域において薬剤師が多いか、少ないかの順位付け」を行うものです(厚労省サイトはこちら)。

まず、現時点で、薬剤師が多いか、少ないかの順位付け状況を見ると、全国ベースでは「病院で0.8(目標「1.0」に対して80%しか薬剤師を確保できていないことを意味する、以下同じ考え方)」「薬局で1.08」となっており、ここから「病院薬剤師の不足が顕著である」ことが伺えます。

また、都道府県別に「病院薬剤師が少ない自治体」を見ると、下位5は▼青森県(0.55)▼秋田県(0.56)▼山形県(0.60)▼三重県(0.63)▼岩手県(0.64)—と非常に厳しいことが分かります。もっとも上位5を見ても、▼京都府(0.94)▼徳島県(0.94)▼東京都(0.94)▼福岡県(0.93)▼大阪府(0.92)—となっており「最も病院薬剤師が多い自治体でも、目標値をクリアできていない」ことが確認できます。

他方、2036年の薬剤師確保状況を、薬剤師養成策などを加味して推測すると、病院薬剤師の上位自治体は▼徳島県(1.07)▼京都府(0.96)大阪府(0.95)▼和歌山県(0.93)▼福岡県(0.92)▼熊本県(0.92)▼—、下位自治体は▼青森県(0.62)▼秋田県(0.66)▼三重県(0.68)▼茨城県(0.68)▼山形県(0.69)▼静岡県(0.69)—などとなります。「日本全国で病院薬剤師確保が進む」ものの、「依然として東北地方を中心に薬剤師不足が顕著」な状況が続くと考えられます。



こうした事態を放置すれば、医療の質確保が難しくなるとともに、医師働き方改革にも支障が出てしまいます(関連記事はこちら)。

そこで厚労省は「薬剤師確保ガイドライン」を公表し、自治体に「ガイドラインを参照にして、薬剤師確保を進める、偏在を解消する」よう要請。具体的には、段階的に上述した「目標値」をクリアするような取り組みを進めることが各地域に求められます。

第8次医療計画(2024-29年度)、第9期医療計画(2030-35年度)を通じて、「3年間を1期とする薬剤師計画」(目標などを盛り込む)を作成し、計画に沿って薬剤師確保に向けた取り組み(例えば「地域医療介護総合確保基金の活用」「病院・薬局における薬剤師の採用にかかるウェブサイト、就職説明会等を通じた情報提供の支援」「地域出身薬剤師や地域で修学する薬学生へのアプローチ」「キャリアプランの実現・やりがいを感じられる業務実現のための支援」「給与制度の見直しの促進」「病院や薬局における働き方の見直しの支援」「潜在薬剤師の復帰支援」「病院・薬局における業務効率化の支援」「薬学部における地域枠の設定」などの組み合わせ)を進めることになります。

その際、医師偏在解消と同様に▼薬剤師の多い地域(多数県・多数地域:偏在指標が目標をクリアできている)▼少ない地域(少数県・少数地域:偏在指標が目標値をクリアできない地域の下位2分の1)▼中間の地域—ごとに、次のような薬剤師確保の方針を定め、この方針に則った薬剤師確保計画の作成・実施を各自治体で進めることが求められます。

【薬剤師少数区域・少数都道府県】
▽薬剤師の「増加」を確保方針の基本とする
▽都道府県内に薬剤師少数区域と薬剤師少数でも多数でもない区域がある場合、少数区域において優先的に確保する施策とする

【薬剤師多数区域・多数都道府県】
▽既存の確保施策による薬剤師の確保の速やかな是正は求めないが、より薬剤師が不足している地域に対して優先的に施策を行うべきである
▽三次医療を担う病院等においては上記によらず、「三次医療の確保・維持のための薬剤師確保」策の実施を可能とする



このほか、次のような考え方も示されました。
▽「現在時点では薬剤師少数都道府県」だが、人口減少に伴い「将来時点には薬剤師少数でも多数でもない都道府県となる」ことが想定される都道府県は、薬剤師確保のための「短期的な施策」の実施を検討する

▽「現在時点では薬剤師少数でも多数でもない都道府県」だが、高齢化に伴い「将来時点には薬剤師少数都道府県となる」ことが想定される都道府県は、薬剤師を確保するための「長期的な施策」の実施を検討する

▽現在時点も将来時点も「薬剤師少数都道府県」に該当する都道府県では、「短期的な施策」に加えて「長期的な施策」の実施を検討する

▽業態間での偏在状況について、全国的に病院薬剤師の偏在指標が目標偏在指標を下回っていることを踏まえ、「病院薬剤師の確保策の充実」を図うべきである



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